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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1552/2453

第1552話:リモネスさんに相談

 フイィィーンシュパパパッ。

 聖火教徒の集落から帰ってきたあと、皇宮にやって来た。


「こんにちはー」

「やあ、精霊使い君いらっしゃい。あれ、今日は午後からって話じゃなかったかい?」


 首をかしげるサボリ土魔法使い近衛兵。


「あ、ルーネに聞いてるんだ? 午後からルーネ連れて、ガリアの王様に会ってこようかと思ってるんだ」

「簡単に外国に行けるのはいいなあ」

「いいでしょ。ただし今来たのは別件でさ」

「ほう?」


 何かに気付いたようなサボリ君。

 案外鋭いな。


「……つまりルーネロッテ様にも聞かせられないような話があるのか。だから今日は一人なのかい?」

「ちょっとした用だからね」


 ちょっとした用なのにヴィルを連れてこないってのは、逆に変か。


「言い直す。結構な用だからね」

「君が結構な用というのはどの程度の?」

「カル帝国の今後数十年の未来を左右する、かもしれないくらい」

「大事じゃないか!」


 驚くサボリ君。

 大事っちゃ大事だけど。


「ごめんよ。詳しい内容はまだ話せないんだ。でも差し迫った帝国の危機ってんじゃないから、心配する必要はない」

「ああ、わかった。誰かと面会したいってことかい?」

「リモネスさんと相談したいんだ」

「なるほど、秘密で重要な要件となればリモネス殿だな。うんうん」

「呼んでくれる?」

「すぐに連絡しよう」


          ◇


「どーぞ」

「これはすみませんな。うむ、大変に香り高い」

「いい匂いだぬ!」

「でしょ? 魔境で見つけたタイムの新芽で作ったハーブティーだよ。あたしも最近お気に入りなんだ」


 リモネスさんを我が家に連れてきた。

 まあ家が一番落ち着いて内緒話ができるからね。

 それにしてもヴィルって、意外といい匂いは好きみたいだな?


「……相談事とは、いかに?」

「うん」


 リモネスさんは他人の考えていることがわかるという、『サトリ』の固有能力持ちだ。

 あたしの言いたいこともある程度把握してるんだろうが……いや、どこまでわかるのかな?

 割と謎の能力だ。

 まあリモネスさんも肝心なことは話しゃしないし。


「今ラグランドにいるうっかり公爵に手紙をもらったんだ。陛下の遺書なんだろうって言われたけど」

「ふむ」


 やはりリモネスさんは驚かない。

 実につまらん。


「おっちゃん、どう思う?」

「どう、とは手紙の信憑性についてですかな?」

「信憑性ももちろん気になるんだけど、内容はもっと気になる」


 マジで重要な内容だった場合の扱いについてだ。

 そそらない中身の手紙なら騒ぎ立てることもないし。

 リモネスさんはどう思ってるんだろ?

 陛下に近い人だから、あるいは何か知ってるんじゃないかな?


「中は確認しておられないんですか?」

「おっちゃんに聞いてからにしようかと思って」

「それはグレゴール様も同様ですかな?」

「うっかり公爵も見てないって」


 うっかりさんは中を見る気がなかったようだ。

 読むのは陛下が亡くなった時と決めていたからかもしれない。

 しかしリモネスのおっちゃん、あたしがどうして遺書めいた手紙を預かったかってことに関しては聞かないのな?

 一番疑問に思える部分だと思うんだけど。


 のんびりとした様子でリモネスさんが言う。


「私の『サトリ』という固有能力ですが、考えの読みやすいタイプの人と読みにくいタイプの人がおるのです」

「ふーん」


 興味はあるけど、関係のある話なんだろうか?

 とゆーか、どう関係してくるんだろうな?


「あたしはどっちかな?」

「大変に読みやすいですな。全身から訴えかけてくるようなイメージですぞ」

「やっぱそーか。うちの悪魔達が、あたしの考えを読んでるような言い方することがあるんだよ。読みやすいのかー」

「読みやすいぬよ?」

「よーし、ぎゅっとしてやろう」

「ありがとうぬ!」

「ハハハ。高位魔族は感情に対して敏感ですからな。思考や心理も感情にある程度連動しておりますゆえ」

「なるほどー」


 でも考えてることが漏れやすいって面白くないな?

 いや、まああたしは秘密を持ってどうのこうのっていうタイプじゃないか。


「それだけ信念が強い、思考が合理的で一本化されているということですぞ。私の『断罪』が精霊使い殿に通じぬ理由でもあります」


 リモネスさんの『断罪』は、自分の信念を通す度合いを自分と相手とを比較し、自分が勝れば相手を竦ませることができる固有能力だという。

 自分を曲げることがなければ極めて強力な能力だ。


「精霊使い殿は説得力がまことに高く、誰にでも言うことを聞かせることができるでしょう? 自らを信じること強固で、真っ直ぐであるからですぞ」

「悪いことばっかりじゃないんだねえ」


 あたしは容姿端麗で品行方正で純情可憐な乙女だ。

 少々考えてることがバレたってどうってことないな。

 説得でゴリ押せる方がメリット大きい。


「……先日のセウェルス皇子ですが」

「うん、ヤバかった。殿下『強奪』の固有能力持ちでさ。あたしの『ゴールデンラッキー』を盗もうとしてきたの」

「精霊使い殿もまた同じく『強奪』で迎撃したと」

「そうそう。おかしなことがあるもんだよ。多分リモネスさんの『サトリ』も、セウェルス殿下に長いこと狙われてたんじゃないかな」


 頷くリモネスさん。

 『捕食者の思考』って言ってたからな。

 セウェルス第三皇子の心の拠りどころは、自身が『強奪』能力持ちであることにあったのだろう。

 何らかの強力な能力を手にして、人臣大衆に君臨することを望んだに違いない。

 実際のところ、固有能力だけじゃどーにもならんこと多いと思うけど。


「どこで『強奪』を手に入れましたかな?」

「この世界を統括する女神様にもらったんだ。あたしが働いてあんたに得があるのに、あたしに報酬がないのはフェアじゃないってゴネたら、じゃあ固有能力を授けましょうって」


 リモネスさん微妙な表情だ。

 あたしがウソ吐いてないのはわかるだろうが、話自体が荒唐無稽だからな。

 もっともあたしもたわわ姫が実在しているのか否か、もう一つわからんのだけれど。


「『強奪』を使ってみようとは思いませんかな?」

「いーなーと思う固有能力はあるけど、欲しいとまで思うことはないかな。『巨乳』と『ギャグセンス』以外は」


 笑い。

 一度役に立ってくれた能力だからもういいのだ。

 よほどのことがない限り、今後『強奪』を使う機会はないだろう。

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