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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1547話:行動を見透かされてるようで悔しい

 フイィィーンシュパパパッ。


「これはこれは、ユーラシア殿」

「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」


 ルーネとヴィルを連れてラグランドにやって来た。

 ルーネがキョロキョロしている。


「ここはどこでしょうか?」

「中央府だよ。ラグランド人側の偉い人達がいるところ。前ルーネが行ったのは総督府だったから、こっち来たことはなかったね」


 中央府は総督府と違い、ラグランドらしい雰囲気の建物なのだ。

 衛士に聞く。


「昨日、オードリー達が戻ってきたでしょ? 公爵一行はどこにいるかな?」

「中央府に滞在しておりますぞ」

「え? 総督府じゃなくて?」


 何かトラブルでもあったか?

 衛士が笑う。


「いや、ラグランドに早く馴染みたいという、グレゴール元公爵の仰せでしてな」

「うっかり公爵は意外とやるなあ」


 狙ってやってるんだか天然だかわからんけど、ラグランド人の心証はいいだろうな。

 いずれラグランドに永住するつもりだろうから、早く馴染みたいってのは本音だろうし。

 ルーネが言う。


「では、中央府にお邪魔しますか?」

「いや、先にホルガー総督に挨拶しとこ」


 何たってこのラグランドは反帝国感情の強い植民地だ。

 うっかり公爵やリキニウスちゃんの安全のために、あたしもホルガー総督もなるたけ正確な情報が欲しい。

 昨日のことや現在の情勢を最も客観的に説明してくれるのはホルガーさんだろ。

 とっとと情報交換をすませておかねば。


「総督府行こうか」

「はい」

「行くんだぬ!」


 笑いながら総督府へ。


          ◇


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」


「やあ、ユーラシア君。ルーネロッテ様、よくいらっしゃいました」


 総督執務室にはホルガーさんと衛兵長がいた。

 あれ、重要な話でもしてたかな?

 お邪魔だったか?

 でも歓迎されてるみたいだし。


「昨日、うっかり公爵一行とオードリーがこっち着いたじゃん? 様子どうかなと思って見に来たんだ」


 表情が和らぐホルガーさん。


「グレゴール様のおかげで、帝国とラグランドの間に今までにない友情が育まれつつあるのですよ」

「何かあったの?」


 中央府に滞在すると言ったことだけじゃないらしいな。

 うっかり公爵のやることだから、ちょっと想像がつかない。


「港にはたくさんの人が集まっておりまして。無論帝国に面白くない感情を持つ者も多いわけですが」


 ホルガーさんが情景を思い出すように目を細める。


「グレゴール様が上陸しようとした時に、足を滑らせ渡り足場から海に落ちまして」

「すげーうっかり公爵らしい。期待を裏切らないなあ」


 そんな愉快なイベントがあったとは。

 あたしも見たかった。


「救い出されたグレゴール様が、温かな水温のおかげでカゼも引かずにすむ、ラグランドに感謝すると頭を下げられたのです」

「うっかり公爵の頭は軽いんだよね。すぐに頭下げられるのは偉いなあ」

「港に集まった者達はグレゴール様に好感を抱いたようです。その後……」


 まだあるんだ?

 まったく何やらかしてるんだか。


「高台への階段を昇りきって振り返った時によろけ、今度はその約五〇段ある階段のてっぺんから転げ落ちまして」

「ハプニングを重ねてくるなあ。さすがだわ」

「すわ大ケガかと皆が固唾を呑んで見つめる中、グレゴール様は何事もなかったように立ち上がり、民衆に手を振って応えたことから、大歓声が上がりました。『不死身の公爵』と呼ばれるようになりましたよ」


 杖職人ナバルさんが献上したステッキに内蔵している盾の魔法『ファストシールド』をうまく起動できたらしい。

 ケガがなくてよかったね。

 あれ? うまく起動できたってことは、もう既に何度か転んだりしてるのかな?

 メッチャ役に立ってるっぽい。


「一昨日アルヴィリアさんが具合良くなさそうだったから、昨日来るのは遠慮したんだ。愉快なエンタメを見逃すとは、一生の不覚だった」

「ハハハ。アクシデントはアクシデントでしょうが、ラグランドの雰囲気は非常によろしいですよ」

「わかった、ありがとう」


 掴みはオーケーということだ。

 ラグランドではただの旅人であるうっかり公爵が、そうそう人の集まる機会に恵まれるわけじゃない。

 よっぽどのことをやらかさない限りもう大丈夫だな。


「ところで二人は何か重要な話してたのかな? 邪魔しちゃってたらごめんね」

「いや、そうではなく……」


 チラッとルーネを気にしたが、続けるホルガーさん。


「本日本土から届いた最新のレポートによりますと、テテュス内海においてガリアと、正確にはサラセニアとタルガ植民地との間で直接交易を開始するというトピックがあったのです」

「帝国は植民地総督へも他の地方の情報を寄越すのか。大したもんだなあ」

「詳しいことはユーラシア君に尋ねよと」

「えっ?」


 この件についてはあたしが一番詳しいかも知れんけど。

 ラグランド行った時伝えてくれの一言があってもいいじゃないか。

 どうせ行くだろと思われてるのが、行動を見透かされてるようで悔しい。


「簡単に言うよ? 内海の事実上の覇権国家アンヘルモーセンが、ガリアの子分サラセニアに進出しようとしてるんだ。ガリアの王様が怒っちゃって、アンヘルモーセンが図に乗るのはカル帝国がバックについてるのかって疑ってた。一方で帝国は、ガリアとアンヘルモーセンが秘密協定を結んだからアンヘルモーセンがサラセニアに? って考えてた」

「なるほど、双方に誤解が」

「あたしは『アトラスの冒険者』のクエストで、ガリアの王様とも帝国の主席執政官閣下とも知り合いだったじゃん? 双方の言い分を聞いてて、あれ、両国とも深読みし過ぎだと気付いてさ。要するにアンヘルモーセンが調子付くのは、内海のものの流れがアンヘルモーセンに支配されてるからだなってことになって、帝国とガリアは手を組むことにしたんだよ」

「ははあ、事情はわかりました」

「でもアンヘルモーセンが何考えてるかはわからないよ。一波乱あるかも」

「しかし、ドミティウス様は何故このことをユーラシア君に聞けと仰ったのか……」

「多分大した意味はないよ。ホルガーさんが今度在ドーラ大使になるから、気を利かせて話題を振ってくれただけだと思う」


 あたしがどう動いてるか把握してろって意味かも。

 穿ち過ぎかな?


「じゃ、またね。うっかり公爵のところ顔出してくるよ」

「バイバイぬ!」

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