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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1541話:人脈は投資

「ドーラだって安定して商売したいわ。唯一最大の商売相手である帝国が内輪揉めしたら、迷惑なんてものじゃないわ。だからいらん騒動の種は蒔きたくない。ルーネも協力してってこと」

「はい、もちろん」

「ドミティウス様の考えもおありでしょう。アーベントロート公爵家から正式に要望の連絡を差し上げますが、ルーネロッテ様からもお伝え願えませんか?」

「わかりました」


 ま、花束贈呈役があたしであっても、実はさほど問題はない。

 何故ならあたしは外国人なので、次期皇帝争いを連想する人はごく少数だろうから。

 でもルーネに役を振った方が、トータルのメリットが大きいのは確かだな。


 寄ってきたヴィルをぎゅっとしてやる。

 プリンスとパウリーネさんの間を取り持ったということなら、ヴィルが花束贈呈するという手もなくはなかった。

 悪魔も祝福となると盛り上がるだろうけどなあ。


 でも悪魔に偏見ある人は少なくないだろうし、『魔魅』持ちの閣下は当てこすりと捉えるかもしれない。

 余計な波風は立てるべきではないのだ。

 色々考えられるあたし偉い。


「ところでルーネロッテ様を連れてきたのは、何か考えあってのことかい?」


 お父ちゃん閣下とフリードリヒ公爵、悪いやつ同士を間接的にぶつけると面白いかもっていう趣向はさておき。


「いや、ルーネを遊んでやってくれという声が漏れ聞こえてくるの」

「ドミティウス様から?」

「うん。直接じゃないけど」

「へえ。ドミティウス様も変わられたなあ」


 変わられたんですよニヤニヤ。

 とゆーかルーネが変わったよね。

 成長著しい。


「ドーラを案内したりとか?」

「……でもないな。ドーラはあんまり」

「ん? 意外だね。どうして?」

「ドーラは田舎でさほど面白いところがないとゆーか、面白いところには魔物がいるとゆーか。あたしが最も自信あるのはわくわく魔境ツアーだけど、お父ちゃん閣下が危ないことさせるなってすげえ目で訴えかけてくるんだもん」

「ハハハ、魔境は危ないかい?」

「危ないエリアまでは行かないな。せいぜいドラゴン倒すとこまで」

「……ドラゴンは危ないだろう?」

「えっ? でもドラゴンまでは見せないと、エンターテインメントにならないよね?」

「見たいです!」

「あたしも中途半端なイベントを企画すると、ドーラの評判が下がるかもしれないから嫌だなあ」

「……ドミティウス様の苦労がわかる気がするよ」


 悪いやつ同士でわかり合ったらしいぞ?

 全く不可解な。


「あ、そーだ。ライナー君がぜひ元騎士の大領主様に会いたいっていう話だけど」

「ツムシュテーク伯爵家の、だよね。リリー様を巡って不思議な縁になったものだが」


 ライナー君もフリードリヒさんの次男ヘルムート君も、リリーの縁談ぶち壊しイベントにおける主演男優だ。

 いや主演女優のあたしが目立ち過ぎて存在感があまりなかったから、せいぜい助演男優かな?


「三日後遊びに来ていいかな?」

「もちろんだよ」

「三日後の午前中の予定が埋まったぞ。ルーネも時間ある?」

「はい!」

「じゃ、ルーネも一緒に。ルーネ、三日後に公爵のオーケーもらったから、朝に皇宮近衛兵詰め所に来てくれって、使いを出してライナー君に連絡しといてよ」

「わかりました!」


 フリードリヒさんのえらそーな話が聞けるぞ。

 楽しみだなあ。

 ん? フリードリヒさんどーしたの?

 あたしのプリティフェイスをじっと見つめて。

 いやん。


「随分世話を焼くんだね」

「ライナー君もモテるんだよね。パスカル君は能動的に動くタイプだけど、ライナー君は天然でモテるタイプ。あたしもつい構いたくなっちゃう」

「ハハハ、そうでなくて」


 あれ、パスカル君をナチュラルにからかってやろうかと思ったら、フリードリヒさんが案外真面目な顔してるじゃないか。

 ライナー君の世話を焼く理由か……。


「投資、かな」

「投資?」

「そうそう。あたしもせっかく帝国に来られるようになったからさ。いろんな人と知り合いになりたいんだよね。できれば有力者と」

「うん。人脈は基本だね」


 パスカル君パウリーネさんルーネに聞かせるつもりだったみたい。


「ある人と知り合って、ちょっと頑張ればより大きく影響力を及ぼせるようになるなら、手伝ってやりたくなるじゃん。知り合いであるあたしの利益でもあるから」

「至言だな。ヘルムートに助力してくれるのも、育てた人材は味方だという考えがあったからなのかい?」

「ヘルムート君はあたしが推薦してガータンの領主になったようなもんだし」

「ユーラシア君が自ら男爵となってガータンを領したとしても、ヘルムート以上のことはできただろう。ベンジャミン・ホープ氏を取り立てたのは君だ。市民権非保持者を領民化するアイデアも持っていた」

「買い被り過ぎだよ。あたしには知り合いも家来もいないし、ヘルムート君以上のことはできないよ」


 そもそも地道で面倒なことは、あんまりやる気が起きない。

 表情を崩すフリードリヒさん。


「ま、人脈論についてはいいか。僕はユーラシア君の推薦することには乗ってみることにしたんだ。何か面白いことはないかい?」

「えらく大雑把なフリが来たぞ? ここ遊びに来るとお茶がすごくおいしいと思うんだけど、フリードリヒさんの趣味なの?」

「そうだね。お茶にはちょっとうるさいよ」

「リリーがどこへ行けば手に入るのだって騒いだ、フィフィが世界一と認めて差し上げてもよくってよって言ったお茶がドーラにはあるんだ」

「何、フィフィリア嬢が世界一と評価する茶がドーラに?」


 フィフィのお茶好きはかなり知られてるんだな。

 お茶を売り込む時にはフィフィを引き合いに出すことにしよっと。


「試飲してみる?」

「ぜひとも!」

「ガラスの容器ないかな。一抱えくらいの大きさがいいんだけど」


 うん、いい大きさだな。

 茶葉はこれくらい、プチウォーターっと。


「ほう、水出し茶か」

「一二時間後くらいが飲み頃だよ。それ以上になると渋み強くなるから注意ね。温めると旨み成分飛んじゃうからダメ」

「ふうん? 繊細だな」

「今度来た時に感想聞かせてよ。興味あるようなら詳細話すから」

「楽しみにしているよ」


 しててください。

 あたしも三日後楽しみだ。


「今日は帰るね」

「手紙があったら持っていくぬよ?」

「あっ、ヴィルちゃんお願いします!」

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