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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1536話:南の帝国に思いを馳せる

 せっかくなので、コケシとおしゃべりしながら行く。

 あんまり話し込む機会もないからな。

 とゆーかエルのいるところでコケシと長話になると、必ずエルが可哀そうなことになっちゃうから。

 あたしは他人を思いやれる聖女だけれども、コケシは他人のことなど丸っきり頓着しないやつなのだ。


「『乙女の祈り』を覚えないのは、持ち固有能力の関係かもしれないな。コケシは『白魔法』と『格闘』?」

「もう一つ『毒舌』ですね」

「何だ『毒舌』って。字面はコケシにピッタリだね」

「ピッタリだぜ」

「ピッタリね」

「ピッタリだぬ!」

「えへへー」


 だから褒めてないとゆーのに。

 胡散臭そーな固有能力なのに得意げだな。

 コケシの感性もよくわからん。


「『毒舌』ってどんなやつ?」

「敵が一定の確率で『激昂』状態になるというものです」

「魔物が状態異常になって行動を限定できると考えると悪くないな。あ、だからあんたは『冷静』持ちのクララと仲がいいんだ?」

「クララが『冷静』持ちというのは知りませんでした」


 『冷静』は『激昂』状態無効の固有能力だ。

 今まで特に役に立った場面はないように思えたが、冒険者になるずっと以前から働いてる能力だったんだな。


「謎が解けたわ」

「世の中、不思議な縁があるんでやすね」

「アトムいいこと言うなあ」

「殺人蜂と大ネズミ二体ずつね」

「つまらんやつらだ。わざわざ向かってこなければいいのに。コケシは複数を攻撃するスキル持ってる?」

「持ってないです」

「じゃああたしとアトムとコケシで一匹ずつね」

「「了解!」」


 ハハッ、ダンテが不満そうだわ。

 一応『豊穣祈念』よろしくね。

 問題なく始末する。

 が、お肉が欲しいなあ。


「コケシは『殲滅』ってワード好きでしょ?」

「大好物です」

「じゃあ全体攻撃スキルが似合う気がするけどな? 『薙ぎ払い』とか『五月雨連撃』とか。デス爺から買わないの?」

「私は攻撃順が遅いものですから、あまり有効ではないというか」

「あ、そーか」


 植物系精霊の敏捷性は低いもんな。

 とどめを刺す役割が多くなるから、全体攻撃スキルは必要ないか。

 なるほどなあ。

 縄梯子から下の階へ。


          ◇


「これは……美しいです!」

「美しいぬ!」

「ここはヴィルも初めてだったね」


 地底湖が見えてきた。

 気温の割に水温が高いせいか、湯気というかもやが立ち上っている。

 天井から差し込む幾本もの光がもやを貫き、幻想的な風景を作り出しているのだ。


「ただコケシの口から『美しい』なんてごくふつーの感想が出てくるとつまらないね。あんたはもっと愉快な精霊のはずだ」

「何本もの槍が湖に突き刺さってるように見えるのがいいですね。征服感といいますか、勝ったという感じがします」

「うん、それでこそコケシ」


 おいこらアトムダンテ。

 気味悪そうな顔をするな。


「洞窟コウモリ三体ね」

「やたっ! おにーく!」


 今日は洞窟コウモリの出が悪い。

 何としてもものにしたい。


「あたしとアトムとコケシで倒すから、ヴィルとダンテは飛んで空で待機。湖に獲物が落ちる前に回収して」

「了解!」「了解だぬ!」


 よーし、逃がさず三匹ゲット!

 計四匹で、最低限の昼御飯は手に入れたぞ。

 コケシが言う。


「この湖の水は良くないことでもありますか?」

「コケシも感じた? 綺麗過ぎると思わない? 毒でも含まれてると嫌だから」


 この湖に大物がいて、落ちてきた獲物を全て食べてしまうということではない。

 今なら気配でわかる。

 ならば何故動植物が生きられないのか気になるよなあ。


「……金属でも含まれているのかもしれません」

「どっちにしてもアンタッチャブルだな」


 さらに先へ。


          ◇


「へー、チャグはニンジャなの」

「はい。『忍術』という特殊な固有能力によるスキルを使いこなす、スピード重視の魔法戦士です」


 湖畔をぐるっと回り、かつて宝箱のあった地点へ向かう。

 大分お肉も増えたからバッチリだ。

 エルパーティーの一員精霊チャグの話題になっていた。


「チャグがスピードアタッカーだってことは何となくわかってた」

「『忍術』でやすか。聞いたことがねえ」

「チャグが言うには、南方の帝国ではさほど珍しい固有能力ではないそうです」

「固有能力って親から子へ受け継がれるものらしいんだよ。こっちにはあんまり『忍術』の素因を持ってる人がいないのかもしれないねえ」


 いや、精霊がどういう固有能力の受け継がれ方するのかは知らんけど。

 放熱海より南のことは、探検隊の持ち帰った情報でしか知られていないらしい。

 あたしの人生に関わってくるのかなあ?


「以前チャグの名前を初めて聞いた時、全員が変な名前みたいな反応だったじゃん? あれは何でなの?」

「精霊のネームはスリーモーラからなるね」

「モーラが何かわからん。もう少し説明して」


 精霊の名前は『ク』『ラ』『ラ』や『コ』『ケ』『シ』のように、三拍で構成されるのが標準なんだそーな。

 『チャ』『グ』だと二拍なので、精霊達にとっては奇異な名前と感じるらしい。


「勉強になったよ。美少女精霊使いでも、精霊について知らないことあるんだなあ」

「美少女関係ないでしょう?」

「関係はないけど、あたしを形容するのに必須のワードだから」


 話題を変えるようにアトムが言う。


「でもチャグの野郎は、自分の名前を変だと思ってないみたいなこと言ってやしたぜ?」

「うん、何でだろ?」

「チャグは遠方からドーラにやって来たと言っていました。おそらくは南方の出身なんじゃないかと思います」

「やっぱチャグは南方の精霊なのか。でもどうやって北へ来たんだ? 枝葉の謎を増やすんじゃないよまったく」


 精霊は基本的に人間と関わりを持たないせいか、自分がどこに住んでいたかとかあんまり気にしないみたいだ。

 チャグに聞いたって詳しいことはわからないだろう。


 しかし南方の帝国か。

 カル帝国と並ぶくらいの大国だということは地図を見て知っているが、それだけだ。

 遠過ぎて交流のない国であり、文化も全然異なるんだろう。

 ……あれ、魅力的だな?

 地図はあるから、ヴィルワープで行けるに違いない。

 いつか時間ができたら行ってみたいな。


「誰かいるぬ」

「姐御、ウツツでやす」

「おーい、ウツツー!」


 久しぶりだな、水鏡の精霊ウツツ。

 ここがパワースポットだと言ってたから、今でも時々来るんだろうな。

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