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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1529話:エルマも知っている

 フイィィーンシュパパパッ。


「アルアさーん、こんにちはー!」

「こんにちはぬ!」

「はいよ。アンタはいつも元気がいいね」


 パワーカード大好きっ子アトムを連れて、アルアさんの工房にやって来た。


「これ、お土産のお肉だよ」

「いつもすまないね」

「お肉は元気と幸せの源だからね。あたしは幸せの伝道師」


 アハハと笑い合う。

 お肉はどこへ持っていっても喜んでもらえるなあ。

 人を笑顔にする喜びの食材なのだ。


「素材の換金お願いしまーす」


 交換ポイントが三七二〇となる。

 あんまり使わないから溜まっちゃったなあ。

 でもいいのだ。

 あたしがポイント使わない分、アルアさんが儲けてると思えば気分がいい。


「随分ポイントが溜まってるじゃないか」

「溜まってるねえ」

「アンタ、『ホワイトベーシック』や『遊歩』は店で買ったりしてるんだろう? ここで交換していきゃいいじゃないか」

「いや、自分達で装備して使うカードは交換で。他に譲ったりするカードは購入するって決めてるんだよ。うちのルール」

「おかしなルールだね」


 アルアさんが笑う。

 『アトラスの冒険者』になった初めの頃、ポイントを頑張って溜めて交換するのが楽しかった。

 パーティーが強化されたっていう充実感に満ちていたのだ。

 それを今でも続けているだけ。


 アトムは賛成してくれてるんだよな。

 ただ他人から見れば変な拘りかも。

 変える気はないけれども。


「で、どうするんだい? カードと交換していくかい?」

「『スナイプ』一枚ちょうだい」

「『スナイプ』? はいよ」


 これで交換ポイント三六二〇と。

 アルアさんが好奇心を湛えた目で言う。


「アンタのパーティーに今更『スナイプ』が必要なのかい?」

「ちょっと事情があるんだ」


 アルアさんに、クララの物理攻撃参加について説明する。

 現在のクララの装備しているパワーカードは、『逃げ足サンダル』『三光輪』『スカロップ』『シンプルガード』『スペルサポーター』『ボトムアッパー』『チャリオット』の七枚。

 コケシの代わりを務めるために物理攻撃キャラに寄せるには、『三光輪』『スカロップ』を外して、何らかの攻撃属性を持ったカードと攻撃遠隔化『スナイプ』の装備が望ましい。

 予備に斬撃属性の『スラッシュ』『サイドワインダー』があるけれども、『スナイプ』がないのだ。

 一枚あったんだけどサブローさんに貸しちゃってるしな。

 『逃げ足サンダル』は逃走スキル『煙玉』が有効なので、念のため装備しといた方がよかろうと思う。


「お姉さま」

「ん? エルマどうしたの?」


 緑の民の冒険者エルマが不安そうだ。

 ……ははあ、誰かに聞いたか?


「『アトラスの冒険者』がなくなってしまうというのは本当ですか?」


 やっぱり。

 おいおい、結構話漏れてるぞ?

 ない方の精霊使いも知ってたし。

 アルアさんが謝ってくる。


「ごめんよ。『アトラスの冒険者』廃止について、ギルドから内々に話があってね。その時のメモを床に落として、拾ってくれたエルマが知ってしまったんだよ」

「ははーん、まあ仕方ないねえ」

「お姉さまも知っていらしたのですね?」


 どう答えよう?

 異世界の事情なんてエルマは知らなくていいことだし。


「運営側の都合なんだ。現在の『アトラスの冒険者』が、あと四ヶ月で廃止になるのは決定済み」

「やはり廃止は決定なのですね……」

「ガッカリしなくていいぞ? 代わりに新『アトラスの冒険者』を立ち上げるからね」

「「えっ?」」


 ここまではアルアさんも聞いてないことだったか。


「『アトラスの冒険者』廃止と同時に、転送魔法陣と転移の玉が使えなくなるんだ。だから転移の玉を持ってる面々には、自分のホームとギルドに行ける新しい転移の玉を配るよ。今、設計してもらってるんだ」

「新しい……転移の玉?」

「塔の村のデス爺の転移術があれば可能なんだ。アルアさんの持ってる転移の玉は、『アトラスの冒険者』のものじゃなくて、デス爺の設計したやつだよ」

「そうなんですね?」


 エルマの声が弾んできたね。


「ギルドには多数の転移石碑を設置して、あちこちに飛べるようにする。今の『アトラスの冒険者』みたいに、各冒険者に合わせてきめ細かく転送魔法陣を設置するのはさすがにムリなんだけどさ。でもエルマもギルドと魔境とパワーカード工房に来ることができるなら、さほど困んないでしょ?」

「はい!」


 石板クエストが来なくなるのは少し切ない。

 思えば普通じゃタッチできない、いろんな経験を随分させてもらったもんな。

 愉快なクエストをたくさんくれたおっぱいさんに感謝。

 アルアさんが言う。


「大量の黒妖石の加工とは、そういうことだったのかい。だから土と岩の民の職人の数が必要だったんだね?」

「アルアさんばかりに苦労かけるわけにいかないからねえ。ドワーフとは仲良くやれてて一回注文も受けてもらってるし、多分問題ないな」


 とゆーか、アルアさんは輸出用のパワーカードと弟子の育成に注力して欲しい。


「この件はどうして秘密なんだい? 廃止に応じて動いてるのは、どうやらアンタだけみたいじゃないか。皆で仕事を分担して対策すればいいのに」

「あたしはチュートリアルルームの係員に教えてもらったんだよ。廃止がバレて騒ぎになっちゃうと、その係員の情報管理責任が問われるみたいで」

「ははあ?」

「今月末か来月頭にはギルドの職員に知らされる予定なの。冒険者に通告するのは廃止一ヶ月前だけど。ギルドの職員から情報が漏れたのなら係員の責任はないんで、もう一ヶ月は黙っててね」

「本来はまだギルドの職員も知らない情報だったのかい? 呆れたもんだね」

「これからも今までとあまり変わらないのですね?」

「変わらないと言いたいけどなー。今までは『アトラスの冒険者』が赤字でも本部が損失を補填してくれてたんだ。でもこれからは赤字だと潰れちゃうから、エルマもギルドを儲けさせることを考えてよ。具体的には、積極的にアイテムを採取してきてギルドで売ってくれるといい。売買差益の大きい魔宝玉がベストだな」

「はい、わかりました!」


 ドーラの人口が多くなりゃ依頼所クエストは自然と増え、ギルドも儲かるだろ。

 うんうん、エルマも笑ってる方が可愛いよ。


「アルアさん、エルマ、じゃーねー」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動して帰宅する。

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