第1528話:精霊トレード
フイィィーンシュパパパッ。
うちの子達を連れて塔の村にやって来た。
大体エルのパーティーは、これくらいの時間に早めにお昼を食べてから塔に入るはず。
「ビンゴだな」
「ビンゴですね」
「ビンゴだぜ」
「ビンゴね」
「ビンゴだぬ!」
久しぶりだな語尾変化。
新しい芸風の開発もいいが、たまにはおさらいもしとかないと。
故きを温ねて新しきエンターテインメントを知るウルトラチャーミングビューティー。
「おーい、エル!」
「ユーラシアじゃないか」
表情の柔らかいエル。
探索も調子いいんだろう。
「フィフィリアとノヴォリベツの温泉に行ったらしいじゃないか。ボクも誘ってくれればよかったのに」
「どーしてエルはノーガードで爆心地に飛び込もうとするんだろうな?」
「えっ?」
サディスティック精霊コケシがスタンバイしてますよ。
今日はヴィルもいるし、コケシに頼みごともある。
たまには遊んでやるか。
「あたしとフィフィと、もう一人一四歳の帝国の皇女が一緒だったんだ。リリーから見ると姪になるルーネって子」
「フィフィリアの本の表紙絵を描きに行ったと聞いた」
「今更話題を変えようとしたって遅いわ。厳正な審査の結果、三人ほぼ同じ大きさだと判明したんだ」
「何が?」
「エル様にないものです。すなわちおっぱいです」
「あっ、コケシ! ド真ん中過ぎるわ!」
「うがー!」
「おいこら、サディスティック精霊コケシともあろう者が何やってるんだ。エンターテインメントが台無しじゃないか」
「申し訳ないです。絶好のトスだったものですから、ついそのままアタックしてしまいました。素直過ぎたと反省しております」
「コケシは真綿で首絞めるように追い込むのがいいところなのに。もーしょうがないなあ。ヴィル、鎮静剤」
「はいだぬ! ぎゅー」
「ああ、君はとてもいい子!」
「とてもいい子ぬよ?」
残りの精霊達が皆、真綿で首絞めるのがいいところ? って顔をしている。
他にどーゆー褒めどころがあるのだ。
誰あろうコケシだぞ?
「はあはあ」
「エル、落ち着いた?」
「何とか。今日ユーラシアが塔の村を訪れたのは?」
「コケシを貸してもらおうかと思って」
「「「「は?」」」」
うむ、何故好き好んでデンジャラス精霊なんぞを借りたがるか?
山より高く海より深い謎だろう。
これには当然説明が必要。
「以前、赤眼族の文字の資料をコケシに渡したじゃん」
「エル様の世界の昔の修飾文字ですね?」
「そうそう。同じ文字の書かれた石が、ある洞窟の中にあってさ。以前のクエストの現場だった、地下のダンジョンの中ね。書かれた文字をコケシに読んでもらいたいんだ」
「ああ、私は興味があるのでよろしいですけれども」
がめつい交渉してくるかと思ったら素直だな。
かなりあの文字には御執心らしい。
チラッとエルを見るコケシ。
エルの了承がいるんでしょ?
わかってるわかってる。
「それで明日、コケシとクララをチェンジしてもらいたいの」
「「「「えっ?」」」」
別に驚くところじゃないでしょ。
「エルの塔探索を邪魔しようってんじゃないんだ。メンバー足りないと困るじゃん?」
「まあ予定が狂うのは困るな」
「コケシってヒーラーなんでしょ? だから同じヒーラーのクララと、一日トレードはどうかなってことだよ。そりゃクララは真面目な子だから、コケシの腹黒いところまではマネられないけど」
「何てことを言うんですか!」
笑い。
エルが言う。
「コケシとクララちゃんが了承してるならいいんじゃないかな」
「他のパーティーに参加させていただくのも勉強になります」
「アトムダンテわかってるね? あれは『他のパーティーで犠牲者を出します』って意味だよ。つまり標的になるのはあんた達」
「何てことを言うんですか!」
再びの笑い。
冗談やないけ。
え? あながち冗談でもない?
まあたまにはアトムダンテも楽しんでみればいいけれども。
「コケシってただのヒーラーじゃないんでしょ? 撲殺系と予想してるけど」
「そうだぷー」
「合ってるでござる」
やはり積極的に物理攻撃してるのか。
じゃ、クララにも物理攻撃可能な装備させとこ。
うちのパーティーはあたしの『薙ぎ払い』や『雑魚は往ね』が主力の火力なので出番はないが、クララの攻撃力パラメーターは低いわけじゃないのだ。
「明日も今くらいの時間に来るからよろしくね」
「ああ、わかった。……ユーラシア」
「何だろ?」
「レイカやリリーが転移の玉を持っていただろう?」
「ちょっと頭寄せて」
内緒話モード発動。
「『アトラスの冒険者』が廃止されると聞いた」
「うん。まだ誰にも言わないでね」
「母が迷惑をかけているのか?」
エルの母赤眼天使エンジェルが『アトラスの冒険者』のトップだということは、エルには伏せてあったのだが。
デス爺辺りから聞いたか。
「ややこしい事情があるんだ。『アトラスの冒険者』の廃止は時間の問題ではあったよ。エンジェルさんだけのせいじゃない」
「すまない」
「いや、大体『アトラスの冒険者』って、希望してるしてないに関係なくいきなり選ばれたり、庭に突然転送魔法陣作ってみたり、頭おかしい組織だとは思ってたんだ。今はドーラの治安を守る活動もしてるんだけど、そんなのは本来異世界じゃなくてドーラの責任でやるべきだしね。だからこの際、あたし達に都合のいい組織に作り変えることにした」
「ユーラシアはいつも前向きだな」
「エルも参加してよ。計算に入ってるの」
「もちろんだ。ボクだけ入れてくれないなんて不平等じゃないか」
「何だこの寂しんぼめ」
三度目の笑い。
今のところこれでいい。
異世界についてはまだわからんこと多いけどな。
「具体的には、自分のホームと現在の『アトラスの冒険者』のギルドに飛べる転移の玉を、各冒険者に持たせる。ギルドに転移石碑をたくさんおいてさ。各地へ行けるステーションにしようと思ってるんだ」
「拙者達も様々な場所に行くことができるということでござるな?」
「できる。楽しくなるよ」
エルのパーティーの面々も嬉しそう。
エルのパーティーは塔のダンジョンのエースだ。
こっちでも目標としてることはあるだろうけど、行動範囲が広がるとなるとワクワクするもんな。
「じゃ、あたし達は帰るね。また明日」
「バイバイぬ!」
転移の玉を起動して帰宅する。




