第1515話:民意には逆らえない
「さてと。じゃあ留守はよろしく」
「「「了解!」」」
今日はガリア王国の外務大臣コージモさんを連れて、帝国の施政館を訪れる予定だ。
「ユー様、帰りはいつ頃になりそうですか?」
「むーん?」
帝国とガリア、互いの意思の確認だけだとは思う。
ただどれだけ時間かかるかと言われるとサッパリ。
今日はうっかり公爵達がラグランド行き船出の日なので、できれば様子を確認したいということもある。
「昼には戻れないと思う。ちょこれえと買ってくるから夜に食べようよ。午後時間があったら魔境だな」
「塔の村に届ける転移の玉はどうしやす?」
「うーん、明日になるかな」
明日は今のところ、悪魔っ子レダにギルドを紹介してやるくらいしか用事がないから。
「ベリーサッドね」
「もーダンテはイケメンのクセに可愛いアピールするのはズルいぞ」
「ズルいぬ!」
アハハと笑い合う。
「行ってくる!」
「行ってくるぬ!」
◇
「おっはよー」
「おはようぬ!」
「おお、ドーラの精霊使いユーラシア殿か。飛行魔法?」
「そんなとこ」
ガリア帝国の議会政堂までヴィルとともに飛んできた。
今後議会政堂に用がある時、一々飛んでくるの面倒だな?
門兵に聞く。
「あたしはこの子ヴィルがいるところならどこでも転移できるんだ」
「ふうむ、大変便利だな」
「いきなり悪魔が現れるとビックリするかと思って今日はやめといたんだけど、次に議会政堂に来る時はヴィルを先に寄越してもいいかな? 敷地内に直接転移したいんだよ」
「構わんが、その前に一声かけてくれ」
「ヴィル、わかった?」
「わかったぬ!」
「よーし、ヴィルいい子!」
ぎゅっとしてやる。
ガリアのクエストは王様に関わることが多いようなんで、この先議会政堂に来る用事はあんまりないかもしれないが。
「今日はコージモ外務大臣に用があるんだ。議会政堂に来てくれって言われた」
「うむ。受付の方で確認してくれ」
「はいはーい」
◇
フイィィーンシュパパパッ。
コージモさんを連れて皇宮にやって来た。
「おっはよー」
「おはようぬ!」
「やあ、精霊使い君。おはよう。そちらはどなただい?」
「ガリアのコージモ外務大臣だよ」
「えっ? これは失礼いたしました」
「いえいえ。急にお邪魔して、こちらこそ申し訳ない」
ハハハ、サボリ土魔法使い近衛兵焦ってやがる。
辺りを見回していたコージモさんが言う。
「メルエルの……宮殿ですか?」
「ここ皇宮なんだ。そして彼はこう見えて近衛兵なの」
「道理で。立派な兵士さんだと思いましたよ」
「身なりは立派なんだよなあ」
アハハと笑うけど、サボリ君表情硬いやん。
「……ガリアの外務大臣閣下がいらっしゃるとは。きな臭いことでも起きるのかい?」
「いや、きな臭くはないよ。ただの秘密交渉かな」
「ただのって」
ガリアのアンヘルモーセンやサラセニアに対する考え方は大体わかったから、もう秘密にする意味はない気もする。
かえってオープンにした方が、アンヘルモーセンの牽制のためにはいいんじゃないかな。
まあ当事者両国の判断だけど。
とりあえず近衛兵詰め所へ急ぐ。
「おっはよー」
「おはようぬ!」
「ユーラシアさん!」
ルーネが飛びついてきた。
ついでにヴィルも。
よしよし、いい子達だね。
何かルーネも感情豊かだなあ。
最初会った時は全然思わなかったことだけど。
近衛兵長さんが聞いてくる。
「そちらの方がコージモ外相ですかな?」
「うん。話聞いてたんだ?」
「今しがたルーネロッテ様から」
「こちらはヴォルフ近衛兵長だよ」
「どうぞよろしく」
「こちらこそ」
こちらもよしよし。
和やかになった雰囲気のところへ問題作投下。
「じゃーん! ルーネの絵が完成しました!」
「「「「「「「「おおおおおおお?」」」」」」」」
どよめく男ども。
湯浴み着のしわ一本一本すら艶かしい絵なのだ。
イシュトバーンさんが色気をサービスしておいたって言うだけある。
「は、恥ずかしいです……」
「この絵は、件の画集の?」
「同じ絵師イシュトバーンさんの絵だよ。帝都で今大評判の画集、コージモさんにも一冊あげるね」
「これはこれは。ありがとうございます」
販促販促。
ガリアは遠いけど、将来のためにね。
「ユーラシアさん、素晴らしいルーネロッテ様の絵じゃないですか」
「でしょ? イシュトバーンさん自分で大傑作って言ってたぞって、あれ? 記者さん達いつの間に?」
「今来たところですよ。そちらが?」
「ガリアのコージモ外務大臣だよ。施政館に行くんだ」
「御一緒してもよろしいですか?」
テテュス内海情勢に関連して帝国とガリアが手を組むことは、市民に知らしめたいことではある。
新聞記者トリオがついてきたっていいっちゃいいんだが。
うーん……。
「やめといた方がいいと思うよ」
「機密が多くて記事にはできない、高度な外交交渉だからということですか?」
「いや、ガリアとの関係については内容が広まって欲しいくらい。ただなー。記者さん達、主席執政官閣下を目の前にしてウソ吐ける?」
「えっ? どういうことでしょう?」
「お父ちゃん閣下はルーネのえっち風味な絵を誰にも見られたくなかったと思うんだ。記者諸君は当然見ていないだろうねって閣下に言われて、目泳がずにいられる? ウソ吐いてバレると、施政館で虚偽を語ったとかの罪状で処罰されるかもしれないぞ?」
慌てる記者トリオ。
何故か近衛兵達も。
「どうして物騒な絵を見せるんですか!」
「物騒て。この絵を見ることができてよかったと思う人、手を挙げて?」
「「「「「「「「はい!」」」」」」」」
「ほら、全員挙手じゃん。民意には逆らえないのが政治家とゆーものだ」
「ユーラシアさんは政治家じゃないじゃないですか!」
「言われてみりゃあたしは美少女冒険者だったわ」
アハハ、あれっ?
ここは笑う場面なのに、皆の笑いが卑屈だぞ?
「記者さん達や近衛兵さん達が哀れだから、ルーネもこの絵は誰にも見せてません、お父様が最初ですって言っといてね。いい女はウソを吐く能力も必要だぞ?」
「はい、わかりました!」
皆が変なことを吹き込んでって顔してるけど、あんた達だってかわいそーな目には遭いたくないんだろーが。
「あとで新聞社に寄るよ。話せることは社で話すでいいかな?」
「「「お願いします!」」」
「じゃ、行こうか」
施政館へ。




