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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1498話:記憶喪失ってどう思う?

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後、毎晩恒例のヴィル通信だ。


「記憶喪失ってどう思う?」

『は?』

「最近忙しいから、やること忘れちゃうんだよね」

『致命的なことか? 面白い方向に転がるやつか?』

「サイナスさんの頭に浮かぶのはその二つしかないのかよ。いや大したことじゃないんだけど」

『判定してやろう。正直に話しなさい』


 ええ?

 サイナスさんはこの裁判形式みたいなのが割と好きな気がする。


「今うっかり公爵んとこにお世話になってるラグランドの王女オードリーが、帰国するってことを午前中に聞いたんだ。三日後に帝都メルエルの外港タムポートを出港予定ね。リキニウスちゃんとうっかり公爵も同行するから、ラグランドに伝えないといけなかったの」

『結構重要な役割じゃないか。将来のラグランド統治のコアだろう?』

「まー重要っちゃ重要か。魔境に遊びに行っちゃっててさ。あとで思い出して夕御飯の前に慌ててラグランド行って伝えてきた」

『判決、ギリギリ無罪』

「やったあ!」


 無罪判決を勝ち取ると結構嬉しいぞ?

 サイナスさんなりのエンターテインメントを提供してくれてるのかしらん?

 実際にラグランド到着するまでには間があるから、差し迫った用でもなかったが。


『面白話の出番だな。午前中は何してたんだ?』

「どこ行ってもそーゆー扱いだよ。あたしは面白話メーカーではないとゆーのに」

『面白話メーカーでも面白話テラーでも面白話マニアでもいいから』

「あれえ?」


 期待されてるのだろうか?


「朝、うっかりじゃない方の公爵から連絡が入ったんだ。ヴィル経由で」

『ルキウス皇子の舅になる人だな?』

「うん、フリードリヒさん。ヴィルは今でもプリンスとパウリーネさんの手紙をやり取りしてるのに関わってるからさ」

『ヴィルはいい子だなあ』


 マジでいい子。

 よく働いてくれるので、たくさんぎゅっとしてやらねば。


「プリンスの結婚、来月半ば頃になるって」

『えっ? 随分と早くないかい?』

「皇帝陛下がそろそろ危ないって情報を得たからだと思うんだ。ハッキリ言わなかったけど」

『次期皇帝を後押しという、旗幟を鮮明にするためにか……』

「だろうね。フリードリヒ公爵はあんまり態度明らかにしなかったけど、これで完全にプリンスルキウス派であるって表明した格好になるんじゃないかな」


 陛下が亡くなって次の皇帝が決まるまでにプリンスをアピールするってことだ。

 娘がプリンスに嫁ぐのにどっちつかずだったってのも変な話だが。

 まあフリードリヒさんは商売人だから。

 逆に言うとフリードリヒさんが味方してくれるってことは、展開次第でプリンスが皇帝になる目が見えてきたということでもあると思う。


『勝負の行方はどうなりそうなんだい?』

「主席執政官閣下とプリンスの一騎打ちの様相だね。皇位継承権一位のセウェルス第三皇子は脱落、二位のフロリアヌス殿下は空気」

『ユーラシアの見立てではどっちが?』

「閣下有利だね。プリンスも庶民の人気はあるんだけど、有力者の支持が未知数なんだよなー」


 これは仕方ない。

 プリンスはドーラにいながらよく支持伸ばしてると思う。


「結婚式と市民への披露の行進でどれだけ挽回できるかだな」

『『威厳』の効果に期待ということかい?』

「大いに期待だね。パウリーネさんをお姫様抱っこして広場から皇宮まで歩くんだ。キュンキュンするでしょ?」

『君のアイデアだな?』

「うん。でもデコレーション馬車を用意する時間なかったから良かったって、フリードリヒさんに変な角度から感謝された」

『ハハハ、面白い』


 サイナスさんに変な角度で面白がられた。

 何でだ?


「超すごいお茶の一番茶が結婚までに間に合いそうなんだよね。あれ見せてドーラとのパイプの強いプリンスの魅力上がんないかなー。甘過ぎる?」

『ドーラの魅力次第じゃないか。君の出番だぞ?』

「あれ? 変な角度からあたしの出番だ」


 今日は変な角度の日。


『普通に考えて、お茶の良さでルキウス皇子を評価する層はごく一部だろうね』

「お茶単品だとなー」


 陛下が亡くなるまでの時間がなさ過ぎる。

 プリンスが在ドーラ大使である期間も。

 これは仕方ない。


「それとやっぱり天使が絡んでくることになりそう」

『君のカンだけじゃなくて、根拠ができたってことかい?』

「帝国行ったら施政館に呼ばれてさ。天使国アンヘルモーセンがサラセニアにちょっかいかけてる。天使国のアクションに対してガリアがどう動くかわからんってことで、帝国が警戒してるの」

『つまりガリアの王様と直にコンタクト取れる君にお鉢が回ってくると』

「そゆこと」

『報酬は?』

「あ、しまった。決めてこなかった。ことが終わってからだと過小評価されそうだな」

『だからってことを大きくするんじゃないよ?』

「やだなー。あたしが大きくするんじゃないってば。勝手に大きくなっちゃうの」


 通信越しにサイナスさんの疑惑の感情が伝わってくるけど本当だぞ?


『……しかしユーラシアと絡むのはガリアだろう? 天使は関係ないんじゃないのか?』

「いやだってことが大きくなっちゃうじゃん? となると当然天使も関係するよ?」

『ええ? 大事になる前提なんだな?』

「楽しみだなー」


 だから疑惑の感情を投げつけてくるな。


「アンヘルモーセンに対する帝国の対応はこんな感じですよっていう情報もらったから、明後日ガリアの王様に会ってくるんだ」

『情報を簡単にもらえるのな。軍事機密も含まれるだろう?』

「だってこーゆーのは片っ方からの話じゃ進まないじゃん。歩み寄る側が情報提供しないと」


 実際のところ、素早く間に入れるのがあたししかいないのだ。

 殊更に呼びつけるなら、あたしを信頼して当然出すものは出すべき。


『明日はどういう予定なんだ?』

「温泉行くんだ。元悪役令嬢の本の表紙をイシュトバーンさんに描いてもらうの」

『ノヴォリベツか。いいなあ』

「いいでしょ? 閣下の娘ルーネも連れてく。許可取ったんだ」

『え? それは……』


 イシュトバーンさんのえっちな視線に晒されるだろって?

 まーいーじゃん。


「本日はお終い。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日はおんせーん!

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