第1494話:何で施政館に呼ばれてるのかな?
「あれでよかったのでしょうか?」
「杖対決のこと? バッチリだよ。ルーネの裁定に文句言うようだったら、今度こそお父ちゃん閣下に叱られてもらう」
杖職人ナバルさんを送り届けたあと、再び皇宮殿に戻り、施政館へ行く途中だ。
ドルゴス宮廷魔道士長及びルーネと会話を楽しむ。
「まーあんな用途の違う杖二本じゃ、優劣決めることの方が難しいよねえ?」
「ハハッ、さようですな」
「どっちがいいってルーネが言ったところで、負けた方は絶対納得しなかったから、引き分けでいいんだよ」
頷くルーネ。
杖二本もらって儲けたってゆーイベントだからいいんだぞ?
「ルーネを遊んでやってくれという、お父ちゃん閣下の心の声が漏れ聞こえてくる今日この頃。温泉なら連れていってもいいかなあと思ってるんだ。危ないことないし」
「ドーラの温泉ですか。いいのではないですかな? のんびりできそうです」
「私もぜひ行きたいです!」
「よし、ルーネも行きたいという意思は確認した。あとは閣下の許しがあればだけど」
「ルーネロッテ様はこの前のラグランドが初めての外遊だったでしょう?」
「はい、そうですね」
「才能は磨かれてこそ価値があります。個人的には、帝国の皇女としてもっと様々な経験を積んでいただきたいと思うておるのです」
「お父ちゃん閣下に言ってやってよ」
「え? いやいや、なかなか……」
魔道研究所という組織の長として、権力者に意見はしにくいんだろうな。
予算を削減されては困ってしまう。
「お父ちゃん閣下は過保護なんだよなー」
「ルーネロッテ様は、皇宮の外へ出る機会も多くなかったと記憶しております」
「確かに少なかったですね。社交界デビューもまだですし」
「ユーラシア殿には期待しておりますぞ」
あれ、うまいこと仕事を押しつけられた気がするぞ?
あるいはルーネを遊んでやってくれというのも、ルーネの希望ばかりじゃなく閣下自身の意向も含まれているのかな?
「ちょっと寄ってくね」
「オーベルシュタット公爵家邸ですな?」
「そうそう。おーい! オードリー!」
オードリーとリキニウスちゃん、うっかり(元?)公爵、セグさんが庭にいた。
オードリーを遊んでやっているんだろう。
ぎっくり腰やったセグさんの腰も、見たところ問題なさそうだな。
「ユーラシア! ルーネ!」
「おお、あんたは元気だな」
「こんにちは」
「ドルゴス殿ではないか」
「グレゴール様、お久しゅうございます」
柵のあっちとこっちで和気あいあい。
「遊ぼうではないか」
「ごめんよ。施政館に呼び出されてるから行かなきゃいけないんだ。今日は顔見に来ただけ」
「そうであったか……」
ガッカリするな。
可愛いやつめ。
「セグさんの腰はあれから大丈夫かな?」
「爺か? 大丈夫なのだ! 元気なのだ!」
「もう何ともなく。ありがとうございました」
調子乗ってるとまたグキッとなっちゃうから注意してね。
あ、適度な運動はした方がいいんだったか?
「ラグランドへの出発はいつになるんだったかな? スケジュール決まったんだったら教えてよ」
うっかり公爵が胸を反らす。
「三日後にタムポートを出発するぞ!」
「ちなみにどういうメンバーになる?」
「ここにいる四人の他、我が娘アルヴィリアが同行する。使用人含めて総勢一三名だな」
「りょーかーい。そうラグランドに伝えてくるよ。アルヴィリアさんというのがリキニウスちゃんのお母ちゃんだね?」
「うむ」
オードリーがいて家の雰囲気は明るいだろうけど、夫のガレリウス皇子を亡くして気が晴れないこともあるだろう。
ラグランドで楽しんでくれるといいな。
「オードリーは字覚えるのは順調かな?」
「もちろんじゃ! もう全て覚えたのじゃ!」
「おおう、やるね。書く方も頑張れ」
「ユーラシアは鬼じゃ!」
「違うとゆーのに。そんなこと言ってるとまた違う勉強道具をプレゼントしちゃうぞ?」
「ユーラシアは親分鬼じゃ!」
アハハと笑い合う。
オードリーみたいに字を覚えたての子が読む本が『輝かしき勇者の冒険』なんだろう。
だから潜在意識に染みついてしまうのだ。
純真な子供の心に忍び込む悪の本め。
いつか絶対に排除してやる。
フィフィの本が完成したら、オードリーにもプレゼントしてやらないといけないな。
「じゃねー」
「先方によろしくな」
「また来るのじゃ!」
公爵邸を後にし、再び施政館へゴー。
「ところであたしは何で施政館に呼ばれてるのかな? 魔道士長さんと同じ用だったりする?」
魔道士長さんが知ってるなら予備知識を仕入れときたい。
何たって閣下は他人の裏をかこうとするからやりにくいのだ。
「おそらくは。ユーラシア殿とともに訪れよとの仰せでしたので」
だから魔道レーダーを起動して、あたしが魔道研究所を訪れるのを待ってたってことがあるのか。
しかし……。
「内容は知らされてないんだ?」
「存じないですな」
「むーん? 何だろうな?」
「ユーラシアさんには心当たりないんですか?」
「情報がないからなー。あたしと魔道士長さんが同じ用で呼ばれてるんだったら、きな臭い話っぽいよね」
「しかしルーネロッテ様も呼ばれておるのでしょう?」
「いや、ルーネは呼ばれてるわけじゃないんだ。連れてきてもいいよってだけで」
「ふむ? おかしな話ですな」
確かに。
閣下は公私混同するタイプじゃないと思うが、ルーネに関してはわからんからな?
「ユーラシアさんは先ほど近衛兵の詰め所で、外国が関係しているのではと推測してたんです」
「顕在化してる危険じゃないと思うんだ。間違えると面倒になる可能性があるってことなんじゃないかな」
だからルーネを同行させてもいいのではないか。
というかあたしがルーネをガリアに連れてったこと知ってるから、北国関係かとも思っている。
ただ帝国の主席執政官閣下とガリアの王様双方と話しているあたしのカンだと、特に帝国とガリアの間に何か因縁があるとも思えないがなあ?
魔道士長さんが言う。
「わしが施政館に呼ばれる時は、軍関係が多いのです。従軍する宮廷魔道士を選抜せいとのことで」
「軍関係か。じゃあやっぱり外国との揉め事なのかな?」
もっとも魔道士長さんとは微妙に別件だということだってあり得る。
これ以上判断材料がないから、考え過ぎても仕方ないか。
何はともかく施政館へ。




