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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1493話:杖対決、判定は?

「魔道研究所は初めてなんです」

「ちょっと怖いですね」


 魔道研究所への道すがら、新聞記者達が口々に言う。

 いや、怖くはないけど。

 結構重要な研究もあるから、怖がられてるくらいの方がいいのかもしれないな。


「ふつーの人には用のないところかもねえ。あんま面白くない場所ではある」

「中のラウンジまでは入って構わぬのだぞ?」

「そうなんですか?」

「五日前に連れていっていただきまして、大変興味深かったです」

「ルーネが行った時は特別だぞ? 記者さん達が普通に訪れて記事ネタを拾える場所ではないなあ」


 もし今後、魔道研究所が一般向け魔道具を開発するようになると、新聞記者トリオにとっても来やすい場所になるかもしれないけど。

 内部の様子知ってたり知り合いがいたりすれば、いつか役に立つかもしれないよ。

 ヴィルが訝しげに言う。


「……変な感じがするぬ」

「ほんとだねえ」

「どういうことですか?」

「かなり広い範囲で高レベル者の居場所を探知する、魔道レーダーってものがあるんだよ。そいつの試運転をしてるんだと思う」


 今日あたし達が魔道研究所行くことを知ってるから、正常に働くかどうかチェックしてるんじゃないかな?

 予算をぶん捕るためには実績を残しておかなければいけない、とゆーことは理解している。


「ユーラシアさんは魔道レーダーの作動を感じ取れるんですか?」

「ある程度のレベルがあればわかると思う。覗かれてるようなすげーえっちな感覚があるから好きじゃないんだよね」

「くすぐったいぬ」

「あれ、ひょっとして魔道レーダーって、人によって感覚が違うのかな?」


 それは知らなかったが。

 魔道研究所にとうちゃーく。

 ドルゴス宮廷魔道士長が自ら出迎えてくれる。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「よくいらっしゃいましたな。今日は新聞記者諸君も御一緒ですかな?」

「そうそう。ネタに飢えてるみたい」


 笑いながらラウンジへ。


「魔道レーダーを動かしてるんだ?」

「わかりますか。たまには点検しておきませんとな」

「あたしはえっちな感じがするんだけど、ヴィルはくすぐったいって言うんだよ。受ける感覚に個人差があるのかも」

「ほう、面白い所見ですな。研究の余地がありそうです」


 興味深そうな魔道士長さん。

 予算が出るといいね。

 あ、モプシュさんいた。


「ナバルよ、遅いわ! 自信がないから足が進まぬのであろう!」

「何を言うか! お前こそイライラしておるのは、自分の負けが見えているからだ!」

「おお? 思ったより対決姿勢が盛り上がるぞ?」


 新聞記者トリオも魔道士長さんも楽しそう。

 しかし主役のルーネが困惑気味だ。

 あ、他の宮廷魔道士達も集まってくるじゃないか。

 今日はこれから施政館行かなきゃいけないから急ぐぞ。


「さあカル帝国とドーラの魔道杖職人対決だよ! どちらがルーネロッテ皇女に相応しい杖を作ったか? 判定はルーネ自身が行うよ。双方用意はいいかな?」

「「いいぞ!」」

「レッツファイッ! まずはドーラの杖職人ナバル! 自身の作製した杖について特徴を述べ、ルーネに献上せよっ!」

「ハードオークの大杖だ! ルーネロッテ嬢のステータスを考慮し、魔法はもちろん殴打での使用も念頭に置いた自信作である! 自動修復機能つき!」


 おお? おそらくぶん殴ることを前提としているからだろう。

 自動修復機能つきのマジックアイテムにしてきたか。

 ペペさんの大杖を作っている経験を生かしてきたな。

 冒険者としてこれ以上の杖はないんじゃないの?


 しかしモプシュさんは不敵に笑う。


「続いて帝国の杖職人モプシュ! 自身の作製した杖について特徴を述べ、ルーネに献上せよっ!」

「ブナの短杖! 常に身に忍ばせておくことを意識した作品である! いい節のある原木を厳選し、魔力集中部に来ることを心がけた!」


 モプシュさんもやるな。

 帝国内で普段護身用に持つ杖ということか。

 となると武器所持違反の法律に引っかからない仕様だと思われる。

 これはドーラ人にない発想だったかもしれないな。

 しかも魔力集中部に工夫があるのならば、魔法力補正値は高くなりそう。


「両者の杖は出揃った。ルーネに持ち比べてもらおう!」


 杖を振り回したり魔力を集中させたりするルーネ。

 ハハッ、嬉しそうだな。

 頬が紅潮してるぞ?

 周りの宮廷魔道士達もあーだこーだ言ってる。


「全く性格の異なる杖の対戦となりました。いかがですか? 解説のドルゴスさん」

「ともに素晴らしい出来です。職人の並々ならぬ心意気を感じます」

「甲乙つけがたいということですね?」

「さようですな。それぞれの持ち場でともに極めて優秀なパフォーマンスを発揮すると思われます。しかし同じ杖でも異なるジャンルの作品です。いかにルーネロッテ様の心を掴んだかに、勝敗の行方がかかってくると思われますぞ」

「ありがとうございました。おおっと、ルーネは悩んでいるようだぞ?」


 二本の杖を見比べて悩むルーネ。

 見映えを重視する場面や実際に冒険者活動するなら片眼鏡の杖だ。

 しかし普段持てるモプシュさんの杖の利便性携帯性は捨てがたい。

 両方とも気に入ったようだが?


「頑張れルーネロッテ様!」

「外野から意味不明の応援が入りました。運命の時は迫る! さあ、ルーネの結論は?」

「え、選べません!」

「判定はまさかのドロー!」


 まあ予想はできてたけどね。

 ブーブー不平を言う二人の杖職人。


「ナバルと引き分けるなど納得いかん!」

「そうだ! 白黒ハッキリつけてくれ!」

「おっとこれはルーネの判定には文句を言わないという、最初の取り決めに従わない重大なルール違反だ。ルーネを溺愛するドミティウス主席執政官閣下にお小言をいただかねばなりません!」

「「えっ?」」


 目が点になり動きが固まる二人。


「叱られてくる?」

「「いやいや!」」

「かくして一つの争いは終わり、平和が訪れた! 杖職人に拍手!」

「「「「「「「「パチパチパチパチ!」」」」」」」」


 華やかさの欠片もない対決だと思ったけど、綺麗に収まったじゃないか。

 新聞記者トリオも喜んでるし。

 魔道士長さんが言う。


「ユーラシア殿は施政館に呼ばれておるのでしょう? わしもなのです」

「そーなんだ? じゃあ一緒に行こうか」


 転移の玉を起動。

 片眼鏡のおっちゃんルーネ魔道士長さんを連れ、一旦ホームへ。

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