第1492話:正体不明の呼び出し
フイィィーンシュパパパッ。
「おっはよー」
「おはようぬ!」
「やあ、いらっしゃい」
片眼鏡が特徴の杖職人ナバルさんを連れて皇宮へやって来た。
美少女番のサボリ土魔法近衛兵が言う。
「ルーネロッテ様と新聞記者達が来ているよ」
「うん、今日魔道研究所行く予定なんだ。杖対決なんだよ」
「ちょっと聞いたけど、もう一つ内容がわからないんだ」
「興味あるの? 物好きだなー」
帝都の杖職人モプシュさんがああで、ドーラの杖職人ナバルさんがこうで。
カンカンガクガクはい勝負。
「……とゆー、まことに地味な対決だよ。杖をもらえるルーネは喜んでるかもしれないけど、あたしはどの辺にエンターテインメントを求めていいものやら」
「モプシュのやつに我が必殺の杖を食らわせてやらねばならん!」
「あれ? 殺人事件になりそうだぞ? 思いもしないところからエンタメの気配が」
「殺人事件はエンタメの範疇なのか」
「範疇なんだぬ!」
アハハと笑いながら近衛兵詰め所へ。
◇
「おっはよー」
「おはようぬ!」
「来たかユーラシア!」
「ユーラシアさん!」
ウルピウス殿下とルーネだ。
ウ殿下はナバルさん初めてだったかな。
紹介っと。
「殿下も杖が必要な年齢になったら作ってもらうといいよ。それまでナバルのおっちゃん生きてるかわからんけど」
「ああ無情!」
片眼鏡のおっちゃんのリアクション面白い。
「今から魔道研究所行くんだ。記者さん達も行く?」
「行きます!」
「何でも帝国本土とドーラの杖職人の対決だとか」
「ルーネに相応しい魔道杖っていうテーマで、帝国のモプシュさんVSドーラのナバルさんの頂上決戦なのだ! 人口の多い帝都で揉まれたモプシュさんが勝つか、それとも豊富な素材に感性を磨かれたナバルさんに軍配が上がるか!」
「ユーラシアさん、随分煽りますね?」
「むさいおっさん二人のしょぼくれた対決だから、煽りくらい派手にしないと誰も注目しないと思うの」
「そんなことはないです! 楽しみです!」
「ってゆールーネのフォローが入ったとこまで含めりゃ、何とか記事になるかなあ?」
アハハと笑い合う。
片眼鏡のおっちゃんが大事そうに抱えている包み。
おそらく物理攻撃にも堪えられる大杖だろう。
過去ペペさんの杖を作ってきた片眼鏡の得意とするところだ。
モプシュさんはどんな杖で勝負するつもりだろうな?
「モプシュさんとナバルさんは同門で、若い頃はともに帝都で技を競い合っていたんだって。後にナバルさんはドーラに魅せられ、渡海した」
「ナバルさんはドーラの何に魅せられたのですか?」
「魔物だな。特にドラゴンにだ。記者諸君も『輝かしき勇者の冒険』は読んだことがあるだろう?」
「読みました! そりゃあ子供の頃は夢中になって」
「素敵に心躍る本だ」
「勇者がピンチでやられそうになるところはハラハラしますよね!」
あれえ?
ウ殿下やルーネまでノリノリじゃねーか。
あんなドーラに悪影響のある本がウケてるのは実に不愉快だな。
「実際に美少女精霊使いがドラゴンを倒す様子を見てしまうと、『輝かしき勇者の冒険』の描写がいかに拙いものかと思ってしまうがな」
「うむ、正直ガッカリした」
「ウルピウス様、ガッカリしたのは何故です?」
「何と言うか……あっさりし過ぎていて、盛り上がりに欠けるのだな。ドラゴンとはもう少し強い存在であって欲しかったというか」
どんな贅沢だ。
あたしは苦労なんかしたくないわ。
「殿下、それはドラゴンの数が少なかったからですぞ。五体並んだドラゴンを一振りでばさーっと倒す勇姿は、まことに輝いておったのです! 今でも目を閉じると、かのシーンが思い浮かびます!」
「想像できるぞ。素晴らしいな」
「ズルいです! 私もユーラシアさんがドラゴンを倒すところを見てみたいです!」
「お父ちゃん閣下のお許しが出ないからダメだぞ?」
ウ殿下が不思議そうに言う。
「何故許しが出ないのだ?」
「危ないと思われてるからだと思う」
「危なくはないであろう? ユーラシアの魔物退治は安全に配慮していて、完成されていると感じたが」
「うーん、危なくはないし、魔物の多いドーラではむしろレベル低い方が危険だと思うけど。まあいろんな考え方があるからね」
お父ちゃん閣下はあたしの魔物狩りを見たことないしな。
ルーネはドーラ人じゃないということもある。
「魔物退治はともかく、あたしがもっとルーネを遊んでやらないといけないみたいな話を聞いたんだ。主席執政官閣下何か言ってる?」
ガルちゃんの話した内容からするとだが。
ウ殿下が頷きながら言う。
「おお、施政館から呼び出しがかかっていたぞ? 今日午前中に来てくれと」
「やっぱそーかー。ルーネと遊ぶのは構わんのだけど、無茶させんなって言われると、どの程度までか基準がよくわかんないんだよなー」
「いや、知らせを持ってきたのは文官だ。政府としての正式な要請だぞ? ルーネが関係しているとは限らぬ」
「えっ、どゆこと?」
ルーネ関連の文句じゃないのか?
私用で呼びつけるのも何だから、他に用があるように見せかけてるだけではなくて?
腕を組むウ殿下。
「わからんが、政治関係のことではないのか? ルーネロッテは連れてきてもいいという話だったが」
「政治関係? ……ルーネ『は』連れていってもいいのか。イコール連れてこいってことだな? とすると……」
あたしは帝国の政治関係にはほとんど関わっていない。
あたしが呼ばれるとすると、またどこかで魔物が現れたかそれとも外国関係か。
ルーネを同行させてもいいなら、次期皇帝に関することじゃないだろうし、そもそも施政館で話す内容ではない。
いや、わざわざルーネを連れてこいってことは……。
「……これは新聞記者さん達連れてっちゃダメなやつだな。ごめんね」
「いえいえ、お気になさらず」
「何かわかることはありますか?」
「切羽詰まった事態じゃないけど、対応を間違うと重大事になり得る。おそらく外国が関係してるってくらいだな」
「そこまでわかりますか?」
「わかるねえ」
魔物だったら迅速な対応が必要なはずだ。
とにかくすぐ来いって言うはずだし。
あたしが転移転送で飛べるどこかが関係しているから呼ばれるんじゃないかな。
「ま、とにかく魔道研究所行こうか」
「「「「はい!」」」」




