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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1491話:重い腰を上げる

 ――――――――――二四〇日目。


「今日ユー様は、魔道研究所へ行ってくるんですよね?」


 朝食後の団らんだ。

 頭に血と栄養を巡らせてしゃっきりさせるひと時。


「うん。ナバルさんを連れてルーネと合流して」


 今日はナバルさんとモプシュさんの杖職人対決だ。

 ルーネに合う魔道杖を二人が作り、ルーネの気に入った方が勝ちという勝負になる。

 ドーラと帝国の杖職人がどういった解釈の違いを見せるか、楽しみではあるが……。


「対決が地味。しかもおっさん同士だし」

「オッサンドーシは関係ないね」

「ええ? おっさんズガチの勝負はエンターテインメントになり得るかなあ?」


 自分で煽っておきながら失敗したかと思っているのだ。

 何せ演者に花がないから。

 内容で勝負できるほど、杖対決って盛り上がるのか?

 

「魔道研究所のあとは施政館でやすかい?」

「アトムもそう思う? 実はあたしもなんだよ」


 ルーネの件で主席執政官閣下に不満があると、ガルちゃんから教えてもらったのが一昨日。

 あたしが今日帝都に行くことは伝えてあるから、施政館に呼び出しを食らうのではなかろうか?


「ボスのカンは当たるね」

「やだなー。昨日なんか憂鬱で一〇時間しか寝られなかったわ」

「いつもと変わりませんよね?」


 アハハと笑い合う。

 いかなるものであっても夢見る乙女の睡眠時間を邪魔できないのだ。


「ん?」


 赤プレートが振動する。

 ヴィルから連絡かな?


「ヴィルおっはよー。どうかした?」

『御主人、おはようぬ! フリードリヒ公爵が御主人に用があるようだぬ』

「フリードリヒさんが?」


 ヴィルは今でもプリンスとパウリーネさんとの間の手紙を仲介している。

 そこでフリードリヒさんに呼び止められたのか。

 何だろ?


「代わってくれる?」

『はいだぬ!』

『あーあーテステス。本日は晴天なり。雨降ってるけど晴天なり』

「そーゆーのはあたしがやりたかった」


 笑い。

 フリードリヒさんも面白い人だ。

 芸人になればいいのに。

 公爵なんかやらせとくのはもったいない。


「プリンスとパウリーネさんの結婚近いの? 一昨日、帝都市民に披露するセレモニーどうしようって、プリンスに聞かれたけど?」

『まさにその件なんだ。詳しいことは聞いてるかい?』

「何も。まだ先の話なんでしょ?」

『いや、式と披露は来月の半ばの予定だ』

「えっ?」


 メッチャ早いな。

 まさかプリンスの次席執政官復職より前になるなんて思わなかったぞ?

 次期皇帝を狙うプリンスルキウスの結婚式典なんてアピールのために盛大にやりたいだろうから、準備に時間かかるんじゃなかったの?


『一番時間がかかるのはドレスの仕立てなんだが、目処がついたからね』

「なるほど?」

『パウリーネをお姫様抱っこして皇宮まで行進するというアイデアを、ユーラシア君が出してくれたと聞いた。助かるよ。楽団は元々手配していたんだが、馬車の用意はデコレーションに時間がかかるんでね。パウリーネもユーラシア君の案を大層気に入っているんで、そのまま採用させてもらうよ』

「はあ」


 どーなってんだ?

 肝心なことを何も話そうとしないじゃないか。

 フリードリヒさんがプリンスルキウスとパウリーネさんの結婚を急ぐ理由。

 この何でもないやり取りであたしに伝えたいことを暗に示そうとする理由。

 ……考えられることは一つしかないなあ。


「フリードリヒさん、焦ってるね」

『ああ。君なら事情も見当がつくだろう?』

「まあ」


 おそらくフリードリヒさんは、皇帝崩御が近いという確実な情報を手に入れたのだ。

 そーいやうっかり公爵も、今後陛下の意識が明瞭になることはないだろうって言ってた。

 陛下が亡くなり皇帝が決まってから結婚式をしても意味がない。

 皇帝崩御までにプリンスの存在感とアーベントロート公爵家がバックにいることを印象付けておけということなんだろう。

 これは同時に次期皇帝争いにおいて、フリードリヒさんが今までの曖昧な立場から完全にプリンスサイドに立つことを意味する。


『何か感想はあるかい?』

「ようやくフリードリヒさんが決断したかーって感じだよ。まったく尻が重いんだから。身体がデカいせいかな?」

『ハハハ。僕は臆病なのかもしれないね』

「方針を決めた根拠は何なの? ソロモコからラグランドの流れで、今の政権じゃ不安になった?」

『出来事から根拠を探せというならばね。一番はユーラシア君がルキウス様に乗っているせいだ』

「え? あたしのせいかよ。最近影響力大きいなあ」

『勝利の女神に逆らっちゃいけない』

「フリードリヒさんはわかってるなあ」


 アハハと笑い合う。

 確認しておくべきことは……。


「プリンスルキウスはフリードリヒさんの腹の内を知ってるんだよね?」

『ああ、手紙で伝えたよ』


 となるとパラキアスさんがプリンス有利になるよう工作するだろ。

 いや、もうとっくに動いてるだろうな。

 特にあたしができることはないと思われる。

 ラグランド人スパイ網でプリンスの評判上げてもらうくらいか。


 でもこれは次席執政官就任以降の方が有効だ。

 その時にはあたしも帝国の役職つきになってるから、現役の施政館の役人が主席執政官に忠実じゃない動きをするのも、あたし自身の信頼性を下げるなあ。

 立ち回りが案外難しいぞ?


『僕とパウリーネは明日、帝都に向けて出発する予定だ』

「しばらく帝都に滞在するってことだね?」

『おそらくはね。帝都到着は六日後以降だが』

「りょーかいでーす。帝都の屋敷に着いたら遊びに行くね」

『ん? 何か用があったかい?』


 直接会わなければいけない用があるか、という意味だろう。

 今あたしが公爵邸に出入りすることは、主席執政官閣下を刺激しかねないから。


「ライナー君いるじゃん? ツムシュテーク伯爵家の。騎士としては優秀かもしれないけど、伯爵家の後継ぎとしてどうなんだって、師匠のボクデンさんが心配してるの」

『ほう、ボクデン殿が』

「元騎士で立派に領主やってるフリードリヒさんに相談すりゃいいじゃんって言ったった。えらそーなこと言ってやってよ」

『ハハハ、いつでも来てくれよ』

「ありがとう。ライナー君が休みの日に行くと思う」


 さて、用はお終いか。


「フリードリヒさん、じゃねー」

『ああ、またね』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね。あとで呼ぶよ」

『わかったぬ!』

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