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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1487話:固有能力『晴眼』とは

 フイィィーンシュパパパッ。

 魔境から帰宅後、エメリッヒさんとヴィルを連れて塔の村にやって来た。

 さて、真昼の灯台のような頭部はどこだ?


「あそこだぬ!」

「おーい、じっちゃーん!」

「こんにちはぬ!」

「何じゃ、毎度毎度騒々しい……そちらが元宮廷魔道士のエメリッヒ殿か?」

「うん。顔合わせに連れてきた」

「ど、どうも」


 デス爺が、もうレベル上げしたのかって目で見てくる。

 まあね。

 時間あったし、レベル上げした方が何かと捗るから。

 宮廷魔道士って戦闘訓練あるらしいのに、エメリッヒさんったらレベル一か二だったわ。

 何がどこで役に立つかわからないから、経験になることは一生懸命やっとくべきだと思うよ。


 エメリッヒさんに説明する。


「ここはドーラのノーマル人居住域では最西端の塔の村だよ。村長のデス爺は転移術のオーソリティなんだ」

「転移術?」


 驚くエメリッヒさん。


「本土で転移術は禁断の術式って言われてるんだ。過去実験中に何人も行方不明になったと聞いている」

「アレクも似たようなこと言ってたな。やっぱ事故が危ないから、アレクにも転移術を教えないんだ?」

「無論じゃ」


 実験中どこに飛ばされるかわかんないんじゃ、確かに研究なんか進みようがないわなあ。

 しかし?


「じっちゃんが転移術を研究できるのは何でなん?」

「固有能力のおかげじゃな」

「じっちゃんの固有能力って何?」


 サイナスさんが言うには、デス爺は転移先が見えるとかいう話だった。

 転移先が見えるのが本当なら、危険は回避できるわな。


「『晴眼』じゃ」

「『晴眼』って目がいいだけじゃなくて、転移先まで見えるんだ?」

「レベルが上がればな」

「マジか」


 『晴眼』みたいな固有能力でも、レベルが上がると育つんだなあ。

 じゃあ『晴眼』持ちを仲間に引き入れれば、デス爺から転移術の継承はできる?


「ワシも『晴眼』の真の効果を知ったのは、転移術の研究を始めてからじゃがな」

「じっちゃん、アレクとエメリッヒさんに転移術教えてあげてよ」

「じゃから危ないというのに」

「緑の民の輸送隊員に、レベル三〇越えの『晴眼』持ちがいるんだ。協力してもらえば安全に転移術を研究できる!」


 緑の民ペーターは目がいいだけの自分の能力『晴眼』を残念がっていたけど、ここへ来てドーラ発展のキーになる固有能力に格上げだぞ?

 喜ぶだろうなあ。

 

「……ふむ、レベル三〇越えか。何が幸いするかわからんの」


 確かに。

 緑の民が交易に参加してくれたのはドーラ独立後だ。

 ペーターをレベル上げしたのも、輸送の安全と魔物と戦える実力のためだったけど。


「今度その『晴眼』持ちを連れてくるがよい」

「うん。アレクに言っとくね。アレクより年下の子だよ」


 ハハッ、目のしわが持ち上がってるぞ?

 輸送隊では、アレクより年下の子も働かせてるんだよ。

 今のカラーズの方針なの。


 デス爺がおもむろに言う。


「差し支えなければ、エメリッヒ殿が何故にドーラへ来たのか、伺ってもよろしいですかな?」

「差し支えあっても教えて。何で貴族が零落れたか、メッチャ興味あるわ」

「白状するんだぬ!」


 笑い。

 ヴィル、いい仕事だったね。

 よしよし。


「よくある話だぜ? オレはギレスベルガー子爵家の長男ではあったが、母は産褥期に死んじまったんだ。で、継母が来るだろ?」

「おおう」


 ドロドロした話だったわ。


「継母の子である弟が爵位を継ぐことは規定路線だった。弟の貴族としての教育が始まるとすぐに、オレは社交界デビューすることもなく、魔道研究所に放り込まれた」

「社交界デビュー前に宮廷魔道士になる貴族って稀なんだ?」

「異例だな。少なくともオレは聞いたことがない」


 だからエメリッヒさんは貴族でありながら魔道研究所住みだったのか。


「一方でオレは、実家に全く期待されていないというわけでもなかったんだ。父が結構な家からの縁談を持ってきたりもした」

「ふむ、どうしてですかな?」

「オレが父の若い頃によく似てたってこともあるだろう。またギレスベルガー家領であるテルミッツには、魔物が出現するということもある。オレが宮廷魔道士であることが誇らしく、魔物をどうにかする可能性も見ていたんだろうよ」

「宮廷魔道士ってステータス高いんだ?」

「そりゃまあな」


 近衛兵より給料高いって言ってたっけ。

 貴族でかつ魔法系の固有能力持ちともなると特別視されるのかもなあ。

 しかし疑問は残る。

 何でスキルの一つも習得しないほど訓練に身を入れなかったんだとか、高い社会的地位を捨ててまで宮廷魔道士からドロップアウトしちゃったのはどうしてかとか。


「宮廷魔道士辞めちゃったのは、やっぱ自分の研究に予算出してくんないから?」

「一番大きい理由だな。さらに言うとオレは属性魔法使いではなく、また貴族でも平民でもなかった。常に疎外感を感じたってこともある。帝国には居場所がねえ」

「意外とデリケートだなあ。アウトローな見かけからは想像もつかないことだった」

「何だとお!」


 アハハと笑い合う。


「しかし何でオレの身の上なんか知りたがるんだ?」

「それは……」

「ドーラで成功者になったら本を書いて欲しいんだよね」

「本?」

「ホームレスからの大逆転物語は大衆ウケすると思わない?」

「ハハハ、面白いかもな」


 誤魔化したった。

 デス爺の懸念はわかってる。

 エメリッヒさんに帰国するつもりがあるなら、転移術のノウハウなんか渡せないだろうから。


「ババドーン元男爵の娘のフィフィリアって知ってる? 帝国にいられなくなってドーラに渡ってきたんだ。今は逞しくも、この塔の村で冒険者やってるの」

「ええ? フィフィリア嬢ってあれだろ? 高慢でいかにも帝国貴族らしいって噂の」

「えらい高飛車だったね。ちょっとドーラの山ザル色に染めたったら、すげえ馴染んでるの」

「考えられねえ……」


 皆そう言う。


「フィフィの本が今度出るんだ。世界的な大ベストセラーになる予定」

「本当かよ? あんたの言うことはどこまで本気なんだかわからねえ」


 全部本気だとゆーのに。

 何ヶ月かすればわかることだぞ?

 デス爺が言う。


「ユーラシアよ。転移の玉の設計書じゃ」

「もうできてるの? ありがとう!」


 これならすぐドワーフに仕事出せるな。


「じっちゃんまたねー」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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