第1486話:流れるようにいつものやつ
フイィィーンシュパパパッ。
「オニオンさん、こんにちはー」
「こんにちはぬ!」
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん」
魔境にやって来た。
エメリッヒさんがキョロキョロしてるけど、まあやることは一緒。
「元宮廷魔道士の移民エメリッヒさんだよ。ドーラの発展にどーとかこーとか」
「いつものやつですね?」
「そうそう、いつものやつ。行ってくる!」
「おい、ちょっと待て!」
エメリッヒさんどーした。
今の流れるようなやりとりに不満でも?
よく考えるとやり取りになってなかった気がするな。
オニオンさん最近エスパーだから、詳しい説明しなくても意を酌んでくれるんだよ。
「説明してくれ。サッパリわからねえ」
「魔境ガイドのペコロスさんだよ。あたしはオニオンさんって呼んでるけど。スキルの知識なんかが豊富で、今度ドーラ一の美人と結婚するんだ」
「いやあ。よろしくお願いします」
「そうじゃねえよって、魔境?」
説明ってレベリングの方か。
オニオンさんにも説明を交えておく。
「エメリッヒさんは『魔力操作』の固有能力持ちなんだって」
「ほう、『魔力操作』」
「レアな能力じゃないけど、メッチャ使い勝手がいいよねえ。ちょっとレベルが上がると魔力の流れが見えるようになるんだよ。研究に都合がいいし、レベルが上がって悪いことないから、今から上げまーす」
「レベル上げって早速今からなのかよ! で、魔境とは?」
「えーと、超強い魔物とか住んでるところ」
「知ってるよ! どうして魔境なんだよ!」
時間のムダだから、とっとと出撃したいんだが。
でもわけわかってなくておかしな行動取られても困るしな?
「レベルを上げるために魔物を倒すってのは理解してるよね?」
「ああ」
「当然経験値の高い魔物を相手にすれば、レベルアップが早いじゃん?」
「だから魔境か。三〇分あればレベル二〇ってのは、冗談じゃねえんだな?」
「どんな魔物が出るかにもよるけど、ふつーに可能だと思う」
「呆れたもんだぜ」
オニオンさんが朗らかに笑う。
結婚に向けて順調らしいな。
新居の大工さんの手配できたのかな?
「ユーラシアさんならば問題ありませんので。一応、魔物に遭遇したら即防御とだけだけ心がけてください」
「わっちもガードするぬよ?」
「そ、そうかい? 魔境ってドラゴンもいるんだろう?」
「帝国人はドラゴン好きだな。いるけど、今日はドラゴン相手にする気はないよ」
アトムによると、『魔力操作』持ちはレベル二〇くらいあれば魔力の流れが見えるようになるってことだったから。
目標レベルはその辺だ。
一体デカダンス倒せば大体よさそう。
「『逆鱗』は手に入らねえか?」
「あっ、研究に必要? じゃあドラゴンも狩ってこようか。何枚いる?」
「えっ? 一枚でいいんだが」
「わかった。じゃあ行こうか」
「行ってくるぬ!」
「行ってらっしゃいませ」
ユーラシア隊及びふよふよいい子、一〇日前までホームレスだった男出撃。
◇
「早速魔物がいるじゃねえか」
「クレイジーパペットは経験値高いんだけどなー。先制で『フレイム』撃ってくるんだよ。エメリッヒさんが死んじゃうからお勧めしない」
「そ、そうか」
手頃な魔物が出ないな。
クレイジーパペットはレベルが一〇越えないとキツいし。
超えてもキツいって?
細けえことはいーんだよ。
「あれは?」
「ワイバーンだね。ようやくちょうどいいやつが出たよ」
いつものように実りある経験からハヤブサ斬り・改×二!
「やたっ! 卵ドロップした! お昼に食べよう。すっごくおいしいの」
「おお、レベルが上がった。『マジックボム』覚えたぜ!」
「リフレッシュ! これで立派な魔法使いだねえ。『魔力操作』の固有能力はいいスキルを習得していくから、冒険者だと恵まれてる方なんだよ」
「魔道研究所では肩身狭かったけどな」
「え? 何で?」
「属性魔法持ちから見ると異端だろ? オレは父にムリヤリ宮廷魔道士にさせられたんだ」
貴族の特権でってことか。
しかし?
「気のせいじゃない? 『魔力操作』の魔力を譲れる特性は有用で面白いけどなあ。エメリッヒさんが肩身狭いと感じるってことは、魔道研究所で属性魔法以外の魔法はあまり研究されてないんだ?」
「魔法やバトルスキルは基礎研究くらいだな。有名どころ以外は知られていないぞ」
「むーん? おかしな魔法やスキルほど要注意なのに」
謎経験値君の自爆もだが、知らない攻撃はおっかないのだ。
魔物が日常的脅威でない帝国では、魔法で攻撃される意識が薄いのかもしれないな。
「出た出た。デカダンスだ」
「さっき避けた魔物に似てるな。いや、デカいな?」
「こいつもクレイジーパペットと同じ、人形系って呼ばれてる魔物の一種だよ。人形系は普通の攻撃が通らない、逃げやすい、強力な魔法を先制で撃ってくるっていう特徴があるけど、デカダンスに限っては図体のせいか鈍重なの。攻撃順遅いし逃げない」
「聞いたことあるな。人形系は確か物理攻撃が効かねえんだろ? どうすんだ?」
「衝波属性、別名防御力無視の攻撃ってのがあってさ」
「ああ、知ってる。物理攻撃だが理論上耐性が存在しない、防御力も意味を持たないってやつだな?」
「うん。衝波属性の武器やスキルは比較的レアなんだよね。デカダンスを倒せれば一人前の冒険者って言っていいと思う」
あたしが思うには、だけど。
実りある経験から通常攻撃っと。
「おおおおお? やたらとレベル上がったぞ?」
「もうレベル二〇くらいになってると思うけど、どうかな? 魔力の流れわかる?」
自分の手やあたしの顔を見るエメリッヒさん。
「……わかる。新鮮な感覚だ。これが魔力の流れか」
「目標達成だな。エメリッヒさんの研究にも有効だろうけど、魔法医にも必須の能力なんだよ。身体の調子の悪いところって、魔力の流れが滞ってるの。そこ狙って回復魔法撃てば、体組織の損傷が原因なら治るんだ」
「ほう? 魔法医は適当に白魔法を撃とうとするから、治るも八卦治らぬも八卦なのか」
「だと思う。どーもその辺の研究がされてないみたいなんだよね。ひっじょーによろしくない」
エメリッヒさんに『ホワイトベーシック』持たせておけば、魔法医以上のことは十分にできるということだ。
『魔力操作』は有能。
「最後にドラゴンを倒して、『逆鱗』毟って帰ろうか」




