第1485話:エメリッヒさんは『魔力操作』持ち
――――――――――二三九日目。
「美少女精霊使いユーラシア参上!」
「参上ぬ!」
今日もいい天気。
朝からヴィルを連れて、灰の民の村サイナスさん家にやって来た。
もうエメリッヒさん来てるやん。
「やあ、ユーラシアおはよう」
「サイナスさんおっはよー。エメリッヒさんも顔色良くなってるじゃん」
「ああ、ドーラはいいところだな」
心なしか顔つきも穏やかになってる気がする。
何だかんだで他所の国に渡って移住するなんて、人生に関わる大事だもんな。
エメリッヒさんも覚悟があったんだろう。
ドーラでのんびりしてくれりゃいいよ。
「その子も精霊なのか?」
「あ、紹介してなかったっけ。ヴィルは悪魔だよ。好感情好きのいい子」
「高位魔族か。なるほど」
「よろしくお願いしますぬ!」
「うちの子以外にも悪魔には何人か知り合いがいるから、興味があるなら会わせるよ」
「おう、そうか」
よしよし、いいだろう。
元宮廷魔導士だけに、悪魔にも多少は興味があるらしい。
「魔道に詳しい人のところへ案内してくれるとか?」
「魔道も専門分野が色々あるから、詳しい人の話聞きたくなることあるじゃん?」
「呪術に詳しい黒フードの男に会ったぞ」
「グロちゃんか。彼もちょっと前まで帝国人だったんだよ」
「らしいな。帝都の事情にも詳しそうだった」
皇妃様呪殺未遂事件の実行犯だったと言わないのかい、って顔をサイナスさんがしている。
でもやめとく。
今日はキャラクターの濃い面々に会わせるつもりじゃん?
朝からお腹一杯になるような話題を放り込むと、胸焼けするんじゃないかと思うんだ。
「数は少ないけど、ドーラにも魔道に詳しい人はいるからさ。一応知り合っといて欲しいの」
「わかった」
「エメリッヒさんの研究に必要で、宮廷魔道士の誰それに会わせろってことだったら教えてね。魔道研究所連れてくよ」
「え? 追ん出てきた身には敷居が高えんだが」
「気にすることないぞ? ドルゴス宮廷魔道士長さんもエメリッヒさんのことは気にしてたからね。元気な姿を見せてやるとホッとするんじゃないかな」
「お? おう」
「知らんけど」
「そこで突き放すんじゃねえよ! 泣けるわ!」
「泣けるぬ!」
アハハ。
転移の玉を起動し、一旦ホームへ。
◇
「こんにちはー」
「こんにちはぬ!」
カトマスのマルーさん家に着いた。
「おや、アンタかい。そちらは?」
「元宮廷魔道士のエメリッヒさん。ドーラのために働いてもらうんだ」
「ど、どうも」
「ドーラへようこそ。しかし殊勝で難儀なことだねい。この子の人使いはやたらと荒いよ」
「ひどいなー」
アハハと笑い合い、ニルエにお土産のお肉と骨を渡す。
ついでにここへ来た理由も説明っと。
「ふうん。しかしアタシゃケイオスワードはちょっと齧っただけだ。魔道に詳しいわけではないよ」
「地中の魔力を取り出して使うのは、マルーのばっちゃんの技術なんだ」
『スライムスキン』と黒妖石を使ってどうのこうの。
「アタシの知ってることは全てこの子の弟分に伝えてあるから、詳しいことはそっちから聞きな。何に応用するかはこの子に聞くといい」
「応用か。エメリッヒさんにもこれあげる。『光る石』スタンド」
「『光る石』スタンド?」
「ちっちゃな黒妖石を集めて固めても魔力を蓄えられるって、ばっちゃんに聞いたんだ。それで身体の魔力を流し込んで『光る石』を置くと……」
「あっ、手に持ってなくても光る? メチャクチャ便利じゃねえか!」
エメリッヒさんも便利だと思う派か。
多数派とも言う。
「……黒妖石の高い魔力親和性は知ってたが、加工できねえから使えねえもんだと思い込んでたぜ。こんな方法があったとは……」
「魔力かまどに使えそうでしょ? でっかい黒妖石でもドワーフなら加工できるんだ。今ドワーフと仲良くしようとしてるとこだから、用があったら教えてね」
「おう、目の前の霧が晴れたようだ」
嬉しそうなエメリッヒさん。
自分だけで悩んでちゃ先へ進むのは難しいのだ。
わかりそうな人に聞き、技術を持ってる人に頼むのは基本だぞ?
「ばっちゃんの本職は鑑定士なんだ」
「ほう、ドーラには多いのか? 帝都に信頼できる鑑定士はほとんどいねえ」
「ドーラでも職業として成立させてるのはばっちゃんくらいじゃないかな? ところでエメリッヒさんは何魔法使いなの? 普通の属性魔法使いじゃないみたいだけど」
「『魔力操作』だねい」
エメリッヒさんが頷く。
宮廷魔道士って言うからには、何かの魔法の固有能力持ちかと思ってたよ。
ふーん、『魔力操作』ってパターンもあるのか。
確かに魔道の研究には有利そうだもんな。
エメリッヒさんが自嘲気味に言う。
「子供の頃に鑑定士に見てもらってな。今から考えりゃ親の見栄だったんだろうが」
「『魔力操作』持ちはレベルが上がると、魔力の流れが見えるようになるんだよ。研究が捗るねえ」
「そうなのかい?」
「うちの精霊の一人が『魔力操作』持ちで、そー言ってたの」
魔法医うんぬんの話をしてたら、『魔力操作』持ちのアトムが教えてくれたのだ。
アトムも早く言えばいいのに。
「アンタも魔力の流れがわかるんだろう?」
「あたしは多分カンでわかるんだと思う」
「カン? 何だそりゃ」
胡散くさそーな目で見られても、本当なんだもん。
「しまったな、魔力の流れが見えるようになるって知ってたら、戦闘訓練も真面目に受けたんだが。今のオレのレベルじゃ話にならねえ」
「へー。宮廷魔道士には戦闘訓練もあるんだ?」
当たり前か。
従軍する人もいるもんな。
「今のレベルなんて大した問題じゃないねい」
「どういうことだ?」
「この子はレベル上げの名人なんだよ」
「うちのパーティーで魔物を倒すでしょ? 同伴者であるエメリッヒさんにも経験値が入ってレベルが上がるの。ドーラは魔物が多いから、レベリングが比較的簡単なんだよ」
「……頼んでいいか? 金はねえが」
「いいよ。おゼゼがないのなんてわかってるし。エメリッヒさんの研究に役立つことは協力するわ」
「すまんな。長期にわたるんだろうが……」
「三〇分あればレベル二〇くらいまでは上げられると思うよ」
「ええ?」
わかってないようだがやることは一緒なのだ。
塔の村の前に魔境行くか。
「ばっちゃん、ニルエ、じゃーねー」
「またおいでよ」
「バイバイぬ!」




