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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1484話:賓客と貧客

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 毎晩恒例のヴィル通信だ。

 お腹が膨れてるからもう眠い。


「アレクとケスと、もう一人黄の民の輸送隊員イーチィを連れて行政府行ってきたんだ。盾の魔法のスキルスクロールの納品で」

『特に問題はなく?』

「あたしがトラブルメーカーだからって、納品くらいで何かあっちゃ困るよ。いや、あたしはトラブルメーカーちゃうわ!」

『君自分で言ってるからな?』


 結構眠いから自分でテンション上げてみた。

 自分で投げて自分で打ち返すスタイルは芸風としてどうだろう?


「エメリッヒさん、ちょっとはドーラに慣れたかな?」


 元貴族で元宮廷魔道士のエメリッヒ・ギレスベルガーさん。

 順調ならドーラに関わることのなかった人だろうけど。


『今日であらかたこっちでは紹介し終わったな。帝国から来た黒の民の呪術師いただろう? 結構話し込んでいたぞ』


「グロちゃんか。グロちゃんも魔道の専門知識あるからね」


 グロちゃんもケイオスワードをかなり理解してる人みたい。

 魔物除けの札の生産・販売という重要なお仕事があるから、スキルスクロール製造の方には引っ張れないけれども。


『デスさんには早めにエメリッヒ氏を引き合わせておきたいが』

「うーん、サイナスさんは早い方がいいと考えてるのか」


 初めて会った時、エメリッヒさん顔色悪かったしな?

 もう少しドーラに慣れてから始動してもらえばいいと考えてたわ。

 でも遊ばせとくとあいつ何やってんだって、他の移民に思われちゃうかもしれないな。

 関係が悪くなると困るから、やることやっといた方がいいか。


 輸送隊任務のあるアレクとの顔合わせは早くとも明日の夕方になる。

 それ以降はスキルスクロールチェックにかかるかもしれないから、明日塔の村に連れてくのがよさそう。

 今日の明日じゃ転移の玉の設計はまだ完成してないだろうけど。


「よし、明日の午前中にドーラの魔道に詳しそうな人のところへエメリッヒさん連れてく」

『具体的に誰のところだい?』

「デス爺の他は、マルーさんとペペさんだな」

『ふむ、明日の朝だな?』

「うん。エメリッヒさんの家は移民のとこにあるんだよね? どの辺?」

『転移石碑の近くにしてもらってる。しかし食事に呼ぶから、朝はオレの小屋にいるぞ』

「そーなんだ? 甘やかしてるなあ」

『賓客だからな』

「貧客だぞ?」


 アハハと笑い合う。

 生活メチャクチャって話をしたから、サイナスさんも気を使ってくれてるんだろうな。

 エメリッヒさんの研究は、将来のドーラを大いに潤すポテンシャルを秘めているからね。

 あたしも大いに期待しているのだ。


『今日ユーラシアはどうしてたんだい?』

「大したことはしてないな。朝塔の村に行ったあと、アルアさんの工房で帝国へ輸出するパワーカードを受け取って。スクロールと一緒に行政府へ納品でしょ? 帝国のガータンへ行って黒妖石の回収、魔境で遊んでイシュトバーンさん家で夕御飯だよ」

『随分動き回ってるように思えるが、大したことないのか。オレから見るとえらく盛りだくさんだよ』

「おセンチ乙女のハートを埋めるにはちょっと物足りないの。メインのイベントがなかったからかな?」

『トラブルがなかったからだろう?』

「違うわ! いや、違わないかも?」


 トラブルが心の隙間を埋めるってどーなんだ?

 あんまり聖女っぽくない気がする。

 逆にあたしらしいって?


「元悪役令嬢フィフィとイシュトバーンさんとで、ノヴォリベツの温泉行くんだ。えーと三日後に」

『変わったメンバーだね?』

「例のフィフィのドーラ西域紀行本あるじゃん? 表紙絵を温泉で描かせろってことになって。もちろんイシュトバーンさんの希望で」


 いや、あたしも温泉行きたいんだけど。


『ああ、なるほど。扇情的な表紙で売る作戦だね?』

「どうなんだろ? 表紙はあんまりえっちにならないみたいなこと、イシュトバーンさんが言ってた」

『ほう、温泉なんだろう?』

「イシュトバーンさん、表紙絵には拘りがあるみたいなんだよね。美人絵画集も表紙はえっちじゃなかったじゃん?」

『画集は表紙モデルの君に遠慮したんじゃないか』

「遠慮なんてするかなあ?」


 イシュトバーンさんがえっちじゃないって言ってても、一般基準だとどうだかわからんしな?

 まあ考えてても仕方ない。

 天才絵師にお任せだ。


「フィフィ本は紙屋のヘリオスさんもやる気になってるんだ」

『内容を気に入ったんだろうな』

「うん。あたしが読んでもイケるって感じたし」


 いや、眠くならない本だったってだけだけど。


「緑の民の新型紙にオーケーが出たんだ。次回の輸送隊で紙が入荷し次第、印刷に入るんじゃないかな?」

『ならば緑の民の村に新型紙の注文が入ったこと、輸送隊が帰ってくる前に言うべきじゃないか?』

「そーだった、忘れてた」

『明日朝オレが伝えておこう。何枚の注文が入ったんだい?』

「とりあえず一〇万枚って言ってた」

『了解だ』


 ある程度のストックはあったみたいだけどな。

 一〇万枚ってのはドーラで出版する分の目安だろう。

 世界で大ヒットするから、どうせ全然足らなくなるのだ。


「ガリアの南東にアンヘルモーセンっていう国があるんだ」

『うん? 唐突だね。跳躍話法か』


 何だ、跳躍話法って。

 格好いいから訂正はしないけれども。


「天崇教っていう、天使崇拝の宗教が盛んな国なんだって。どーも今後関わり合いになりそう。いや、関わるのは天使の方かな?」

『遠い国なのに関係する予兆があるのかい?』

「ないんだけど、カン?」


 予兆じゃなくて予感があるのだ。

 最近天使について耳にすることが多い。

 美少女精霊使いのフラグは回収するためにあるから。


『天使か。黒の民は天使や悪魔に詳しいんじゃなかったか?』

「あ、以前聞いた覚えがあるわ」


 サフランが悪魔や天使と縁が深いみたいなこと言ってた。

 考えてみりゃ天使と悪魔って敵対してるじゃん。

 両方と縁が深いってのも節操がないな?


「最近サフランやピンクマンと会えてないな。いい機会だから話聞いてこよ」

『情報収集に熱心だなあ』

「今日は以上だな。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日はエメリッヒさんを連れて挨拶回りか。

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