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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1479話:本好きの世の中へ

「ユーラシアさん、イシュトバーンさん!」

「密会ですか逢引きですかスキャンダルですか?」

「何だ? こいつら。不審者か?」

「もーケスったら。そんないけずな口きいて。ただの不審者二人組みだよ」

「「ひどいです!」」


 新聞記者ズでした、しめしめ。

 最近来るの早いなあ。

 カラーズの新鋭アレクケスイーチィを新聞記者に会わせてみたいという、イシュトバーンさんの狙い通りの展開になった。

 面白くなるかどうかはともかく、紹介しとくのは悪くない。


「その子達は?」

「カラーズ~レイノス間交易の輸送隊員だよ」

「えっ、子供ですよね?」

「うん。あたしより若くてピチピチ。そんなことないわ! あたしだってピチピチだわ!」

「ユー姉、落ち着いて」


 アハハ、どーしてもエンタメ方向に持っていきたくなってしまう乙女心。

 掴みはオーケーだろうか。


「記者さん達は、カラーズの輸送隊事情は知らなかったかな? 盗賊や魔物の危険があるから全員固有能力持ちでレベル三〇以上なんだ」

「「全員固有能力持ちでレベル三〇以上?」」

「驚いた? 未成年も多いんだよ」


 未成年が多いのは、輸送隊の結成や増員が急だったからという側面がある。

 成人はほぼ仕事持ってるしな。

 今後の増員も未成年が多くなるかもしれないけど、まあいいんじゃないの?

 子供の内から経験積んどくのはいいことだし、どうせすぐ成長して大人になるわ。


「今カラーズでは輸出用のスキルスクロールを作ってるの。この三人はそのスクロールの製造責任者と販売担当、輸送隊隊長の妹だよ」

「ドーラの未来を担う三人じゃないですか」

「ドーラの未来は実に明るいよねえ。いい機会だけど、三人に聞くことない?」

「ええと……」


 あたしには軽口叩くクセに、どーして新聞記者ズは肝心なところで黙るのだ。

 いや、あたしも持ち上げ過ぎたか。

 アレク達も緊張してるみたいだし。

 ま、いーや。


「今から行政府にスクロールを納品しに行くんだよ。けどその前に、紙屋のヘリオスさんのところに寄るの」

「昨日のフィフィリアさんの本の話ですね?」

「うん。紀行文とは名ばかりの完全なエンタメ本だから、チラッと見せてもらえれば記事にできるよ」

「「いいですね!」」

「本を安く作るための工夫もあるんだ。安くて本向けの紙がカラーズ緑の民の村で開発されてさ。その紙もヘリオスさんに渡してあるから、感想を聞きたいんだよね」


 イシュトバーンさん、何?


「おい、精霊使い。悪役令嬢の表紙絵はいつ描かせてくれるんだ?」

「ごめん、言うの忘れてた。三日後どうかな?」

「三日後だな?」

「イシュトバーンさんのリクエスト通り、ノヴォリベツの温泉だよ」

「ハハッ、楽しみにしてるぜ」

「じゃ、朝迎えに行くよ。表紙絵はもちろん新聞に載せてもいいからね」


 ハハッ、新聞記者ズ大喜び。

 ヘリオスさんの紙屋に着いた。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「バーナードさん、どうも」

「これは皆さん、お揃いで。事務室へどうぞ」


 奥へ通される。


「こんにちはー。ヘリオスさん」

「こんにちはぬ!」

「おっと、翁もいらしておりましたか。これは失礼を」

「いや、いいんだぜ」

「紙と原稿、具合はどうかな?」


 特に紙の質の方は心配だ。

 新開発の安い紙が使えるか否かで、本の小売価格が随分違っちゃいそうだから。

 満足げな笑いを浮かべるヘリオスさん。


「何の問題もないですな。紙を追加注文したいのですが」

「やたっ! 輸送隊の子連れてきてるから、商売の方はよろしく」


 ふむふむ。

 とりあえず一〇万枚か。

 輸送費込みの価格がどうこう。


「イシュトバーンさんの表紙絵は三日後に描いてくる予定だよ。原画ができたら持ってくるね」

「お願いします」

「それからプリンスルキウスに推薦文か後書きを書いてもらうこと承知させた」

「本当ですか? となると帝国本土での売り上げは……」

「バカ売れしちゃう。帝国の商人さん来た時に読ませたいし、プリンスにも読んでもらわないといけないから、試し刷りの原稿でもできたら何部かもらえる?」


 腕を組むヘリオスさん。

 ん? ここ考えるとこかな?


「……いや、時間をロスしたくない。一〇〇〇部少々は製本してしまいます」

「とゆーことは?」

「完成本をルキウス大使に献本いたしましょう。それで推薦文を書いていただき、新聞記事として載せることができるなら最高ですが」

「りょーかいでーす。帝都での宣伝は任せて」


 なるほど、推薦文を新聞に載せるということならば、本の後書きよりも紙を少なくできる。

 プリンスの推薦文が効果を発揮するのは帝国本土でだから、ドーラで発売したあとでも構わないということか。

 ニヤッと笑うイシュトバーンさん。


「やるじゃねえか、ヘリオス」

「翁に褒めていただけるのは嬉しい限りですな」


 じゃあ思ったよりも随分早く発売されそうだぞ?

 次席執政官復職前に話題にできるならば、プリンスにも追い風になるかな?

 ヘリオスさんが笑う。


「今、書籍出版の予定が他にないのですよ。全力で、かつ可及的速やかに『フィフィのドーラ西域紀行珍道中』の製作・販売に取りかかります」

「ヘリオスさん。著者フィフィにドーラでの小売価格の一〇%、絵のイシュトバーンさんに三%渡すとすると、小売価格いくらになるかな?」

「一二〇ゴールドでいかがでしょう?」

「うん、十分」


 いずれはもっと安い本を大量に出したい。

 しかしそのためには紙の価格も安くしなくちゃならないし、識字率も上げて読者も多くしなければならない。

 まだまだ先は長いなー。

 しかし画集とともに廉価本普及の口火を切る試みだ。

 一歩前に進んだと、満足することにしよう。


 イシュトバーンさんが言う。


「ヘリオスよ。今料理人にスイーツのレシピ集をまとめさせてるんだ。こいつもいずれ頼むぜ」

「今秋に行われる食フェスの事実上の教科書になるんだ。『サバランの裏レシピ』を簡易化したものっていう煽りで、当然こっちも輸出予定だからよろしくね」

「ハハハ、急に忙しくなりましたな」


 でもヘリオスさん嬉しそう。

 基本的に本好きなんだろうな。

 新聞記者ズも嬉しそうだぞ?

 あんた達も企画出してよ。

 今後どんどん新しい本を出版したいんだからさ。


「じゃ、よろしくお願いしまーす」

「お任せくだされ」


 ヘリオスさんの店を後にし、行政府へ。

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