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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1478話:何故かイシュトバーンさんの家に

 あと言っておかなきゃならんことはと。


「イシュトバーンさんがフィフィの本の表紙絵を描くから、温泉行こうって言ってたぞ?」

「温泉? ノヴォリベツの自由開拓民集落でということかしら?」

「うん」


 ドーラに有名な温泉地はノヴォリベツにしかないみたいだから。


「表紙をセクシーにして、読者を惹きつけるという意味ですの?」

「いや、表紙絵はえっちにならないみたいなこと言ってたけど」


 イシュトバーンさんの謎絵だからな?

 ちょっとどうなるかわからん。

 単にあたし達と温泉に行っていい気分になりたいだけじゃないかと思う。


「ノヴォリベツいいとこなんでしょ? あたし温泉って行ったことないんだよね」

「私も温泉は初めてでしたわ。鄙びた趣きのある観光地でしたわよ」

「おおう、今はド田舎のって言っていい場面なのに、フィフィったら『鄙びた』なんて奥ゆかしい言葉を覚えてるぞ?」


 フィフィもすっかり山ザル色に染まってしまった。

 朱に交わって赤くなる方じゃなくて、赤くする方にシフトしつつある。


「あたしもノヴォリベツ行きたいんだ」

「では、貴方も表紙絵を描く時に来るということですのね?」

「もちろんだよ。あたしがいないところで愉快なイベントを進めようとするのは許さんぞ」


 前は偽装船襲撃イベントと被って、温泉の方には参加できなかったからなー。


「いつがいい? 印刷製本を考えると、早い方がいいんだよね」

「私はいつでもよろしいですわよ」

「三日後予定しといてくれる? 今くらいの時間に迎えに来るよ」

「わかりましたわ」


 予定してた用は終わった。


「じっちゃんから見て、フィフィの働きぶりはどうなの?」

「冒険者のか? 模範的じゃな。フィフィリア嬢ほど規律と節度のある冒険者活動をしている者も珍しいのではないか」

「元悪役令嬢とは思えないくらい几帳面だよねえ」

「悪役令嬢ではないのですわっ!」

「元だぬ!」


 アハハと笑い合う。


「困ってることない?」

「特に感じないですわ。マテウス、どうかしら?」

「冒険者活動については、今のところ問題ありません。帝国本土ではどうでしょうか? その、お嬢様の評判とか……」


 執事の心配のポイントはさすが。


「幸いと言っちゃなんだけど、ガレリウス第一皇子の死とかヤマタノオロチの出現、ソロモコ遠征、ラグランド蜂起と大きな事件が続いたじゃん? フィフィの噂は一度も聞いたことなかったよ」

「そうでしたか。ありがとうございます」


 ホッとする執事。

 父ちゃんのやらかし元男爵はともかく、フィフィのことなんか忘れ去られてると思う。

 

「本が売れたら帝都でサイン会したいね」

「サイン会?」

「買ってくれた本にフィフィ先生が直接署名するの。特別感があるでしょ?」

「そうねっ!」


 ハハッ、大乗り気だ。

 フィフィは心臓強いなあ。

 貶されたり批判されたりすることは毛頭考えてないらしい。

 大変結構です。


「ボチボチでいいから、フィフィシリーズ第二弾も進めといてよ。初めての冒険者ものがいい。サイン会の時に紹介すると、次回作も売れちゃうぞ?」

「そうねっ!」

「実にノリがいいなあ」


 ヘリオスさんに紙の方を確認しておかないとな。


「じゃ、あたしは帰る。健闘を祈る」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはーって、あれ?」

「ユー姉?」「姐さん?」「姉様?」「御主人?」

「ヴィルの新しい芸かな? 面白かったぞ」


 アルアさんの工房に寄ってさらにイシュトバーンさん家に来たら、アレクケスイーチィのトリオがいる。

 何故に?

 連れてきたヴィルまで疑問形でノってきたわ。

 ぎゅっとしたろ。


 イシュトバーンさんが言う。


「画集の金を持ってきてくれたんだぜ」

「輸送隊が担当してくれてるのか。道理で最近あたしんとこに代金に関して言ってこないと思った」


 直接届けてくれてたんだな。

 イシュトバーンさんが言う。


「イーチィはなかなかいいじゃねえか。将来が楽しみだぜ」

「ありがとうございます!」

「聞いた? イーチィは輸送隊眼帯隊長の妹なんだよ」

「ええ? 意外だな。全然似てねえじゃねえか」


 本気で不思議がってるイシュトバーンさんがおかしい。

 いや、黄の民は男女のきょうだいは似てない気がする。

 インウェンとハオランも似てない。


「イーチィは眼帯君のこと兄様って呼ぶじゃん? あたしのことは姉様って言うから、同列は何となく納得いかない気持ちになるの」

「ハハハ、何だそりゃ?」


 何となくだよ何となく。

 モヤモヤする乙女心を察しろ。

 アレクが言う。


「ユー姉、頼まれてた盾の魔法のスクロールの販促用サンプル三本だよ」

「ありがとう。三本分九〇〇〇ゴールドだね。払っとく。ヴィル、これ覚えてくれる?」

「わかったぬ!」


 ヴィルに『ファストシールド』のスキルスクロールを一本渡す。

 開封すると魔力が立ち上り、習得完了となる。


「よしよし、これで安心だね」

「姐さん、ヴィルに覚えさせるのか?」


 ケスよ、不思議そうだね?


「スキルの効果はやってみせるのが一番だから、誰かに習得させとこうとは思ってたんだ。最近はあたしとヴィルが一緒に行動することが多いからね」

「ふうん、そうなのか」


 イシュトバーンさんがえっちな目で見てくる。

 ヴィルが危ないからだろって目だ。

 まあ当たってる。

 何だかんだでヴィルは悪魔だから、今後誤解を受けて理不尽な攻撃を受けることがあるかもしれない。

 特に最近あたしの行動範囲自体が広がってるということもある。

 もっともヴィルのレベルは高いから、さほど心配してるわけじゃないが。


「さて、行こうか」

「「「はい!」」」「はいだぬ!」

「行政府だな? オレも連れてけ」

「いいけど、行政府の前にヘリオスさんとこ寄りたいんだよ。構わないかな? 新しい紙の具合と、フィフィの原稿の良し悪しが知りたいんだよね」


 直しがあるなら早めに持っていかないといけないしな。

 あるいは店頭で新しい紙の注文をもらえるかもしれない。


「ちょっと寄るだけだろ? 早く行こうぜ」

「あれ? イシュトバーンさん、随分と気が逸ってるようだね?」

「わかるだろ?」

「まあ」


 どうやらアレクケスイーチィの三人に新聞記者ズの洗礼を浴びせたいらしい。

 あたしも興味ないことはないけど、期待するほど面白くなるかなあ?

 何はともあれしゅっぱーつ。

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