第1477話:転移の玉の設計
フイィィーンシュパパパッ。
アレクに連絡を取ったら、行政府到着は一〇時過ぎになるようだ。
時間があるので塔の村へやって来た。
まあデス爺はすぐに見つかるのだが。
朝日に照らされる頭を発見。
「おーい、じっちゃーん!」
「おはようぬ!」
「何じゃ、いつもいつも騒々しい」
デス爺はいつもそう言うけど、大体いつも機嫌がいい。
何故ならあたしは可愛いから。
「聞いてる? アレクと緑の民が中心になって、帝国に輸出するスキルスクロールの生産してるんだ。もう軌道に乗ってて、今日行政府に納品してくるの」
「ほう、今日納品か。四桁規模の生産と聞いたが」
デス爺はあらかた話を聞いてるようだな。
「結構なもんでしょ? スキルスクロール作るの大変じゃん?」
「何が面倒って、スクロール用の紙を作ることじゃな」
「わかるわかる。いずれドーラで生産する汎用スキルの生産は一本化しようと思ってる。じっちゃん含めた指定販売者を決めといて、安く卸すっていうふうにしとくといいと思わない?」
「ふむ、実に楽でいいの」
「でしょ? 今アレクだけがやってるスクロールチェックのための人員も、移民で来たんだ。エメリッヒさんっていう、帝国の元宮廷魔道士。パラキアスさんが見つけてくれたの。近い内に会うはずだからよろしくね」
「うむ」
いずれはアレクとともにデス爺の転移術を習得して欲しいのだ。
高級石けんや魔力かまどの研究も含めて、エメリッヒさんに期待するところは非常に大きい。
「用はそれだけか?」
「じっちゃんに頼みがあって来たんだよ」
「何じゃ?」
「『アトラスの冒険者』が飽魚の月末で廃止と、正式に決まったんだ。これまだ内緒ね。パラキアスさんには伝えてあるけど」
「やはり廃止になったか」
目の周りのしわを深くするデス爺。
「急に『アトラスの冒険者』がなくなるとドーラが混乱するじゃん? 代わりの組織作ろうと思って」
「代わりじゃと?」
「代替組織に所属する冒険者に、ギルドとホームに飛べる転移の玉を持たせるでしょ? で、ギルドに各地へ飛べる転移石碑を置いとけば、かなりのことができるよ。少なくとも治安維持機能は完全に互換できるはず」
「理屈ではそうじゃが……」
「黒妖石は手に入れられるしドワーフ達も協力してくれそうだから、何とかなると思うんだ」
「ふむ、ワシに転移の玉と転移石碑の設計をということじゃな?」
「そゆこと。頼んでいいかな?」
「もちろんじゃ」
「やたっ! ありがとう!」
破顔するデス爺。
「ドワーフの仕事の信頼性を知りたいんだよね。お試しで塔の村とギルドに飛べる転移の玉を作らせて、リリーとレイカに使ってもらおうと思ってるんだ」
「皇女とレイカも新組織のメンバーということじゃな?」
「今の『アトラスの冒険者』は赤字体質なの。構成する冒険者の数が少ないと儲かんないから、とりあえず収支トントンくらいには持っていかないとどーにもならん」
最初はあたしが出資して黒妖石入手とドワーフの加工賃、デス爺への設計料を払うつもりだ。
けど最終的には全部収入から賄えるようにならないとな。
「転移の玉は至急設計しようではないか。ギルドは現在転送先として用いられてるビーコンでいいんじゃな?」
「あっ、じっちゃん知ってるんだ?」
今の転送先をそのまま使えれば、わざわざ新しくビーコンを置かなくていいのだ。
要するにビーコン用の黒妖石が必要なくなる。
デス爺が頷く。
「うむ、興味があって以前見たことがあるでな」
「じゃ、お願いしまーす」
「あら、御機嫌よう。早いのね?」
「おっはよー」
「おはようぬ!」
フィフィのパーティーが現れた!
コマンド?
「もう本日の仕事始めなんだ?」
「そうね。毎日午前中を冒険者活動に当ててるから」
「プリンスルキウスが、フィフィの本の推薦文か後書きかを書いてくれることになったよ」
「「えっ?」」
驚くフィフィと執事。
一方でハテナ顔のデス爺。
「どういうことじゃ?」
「フィフィに本を書いてもらったの。ドーラに来て、西域を歩いてきた時の紀行文。メッチャ面白くなったよ」
「ルキウス皇子殿下と何の関係が?」
「プリンスはフィフィの元婚約者だから。話題が話題を呼んで、帝国ですんごい売れちゃう」
デス爺もフィフィも呆れた顔しとるわ。
商売として成功させるために、最大限の努力をするのは当然だわ。
「ルキウス様に悪いでしょう?」
「悪くないぞ? プリンスもフィフィに引け目を感じてたみたいだからね」
「どういうことですの?」
「父ちゃん男爵は悪かったかもしれないけど、フィフィ自身には悪いとこないじゃん? なのに自分ばっかりパウリーネさんと婚約決まったりして、プリンスもフィフィに申し訳ないと思ってるんだと思う」
「まあ、ルキウス様が気にすべきことではありませんのに」
「プリンスにも得があるからいいんだぞ?」
「得? 何かしら?」
内緒話モード発動。
「皇位継承権一位のセウェルス皇子は精神病で田舎へ引っ込んだ。二位のフロリアヌス皇子は若いってこともあるけど、あんまり皇帝に興味ないみたいなんだ。祖父のメルヒオール辺境侯爵も推してないくらいだし」
「何の関係がありますの?」
「次期皇帝はドミティウス主席執政官とプリンスルキウスに絞られたってことだよ」
場に緊張が走る。
「あたしはプリンスを皇帝にしたいんだ。フィフィの本で話題に上って存在感を示すことは、プリンスにとってプラスになる」
「そ、そうなのね?」
「そーだぞ? プリンスとフィフィ双方がウィンウィンだから、フィフィも気兼ねする必要ないからね。……リリーは陛下死後のことなんてあんまり聞きたくないだろうから、言わないでおいてくれる?」
「わかりましたわ」
デス爺が言う。
「お主の目から見て、ルキウス皇子殿下が皇帝はあり得るのか?」
「植民地だったドーラが独立、ソロモコ遠征も失敗でしょ? 対外政策で主席執政官閣下が評価落としてて、相対的にプリンスの評価が上がってるの。帝都の新聞社の次期皇帝に相応しいのは誰かってアンケートでは、プリンスが一位だったんだよ」
「何と、大したものではないか」
「あくまで新聞購読者層の人気はあるってだけだよ。イコール貴族や有力者の支持があるってことじゃないから、当てになんないけどね」
内緒話モード解除、と。




