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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1476話:天使の国

 ――――――――――二三八日目。


「ふいー、今日もいい天気!」


 今日は凄草株分けの日。

 いつも通り畑番の精霊カカシ、大悪魔バアルと話しながら作業を進める。

 このパターンは定着したっぽい。

 バアルもこうやって話してると割と普通なんだよな。

 機嫌良さそうだし。

 

「よーく嗅ぐと甘い匂いがするんだよね。凄草」

「うむ、微かであるがな」

「ユーちゃんよ。オイラもレベルが上がってパワーアップしたから、魔力供給の上限一杯までは凄草を増やせるんだぜ? どうする?」

「うーん、凄草は朝だけの楽しみにしてるから、今のパターンでいいや。これから夏にかけて、ちょくちょく増やしたい植物を持って帰ると思うんだ。魔境とかから? その時は力を貸してよ」

「わかったぜ」


 カカシは本当によく働いてくれるからありがたい。

 あたしがやってるのは植えつけと収穫くらいだ。

 でもカカシの手が凄草に全部取られても、今後困るんだよな。

 凄草はほぼうちのパーティーのためにしかならない。

 でもカカシにはドーラの発展のための植物も栽培してもらいたいから。


「ジャガイモも育ってきたしなー。あ、イチゴ花咲いてるじゃん」

「花は前から咲いてたぜ」

「知らなかったよ。実がなってりゃすぐ美味いものセンサーが発動したのに」

「吾が主は食い意地が張っているである」

「バアルったら褒めてくれちゃって」


 アハハと笑い合う。

 フリードリヒ公爵にもらった、甘くて大粒のイチゴの品種『パウリーネ』だ。


「収穫時期はよくよく注意しててくれよ? 虫はオイラが駆除するが、鳥は手に負えねえやつもいるんだ」

「鳥も食べに来るんだ? よし、じゃあ焼き鳥にして食べちゃうぞーっていう、念を込めとく」

「どんなだよ!」

「効果がありそうである」


 おいしいイチゴを食べてる鳥はきっとおいしいに違いない。

 でも小鳥だと食いでがないなあ。

 イチゴの方がいいから、小鳥よ、食べに来るんじゃない。


「バアル、ガリアの周りの小国群について知ってること教えてよ」

「吾が主よ。ついに世界征服に乗り出すであるか?」

「違うとゆーのに。いや、でも口先で丸め込んで世界征服したいな?」

「ユーちゃん、話が変わってるぜ?」

「世界情勢は知っときたいわけよ。全部知ろうと思うと頭ぷしゅーってなっちゃうから、当面は関係してきそうなところから」

「ほう、北方の小国群が関係しそうなのであるか?」

「どうもガリアのクエストがまだ続きそうな気配なんだよね。となると周りの国関係はあり得るのかなと思ったんだ」


 バアルが言うには、ガリアの王様は国内を完全に掌握していているが、国外はそうでもないらしい。

 北方の小国群の事情も一様ではないとか。


「小国群にどこまでを含むかにも異論はあろうが、今後吾が主と関わりがありそうなのはガリアと同じギル通貨圏にある国々、特にテテュス内海諸国と呼ばれる九ヶ国である」

「あたしと関わりありそうって、バアルが思うくらいの国々か。よし、乗っかろう。そのテテュス内海諸国について、特に大事だと思うところを教えてくれる?」

「うむ、任せるである」


 ハハッ、尻尾がピクピクしとるわ。

 嬉しそうだな。


「いずれもゼムリヤよりも人口規模は小さいが、ドーラよりは大きいである。また九国の人口を全て足せばガリアを上回るである」

「ふーん、わかりやすい。ゼムリヤって大きいし、ドーラって小さいんだな。その中でガリアと問題起こしそうな国を教えてよ」

「吾の知る限り、サラセニアとアンヘルモーセンは要注意である」

「サラセニアとアンヘルモーセンね」

「どんな国なんだ、そりゃあ?」


 バアルが続ける。


「サラセニアは元々ガリア王家の親戚筋で大公であった。ガリアが爵位を廃止した際に、積年の功が認められ分国したである」

「そーゆー経緯だったら親ガリアになりそうなもんだけど?」

「現在は親ガリアの勢力と、経済的な結びつきの強いアンヘルモーセンを推す勢力とが対立しているである」

「あれ? じゃあガリアにとってはアンヘルモーセンって邪魔?」

「人口や国土面積、軍事力でガリアにかなう国は北方にないであるが、テテュス内海の経済活動においてアンヘルモーセンは比類なきナンバーワンである」

「商業国ってことかい?」

「そうである」


 なるほど、しかし?


「冷静な意見ありがとう。さすが大悪魔だね。ここからは私情を交えていいぞ?」

「え? どういうことだ?」


 カカシが戸惑っている。

 バアルが密かにふつふつと怒りを滾らせているのだ。


「アンヘルモーセンは天崇教の国家なのである!」

「「天崇教?」」

「天使崇拝の宗教である!」

「ははあ、天使を崇めるなんて大悪魔には面白くないと?」

「面白くないどころではないである! 滅べばいいである!」

「どうどう。話を聞こうか」


 天使は基本的に人間に対して無関心で不干渉であるが、やはり活動のためにエネルギーが必要。

 負力の一種である人間の信仰心を欲するのだという。

 天崇教を通して信仰心を集め、代わりに天崇教の信徒に力を貸す、と。


「公平な取り引きに思えるけど?」

「天使と天崇教の取り引きとしては主の言う通りかもしれぬ。であるが高位魔族にとっては別である。寄ってたかって目の敵にされるである!」

「天使と天崇教徒が寄ってたかって? 随分乱暴だね。聖火教はまだ聞く耳持ってるけど、天崇教は天使に入れ込んでるからやたらと攻撃的ってこと?」

「特に天使が攻撃的なのである!」


 天使ってイメージと違うな。

 悪魔は目の敵にされるくらい何とも思わないだろうけど、相手が集団でかつ聖属性魔法持ってたりすると話は違ってくるよなあ。

 差別や虐めはよろしくない。

 あたしの嫌いな考え方だ。

 不公平あるいは不公正な取り引きの原因になりかねない。


「じゃあアンヘルモーセンには一人も悪魔はいないのかい?」

「好き好んであんな国に住むわけないである!」

「バアルの言い分はわかった。どっかで天使捕まえて向こうの言い分も聞こう」

「吾が主よ。よろしく頼むである」


 任せておきなさい。

 どうせあたしのことだから、今後天使との絡みもあるんだろ。


「ところでユーちゃんよ。そろそろ一番茶の季節だぜ? ザバンの様子見てきた方がいいんじゃねえか?」

「おおう、忘れてたわ。ありがとう、カカシ」


 よし、朝御飯食べるか。

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