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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1472話:元宮廷魔道士エメリッヒ

「ここがドーラ唯一の港だよ」

「広々としてますねえ」


 広々として見えるのは船が少ないからだ。

 レイノス港もまあまあの規模があるけど、帝国のタムポート港に比べれば小さい。

 貿易が盛んになれば手狭になってくるんじゃないかな。

 その時は海の女王と交渉して、現在魚人との海産物の取り引きにしか利用していないクジラ港の整備と拡張を考えなきゃいけない。

 未来が楽しみだなあ。


「大きな貨客船が二隻。ちょうど移民達が下船してくるところですか?」

「みたいだねえ」

「しかし一〇〇〇人規模の移民があのクラスの船二隻では、相当窮屈に違いないぜ」

「いや、ドーラ独立後今年の一の月に最初に来た移民は、船一隻で来たんだよ。しかも貨物船だった」


 最初の移民は貨物船に全員が押し込められていた。

 メッチャ劣悪な環境だったろうなあ。

 さて、知った顔は、と。


「こんにちはー」

「やあ、今日は大勢だね」


 プリンスルキウスがニコニコしながら迎えてくれた。

 傍らにクリークさんとマックスさんもいる。

 アドルフの姿が見えないけど、移民の方へ行ってるのかな?


「今回の移民も問題はなさそうだねえ」

「農業経験のない者も大分混じってるという報告だ」

「まーでも覚悟はしてるでしょ」


 今月の移民までは急げば春植えの作物は間に合いそう。

 今後の移民の分と冬季の保存の分、かなり余裕持って作付けするだろうから大丈夫だろ。


「新聞記者諸君だね?」

「そうそう、帝都の新聞記者トリオとレイノスの新聞記者ズ。プリンスを記事にしたいんだって」

「といわれてもラグランド交渉以来、特に記事になりそうなことはないのだが」

「ええ? 紙面が埋まらないんじゃ困る。パウリーネさんとのラブラブ文通の内容でもいいから」

「それこそ勘弁してくれ」


 アハハと笑い合う。

 プリンスとパウリーネさんとの間は、相変わらずヴィルが仲介しているのだ。

 まあプリンスが自ら移民を出迎えてるって事実さえあれば、あとは雑談でも記事になるだろ。

 思いついたようにプリンスが言う。


「予は次席執政官に復帰するのだろう?」

「うん、主席執政官閣下に直接そう聞いた」

「大規模な閣僚人事の変更を伴うんじゃないか? そういう話は出てないかな?」

「あたしは聞いてないな」


 ソロモコとラグランドの件でおそらく政権支持率が落ちてるから、市民の目先を変えなきゃいけないんだな?

 だから人気上昇中のプリンスを閣僚として政権内に戻さなきゃいけないのか。

 閣僚人事の大規模な変更ってことは、目玉はそれだけではない?


 記者トリオが言う。


「ルキウス様が次席執政官に復職されることは、決定ではありませんが既に定まったものという認識です」

「平民女性大臣として注目度の高いアデラ植民地大臣は、外務大臣に横滑りするのではないかと言われていますね」

「ユーラシアさんの名前も挙がっておりますよ。非常勤の施政館臨時顧問に就任するのではないかと」

「えっ?」


 非常勤ならば仕事しろということではなくて、名前を貸せという意味なのだろう。

 あたしの人気を利用したいってことか。

 次期皇帝レースでプリンスルキウス推しのあたしにとって、ドミティウス主席執政官中心の現政権に協力する格好になるのは癪ではある。

 でもあたしの意見を帝国に通せるかもしれないメリットは大きいな。


「君、もし正式に要請が来たら受けるのかい?」

「主席執政官閣下があたしを喜ばせる報酬を用意できるか次第だなー」


 笑い。

 ちょっと考えどころではある。

 記者トリオが言う。


「ユーラシアさんはルキウス様を次期皇帝にしたいと仰ってましたが」

「うん、ぜひ皇帝になってもらいたいね」

「政権に参加するとなると、ドミティウス様の人気取りに加担することにはなりませんか? ルキウス様に不利なのでは?」

「露骨に突っ込んでくるなあ。帝国首脳の政治家達と好き勝手話せるならドーラの利益になりそうじゃん?」


 今んとこ面識あるのはデニス封爵大臣とアデラちゃんだけだ。

 重要な商・工・農・軍のトップと会ったことないし。

 主席執政官閣下も、要するにドーラに都合がいいことを利用してあたしを釣ろうとしているんだろう。


「で、プリンスを次期皇帝にしたいあたしとして、一つ頼みがあるんだけど」

「何だい?」

「フィフィが本出すんだ。紹介文か後書きか書いてくれない?」

「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」

「元婚約者のプリンスが書いてくれると話題性抜群だから」

「か、かもしれないが」

「要求がひどいぜ」

「プリンスが忘れられないように、帝国市民に定期的にネタを提供しなきゃなんないんだもん。絶対にすんごく売れるよ。何ならプリンス紹介文パウリーネさん後書きで仲良しアピールしてもいいから」

「わかった。引き受けよう」

「やたっ! 試し刷りの原稿できたら持ってくるね」


 プリンスはフィフィに妙な引け目があったみたいだからな。

 借りを返しておくくらいの気分でいいんじゃないかな?

 フィフィにも感謝されるよ。


 あ、パラキアスさんが来た。

 一人の男を連れている。


「ユーラシア。彼がエメリッヒ・ギレスベルガー氏だ」

「ありがとう! よく来てくれたね。あたしが美少女精霊使いユーラシアだよ」


 血色の悪い痩せた男がキョロキョロしながら握手を求めてくる。

 かるーく握手。


「エメリッヒだ。あんたヤマタノオロチ退治の有名人だな? 魔道の知識を持つ者を探していると聞いた」

「魔道の知識を持ってる人は貴重でさ。衣食住は保証するから力を貸して」


 新聞記者達とイシュトバーンさんに元宮廷魔道士であることを説明する。

 エメリッヒさんが逡巡しながら言う。


「そりゃ構わねえが……オレは何もできねえ。魔道だって役に立つとは限らねえぞ?」

「ドルゴス宮廷魔道士長が言ってたよ。生活はデタラメだけど魔道に関しては一途な男だって。あたしはあんたの生活には期待してない。頭蓋骨の中身に期待してるんだ」

「頭蓋骨の中身に期待か。気に入ったぜ」


 気に入るポイントが黒の民寄りだな。

 不安要素なのでは?

 イシュトバーンさんが聞いてくる。


「カラーズへ連れていくのか?」

「うん、今から行ってくる。一時間くらいで戻るから、記者さん達は港で取材しててよ」

「「「「「わかりました」」」」」

「じゃねー」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動して帰宅する。

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