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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1470話:宗教活動と経済活動

「どういうつもりだ?」

「どうと言われても。ちょこれえと買って帰るつもりだけど?」

「帰るつもりだぬよ?」


 ユーラシア教会の聖女キャロと別れたあと、騎士ライナー君が聞いてくるのだ。

 師匠のボクデンさんは意味ありげな視線を寄越してくるけれども。


「キャロラインのことだ。聖女グッズ販売なんて、キャロラインのイメージに全く合わないだろう?」

「それ聞きたかったからついて来たのか」


 まーわかってはいた。

 傍から見てるだけじゃ何やってんの? という感じだろうから。

 ボクデンさんは理解してるみたいだけどな。 


「キャロのイメージに全く合わないから推進するんだよ」

「わからない」

「ボクデンさん、どう思う?」


 ライナー君の師匠ボクデンさんは、あたしが聖女グッズ販売に関して話し始めた時、ライナー君が何か言いだそうとするのを止めていた。

 考えがあるんだろう。


「細かいケアでしたな。必ず必要な措置だったかと言われれば、異論はあるのでしょうが。ユーラシア殿の繊細な心遣いに感じ入りましたぞ」

「師匠、どういうことです?」

「ライナー君、自分で考えてみようよ。今日キャロを見てどう思った?」

「前回四日前に見た時より顔色も良く、張り切って奉仕していたな。身体の状態は万全だと感じた」

「うん、キャロはバッチリだったね。他は? 周りを見て感じることはなかった?」


 首をかしげるライナー君。


「周り……施しを求める人はいつもより若干多いと感じた。今日は先日のように事故があったわけじゃないのに。レベルアップした『灯火』の影響だろうか?」

「注意すべきポイントだと思わない? さっきのキャロの状況を見る限り、ちょっと集まる人が増えただけで、『灯火』の固有能力自体の大きな影響はないと思うんだ。でも影響力の増した聖女を利用しようとする輩が現れる危険は増すと思った方がいい」

「キャロラインが巻き込まれ得るということか?」


 こっくり。

 色々考えられるだろ。

 聖女のお墨付きで怪しげな商品を売ること、悪事の片棒を担がされること。

 あるいは政治的な陰謀ってのもある。


「ユーラシア教会の聖女として純粋培養されてるキャロを言いくるめるのなんか、実に簡単だぞ? さっきの聖女グッズのくだり、聞いてたでしょ? 世の中悪いやつなんていくらでもいるわ」

「ユーラシア君みたいにか?」

「あたしを悪い方にカテゴライズすんな。ちゃんとキャロのことを考えてるわ」

「いくら何でも怪しい話に乗ったりはしないと思うが」

「断れない状況ってのがあるじゃん」

「それは?」

「お金もらっちゃってるケース」


 何をするのにもおゼゼは必要だ。

 お布施なり寄付金なりをごそっと受け取ってから頼まれごとされたら、宗教者じゃよう断れんと思うわ。

 でも自分らで商業活動してれば、多少は抵抗力つくんじゃないか?


 ボクデンさんが言う。


「ユーラシア殿だったら、欲と義理に挟まれたケースをどう切り抜けますかな?」

「もらうものはもらって、断る話は断るね」

「ほう。さすがですな」

「そんな不義理が許されるのか?」

「契約じゃなきゃ各々は別個の話だよ。許すも許さんもないでしょ。受けられない条件つき契約なら最初から断るわ」


 あたしは自分が我が儘だってこと自覚してるしな。

 ライナー君唖然としてるけど、記者トリオは嬉しそう。


「ライナー君も人がいいからなー。誤魔化されないように気をつけた方がいいぞ?」

「人がいい、か」

「間抜けと同義語だぞ?」

「君だって人がいいじゃないか」

「あたしの人格は至高にして究極だけれども」


 だから唖然とするなとゆーのに。

 心配になるわ。

 ボクデンさんがライナー君を不安に思う気持ちもわかるわ。


「その件でユーラシア殿に相談したかったのですが」

「もーボクデンさんったら先読みしないでよ」

「何の話だい?」

「ライナー君をズルい男にするにはどうしたらいいかなってことだよ」

「ズルい男って……」

「ズルい男が気に入らないなら悪いやつでもいいけど」


 新聞記者が言う。


「ユーラシアさんの中で、悪いやつとかズルい男というのは褒め言葉なんですか?」

「うん。あたし語録にこういう言葉があるんだ。悪くなければ生きていけない。ズルくなければ生きている資格がない」

「アハハ、何ですか、それ?」


 ボクデンさん頷いとるがな。

 ただの冗談なのに、あたしの名言が刺さったらしい。


「ライナーは素直な弟子です。技術を吸収するスピードは速かったですが」

「技術以外の部分も吸収して欲しかったねえ」

「な、何がだろう?」

「お師匠はライナー君の行く末を心配してるんだよ。伯爵家の世継ぎがこんなんでいいのかってね」

「わしは騎士団の勤務を辞めさせるべきかとも思うておるのです」

「し、師匠!」

「思い切った考えだなあ」


 しかし騎士を辞めるくらいの思い切りが必要な段階であると、ボクデンさんは見ているわけか。

 騎士団で領主に必要な知識が学べるかっていうと難しいから。


「ユーラシア殿はどう思われますかな?」

「……先輩の意見を聞いてみるべきかな。元騎士で立派に領主を務めてる人の」

「ふむ、具体的にはどなたになりますかな?」

「アーベントロート公爵家のフリードリヒさん」

「「「「えっ?」」」」


 ボクデンさんは声こそ出さなかったものの目を丸くしている。

 意外でもないと思うが。


「公爵はなかなか悪いやつだよ。話を聞けば絶対にライナー君のためになると思う。今度会った時にライナー君のこと話しといてあげるよ」

「よ、よろしく頼む」

「あとはそーだな。キャロを嫁にすればいいんじゃないかな?」

「「「「えっ?」」」」


 ボクデンさんは愉快になってきたらしい。

 ヴィルが寄ってったぞ?

 

「キャロラインを?」

「キャロを嫁にするのは乗り越えるべきハードル高くて大変だぞー。平民だし聖女だし。でもリリーよりライナー君には合ってるよ。相性がいいし。最終的に幸せになれると思う」


 考え込むライナー君。

 カリスマはあってもポワーンとしたキャロを嫁にするなら、ライナー君がよっぽどしっかりしなきゃいけない。

 ボンボンはちょっと苦労すべきなのだ。

 飲み込みは早いんだから、人生経験を積めばいい。


「じゃねー」

「バイバイぬ!」


 ライナー君ボクデンさんと別れ『ケーニッヒバウム』へ。

 ちょこれえと買わないと。

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