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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1468話:魔法医という職業

「あたし魔法医ってよく知らないんだよね。あんまり信用されてない職業なんだ?」


 クララを帰したあと、ヴィルを肩車し、新聞記者トリオとともにユーラシア教会へ向かう。

 目的はレベルアップ後の聖女キャロの様子がどうかを確認するためだ。

 キャロは『灯火』というレアな支配系固有能力持ちなので、パワーレベリングしちゃいけないケースだったかと、ちょっと心配している。


「ハッキリ目に見える傷はすぐ治りますよね」

「ハッキリ目に見える傷なんてポーションで治せるわ。帝国でポーションと魔法医の治療とどっちがお高いか知らんけど、魔法医の需要ってそーゆーことじゃないんじゃないの?」

「通常医と魔法医は対立してるイメージがあります」

「何で対立するんだ。おっかしーだろ」

「逆にユーラシアさんはどう思いました?」

「通常医と魔法医のありようについて? 案外難しいのかなと」


 今日のセグさんのぎっくり腰を診ていたお医者さんの態度からして、対立してるってのは当たってそう。


「魔法医の需要は、慢性的な腰や関節の痛みに対してが多いですかねえ」

「魔法医の治療を受けてよくなったという意見も確かにあるんです。感謝している人達も決して少なくはないんですが」

「回復系の白魔法をピンポイントでゼロ距離から放射すれば、表面からわからないかなりの内部損傷まで治癒させることができるはずなんだよ。明らかにここが悪いってわかってりゃ、絶対に確かな効果はある。でも今日のぎっくり腰みたいに、症状がひどいのにポイント外してちゃ全く意味がない」

「ユーラシアさんの話を聞いてて、なるほどと思いますよ」

「魔法医の治療代ってお高いんでしょ?」

「もちろんです」


 新聞記者が顔を顰める。


「通常医にはこの病気にその薬を使う、ああいう症状だからどうするっていう理屈があります。でも魔法医のやってることは当てずっぽうですよね?」

「当てずっぽうか。話聞く限りでは否定できないな」

「治る時は治りますが……正直今日ほど鮮やかな魔法治療を見たのは初めてです」

「実によろしくないな。むーん?」


 どうやら魔法医って考えてたより胡散臭いと思われてる商売らしい。

 さっきの真面目なお医者さんも色眼鏡で見てたみたいだしな。


「ユーラシアさんは魔法医は有用だとお考えで?」

「ちゃんとした治療ができるなら有用に決まってるじゃん。ぎっくり腰が一瞬で治ったの見たでしょ?」

「はい……しかし本物は極めて少ないです」

「クララはレベル九九のヒーラーだから特別だぞ? 精霊は元々最大マジックポイント多いし、『ハイヒール』を軽く連打できる魔法医なんて、そんじょそこらにはいないとは思うけど」

「ユーラシアさんだって患部をズバリ当てるじゃないですか」

「身体の中の魔力の流れのおかしいところはわかるよ。でも病気には手も足も出ないわ。薬の知識もほとんどないし、療養やリハビリについてもわかんない。医学的な知識や理屈は、普通のお医者さんの領分でしょ」


 あたしはレベルが上がったら魔力の流れがカンでわかるようになった。

 でも何かの固有能力持ちならレベルが低くてもわかりそうだな。

 アトムみたいな『魔力操作』持ちとか?


「本来の魔法医って、悪いところがわかってて患部に回復魔法を当てるというものだったんじゃないかな。なのに闇雲に白魔法撃つだけのエセ魔法医が増えて、信頼性が下がっちゃったとか?」

「かもしれませんねえ」

「魔法医はどうあるべきでしょうか?」

「普通のお医者さんと対立してるような現状は間違っとるわ。お医者さんが診断して、その指示の下に『ヒール』撃つような仕組みだったらいいのに。それぞれ得意不得意はあるって」

「ユーラシアさんとクララさんが組んで魔法医やればいいじゃないですか。お二人とも可愛らしいですし、大評判になりますよ」

「あたしとクララの魅力爆発で大評判かー。いかがわしい店みたいで嫌だなあ。回転率が悪くなっちゃいそう」


 アハハと笑い合う。

 あたしが冒険者だからかもしれんけど、回復魔法で料金取るってのはあんまり好きな考え方じゃないなあ。

 サービスしていい気分になってる方がいい。

 どこぞの聖女みたいに、魔法の葉食べてまで『リフレッシュ』かけるのはさすがにあり得んが。


 新聞記者が言う。


「話は全然変わりますが、面白い調査結果が出たんですよ」

「調査結果? 面白いと言われちゃ聞き捨てならないね」

「次期皇帝に相応しいと思うのは誰ですかという、新聞購読者によるアンケートです」

「……まさか記事にはしてないよね?」


 今上帝崩御後のことなんてどえらい不敬な上に、内容が危険。

 結果によっては新聞廃刊になりそうだわ。

 記者トリオが揃って頷く。


「もちろんです」

「単に世論が何を望んでいるかの調査ですから」

「見せてくれるの?」

「極秘資料ですがどうぞ」


 プリンスルキウス三三%、ドミティウス主席執政官閣下三〇%、リリー一二%……。


「微差だけどプリンスがトップなのか。意外だな?」

「これラグランド交渉の結果が入ってないんですよ。水際立った花も実もある手腕でしたから、今だとさらにルキウス様の支持率が高いと思います」

「そーなの?」

「ただし新聞購読者層に限った結果ですよ?」


 新聞を読む層は新しい情報に飢えてる人達か。

 現政権トップのお父ちゃん閣下よりプリンスルキウスの方が、新鮮味があると考えているかもしれない。


「貴族の支持になると話は別なのか」

「字を読めない層ですと、リリー様の支持率が上がると思います」

「リリーの支持率がフロリアヌス殿下より上ってのも、何げに衝撃なんだけど?」

「ハハッ、リリー様は人気ありますからね」

「ユーラシアさん、それでですね……」


 期待の目で見てくる新聞記者トリオ。

 わかってるってば。


「世の注目度の高いプリンスを記事にすると新聞が売れるから、ドーラ行政府に連れてけってことだね?」

「察していただけて助かります。お願いできますか?」

「今日ちょうど帝国本土からの移民がドーラに到着する日なんだ。プリンスも来ると思うから行こうか。移民の方も記事にできるでしょ?」

「ありがとうございます! 助かります!」

「ハッハッハッ、助けたったぞー。さすが聖女」


 笑いながらユーラシア教会にとうちゃーく。

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