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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1460話:昼御飯のべろ

「さてと、戻ろうか」


 もう少し魔物を狩っておきたいところだ。

 具体的にはお昼御飯用のお肉こと草食魔獣を求めること切なるものがある。

 ただなー、これまでクルクルの集落を囲っていた柵の一部が取り払われる今の瞬間は、最も魔物に対して無防備になる。

 あたしも優先順位を間違えるほど愚かじゃないから。

 お肉は何より重要だろうって?

 反論しにくいけれども。

 

「油断は禁物だ。気を引き締めないとね」

「先輩でもそう思うことがあるのか?」

「そろそろお腹が減ってきたとか考えてる場合じゃない」

『場合じゃないぬ!』


 おお? ヴィルが遠隔でツッコんできたぞ?

 アハハと笑いながら集落へ引き返す。

 バルバロスさんがいた。


「どうだ、問題はなかったか?」

「問題大ありだなー。全然草食魔獣が出なかった。角ウサギ一匹だけだよ。あと食べられないやつばっかり」

「ガハハ。残念だったな。ありがちだ」


 あるかもしれんけど、お腹が納得しないわ。

 草食魔獣が出ないのは、あたしがいない時にしてもらいたいわ。

 あ、レイカ達も来たな。


「ユーラシア、どうだ?」

「皆どうだって聞くのな。ごめん、お肉ほとんど出なくてさ」

「日頃の行いが悪いんじゃないか?」

「ええ? ひどいなー。あたしは品行方正かつ純情可憐だとゆーのに。お天道様も知っているとゆーのに」


 笑ってたら血相変えた村人が駆けてきた。


「た、大変だ! マッドオーロックスが現れた!」

「やたっ! 日頃の行いがいいから!」

「拘るなあ」

「笑ってる場合じゃねえんだ。バカデカい雄の個体が興奮して暴れまくってる!」

「えっ? 暴れまくるとお肉が不味くなっちゃう?」

「このままじゃ柵が壊されちまうんだよ!」

「そーだった。クララ」

「はい、フライ!」

「わわわわわわわ?」


 村人も連れ現場へ急行!

 頭をぐるんぐるん回して威嚇してくるマッドオーロックス。


「ほんとだ。図体がデカいだけに、暴れてると結構な迫力だなあ。とっても肉々しくていい感じ」


 最後になって御褒美のお肉が出てくるのはいいことだね。

 やっぱりあたしは普段の心掛けがいいから。


「せ、精霊使いの人! 冗談言ってる場合じゃねえよ! どうするんだ?」

「どうもこうも。念のためハヤブサ斬り×二!」

「……えっ?」


 目が点になる村人。

 通常攻撃×二でも倒せたろうけど、でっかい個体だったから余裕をもって。

 あれ、見逃しちゃった?

 エンターテインメントとしては不合格か?


「よーし、昼御飯確保できた! めでたし! クララ、これ調理班のところに運んどいてよ。あたし達はこの辺警戒しながら戻るね」

「はい、フライ!」


 クララがマッドオーロックスの亡骸を運んでる内に、周りのチェック。

 まああんなのが暴れてりゃ他の魔物も逃げちゃうだろうけど一応ね。

 村人が言う。


「あ、あんたすげえんだな」

「ハッハッハッ。うちのパーティーの肉狩りは一味違うよ」

「先輩は世界一の冒険者なんだ!」

「いやまあレベルは世界一だろうけど」


 実際は冒険者経験半年ちょいの、新人に毛が生えたよーなもんだからね?

 魔宝玉狩りと肉狩り以外の経験はさほどでも。


「範囲広めに警戒しながら、ゆっくり戻ろうか」


          ◇


「うまいなー。身体に染みるわー」


 春の野草とお肉たっぷりのスープだ。

 マッドオーロックスのお肉は素直な味なので、煮込むとうまーい。

 焼いて塩だと物足りない気がするけど、いろんな調味料と合うと思うので、今後の開発次第だな。


 バルバロスさんが話しかけてくる。


「ガハハ。ユーラシアはマッドオーロックスの舌は食べたことがなかったか」

「舌? べろ?」

「そうだ。マッドオーロックスの舌を適当な厚さに切ったものは、焼いて塩が最高だぞ」

「取れる量が少ないから高級食材なんだ」

「へー」


 あたしも一切れいただこ。

 あむり。


「……ほんとだ。おいしい」

「だろう?」


 柔らかさと適度な歯応え、クセのない旨み。

 これは焼き肉で食べるべきお肉だなあ。

 バルバロスさんとボニーに豪快なドヤ顔されてるけど、これは自慢されても仕方ないわ。

 魔物肉の食べ方は西域の集落に教わることが多いかもしれない。

 ひょっとしてコブタマンもべろはおいしいのかな?


 レイカが話しかけてくる。


「ユーラシアは午後どうするんだ?」

「緑の民の村で、本に向く安い紙が作られたって聞いたんだ。どんなもんか見に行こうと思ってる」

「新しい紙ですか?」


 あ、紙屋の子ジンが反応した。

 ジンは冒険者にならなくて普通に紙屋を継いでもいい商人になったと思う。

 でもせっかくだから、冒険者の経験を生かせるといいね。


「ぜひ父にも見せてあげてくださいよ」

「うん、わかってる」


 丈夫さや手触りはともかく、印刷に向く向かないはヘリオスさんじゃないとわからんだろうしな。

 一度確認してもらわないと。

 この前の画集はカラーズで製本したが、字の多い本は活字を一番たくさん持っている新聞社で刷ってもらうのがベストだと思う。

 いずれ移民が多くなったら、カラーズでも新聞事業やりたいけどな。

 ノウハウ持ってるドーラ日報やレイノスタイムズの支部でもいいか。


「……」

「何なの?」


 ハオランが何か言いたそう。

 まあありがとうってことと姉インウェンにも伝えてくれってことなんだろうけど。

 わかってるってば。

 あんたも身体デカい方なんだから、じっと見つめてくんな。

 不気味だわ。

 それともあたしに惚れたか?


 村長さんが言う。


「今日はまことにありがとうございました。お礼もできませず、申し訳ないです」

「ガハハ、よいのだ」

「そうそう。楽しかったよ」


 レイカパーティーの皆も頷いている。

 楽しくておいしいものを食べられれば、十分な報酬なのだ。

 いや、感謝を形にしてくれるんだったら、受け取るにやぶさかでないけど。


「これでクルクルの一層の発展は間違いない」

「クルクルはちょうどカトマスと塔の村の中間だからさ。大きい村になって欲しいなって希望はある」

「農作業の心得のある移民を二、三家族こちらに回してもらえると都合がいいのですが」

「うむ、明日今月の移民が到着するはずだ。己が行政府にかけあっておこう」


 ボニーの顔が明るくなる。

 新しい出会いがあるといいね。


「ごちそーさま。あたし達は帰るよ」

「うむ、またな」

「バイバイぬ!」


 新しい転移の玉を起動、レイカパーティーを連れ一旦帰宅する。

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