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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1459話:クルクルの未来

 ボニーが俯く。


「……もし複数のマッドオーロックスにでも遭遇したら大変だ。『ネクストジェネレーションズ』では全力の戦いになってしまう。休みどころじゃない」

「ボニーは優しいな。そーゆー時はレベルの高い先輩冒険者を誘えばいいんだぞ?」

「でも何もお返しできないし」

「少なくともあたしはたっぷりお肉が食べられるなら付き合うがな? 今日みたいに他に予定がなければだけど」


 ボニーが警戒しているマッドオーロックスは、西域で出現する魔物の中では最強だ。

 レベル二〇の冒険者と互角と言われているくらい。

 草食魔獣だから狂暴ではないけど、パワーはあるしヒットポイントも高い。

 かつ、ひっじょーに食べでのあるサイズで、しかもおいしい。

 まさに最強。


「あたしはマッドオーロックスに出て欲しいんだよ。あれ一頭倒せれば皆で食べられるのに」


 今日まだお肉は角ウサギ一匹だけだもんな。

 昼食を早めに確保したい乙女心。


「でも実際に出るのはこんなのなんだよなー。ほい」


 食獣植物を一振りで片付ける。注:食べられない。

 クリーピングゼリーを一振りで片付ける。注:食べられない。

 スケアリービーを一振りで片付ける。注:食べられない。

 バンシーを一振りで片付ける。注:食べられない。

 餓狼を一振りで片付ける。注:食べられるだろうけどおいしそうじゃない。


「西域ってかなりいろんな種類の魔物が出るんだねえ」


 昆虫系、植物系、スライム、魔獣くらいかと思っていたが、霊の一種であるバンシーまで出るじゃないか。

 いや、今日は草食魔獣だけ出てくれればいいんだけど。


「インプのような低級亜魔族や、稀だが人形系も出現する」

「あっ、人形系も出るんだ?」

「ああ、踊る人形とギャルルカンが」

「楽しみだなー」


 儲かるからなー。

 苦笑するボニー。


「基本的に西域で人形系は忌み嫌われているんだ」

「そうなの? 何で?」


 経験値高いし、魔宝玉をドロップするのにな?


「普通じゃ倒せないだろう? 逃げてくれればいいが、先制で魔法を撃たれると良くて大ケガだから」

「うーん、やっぱ冒険者と開拓民では意識の違いがあるか」


 あたしは人形系レア魔物をおゼゼの親戚くらいにしか思ってない。

 が、低レベルの人が魔法撃たれると危険だよなあ。

 冒険者でもなければ、人形系を倒すスキルなんて持ってないだろうし。


『御主人、ピンクと黒の人形系だぬ! 南西へ一五ヒロ!』

「ありがとう。おいでなすったぞ、ギャルルカンだね」


 いたいた、逃げませんように。

 アトムがアースクロッドを食らったが、豊穣祈念からの通常攻撃と。


「よしよし、墨珠と藍珠をゲットだ。これはあげるから、村のために使ってね」

「先輩ありがとう!」


          ◇


「あかーん。今日は厄日だ」


 その後も魔物を狩り続けるが、おいしそうな草食魔獣に出会えない。

 序盤に仕留めた角ウサギ一匹だけだ。

 どーなってんだ?

 やっぱバタバタ作業してると、草食魔獣は寄ってこないんだろーか?


「先輩、お土産に肉を持ってきてくれたじゃないか」

「あれは昼御飯のつもりじゃなかったな」


 まーこんな日もあるか。

 ボニーが言う。


「さっきの、南部と道で繋げるという構想だけど」

「ぜひとも実現したい。何とかならんものか。碧長石の量があればイケるからね」

「クルクルはもっと豊かになるんだろうか?」

「絶対になる。南部の商人がコショウ他の珍しい産物を持ってきて、カトマスやレイノスの商人がそれを買うようになるんだもん。今南部は運べる量だけしかコショウ作ってないみたいだけど、安全な道ができれば増産してどんどん売りに来るわ。今以上に重要な輸出品になるから、街道の交差する地点であるクルクルは間違いなく栄えるね」


 嬉しそうなボニー。


「もう……人が去ってしまうことはなくなるかな」

「ボニーは別れが寂しいのか」

「五〇人もいない、小さな村だろう? 知った顔が出て行ってしまうのはこたえる」

「ハオランは塔の村の成功で街道沿いのクルクルに恩恵があることを期待してた。ハオランの姉ちゃんのインウェンって覚えてる? かなり前に黄の民の村に帰っちゃったみたいだけど」

「よく覚えてる」

「インウェンもクルクルのことを心配してたよ。一度でも関わったら、もうなかったことにはならないよ。村には住んでないかもしれないけど、いつか会える友達や知人」

「……うん」

「何だよー泣くなよー。村域も広がるんだしさ、移民を募ったっていいんだよ?」

「移民を募る? そういう手があるのか」


 目を丸くするボニー。


「今帝国から月一で移民が来てるんだ。ほとんどはアルハーン平原の開拓地へ行ってるけど、西のポーンの集落は移民を募集してたぞ? クルクルが募集しちゃダメなんて法はない」

「うん、うん」

「南部街道を早期に実現できなくても、西域街道の行き来が多くなりゃクルクルは発展するって。西域街道活発化のためには、やっぱ塔の村いかんなんだよなー。ハオランのやってることは正しい」

「そうだな!」

「人口をもっと増やしたいなー。塔の村を大きくするためには、素材やアイテムの需要が大事。となると人口だわ。ドーラの人口もそうだけど、取り引きできる地域の人口ね。世界と商売したいんだ」

「先輩愛してる!」

「ハッハッハッ。悩める乙女よ、あたしを愛するがよい!」


 急に真顔になるボニー。


「わ、私は何をすればいいだろう?」

「ボニーは十分頑張ってるじゃん。クルクルが面積拡張するなんて、ボニーが『アトラスの冒険者』になる以前は考えられなかったことでしょ?」

「……かもしれないけど」

「整地して畑増やせば食料に余裕ができる。余裕ができれば人を呼べる。ハッピーの循環ってやつだねえ。焦ること全然ない」

「わ、わかった」


 ボニーには言わないけど、カトマスからちょっと距離のあるクルクルは、南部街道が実現しなければ急に発展することはないのだ。

 でも土地は肥えてるって話だからな。

 魔物の脅威が遠くなれば徐々には大きくなっていくだろう。


 ん? 誰か来たな。


「戻ってくれ。南西角の柵を移動させて再設置するそうだ」

「あ、最終段階だね」

「ハオラン」


 ボニーの懐かしそうな声。


「今日は来てくれてありがとう」

「サボるんじゃねえ」


 ハオランらしい、ぶっきらぼうな一言を残して去ってしまった。

 照れ隠しだろうか?

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