第1458話:魔物狩り開始
もちろんあたしもクルクルの皆さんに協力することに関してやぶさかではない。
おいしい草食魔獣が目当てなんだろうって?
ザッツライト。
今日は草食魔獣をたくさん狩って、昼食は皆でお肉を食べると決めた。
楽しみだなあ。
クルクルにとって村域拡大は、当然飛躍のチャンスだしな。
今村域拡張を実現できれば、秋の収穫がかなり増える可能性もある。
サツマイモなんかは特に。
村人の頑張りにもよるが。
西域は移民にあんまり関係ないかもしれないけど、農作物生産量が拡大するならクルクルで移民を受け入れてくれても一向に構わんし。
いろんなオプションが考えられるわ。
「せっかく助っ人がいるのだ。西だけじゃなく南にも一気に村域を広げてしまおうではないか」
「さんせーい! 人数がいる時に一気にやっちゃった方が危険が少ないわ」
「大雑把な段取りはこうです」
村長さんが説明してくれる。
ふむふむ、西へ当初の計画通り柵を立てていくんだね?
東西は街道沿いだし危険は少ないと思われる。
同時に東の境界で、南へも柵を立てていくと。
東辺を倍に伸ばしたところで、今度は東辺と直角に西へ向かって柵を立てていく。
「最後に現在集落を囲っている柵の内、西辺南辺のものを所定の位置まで押し上げて設置して終了です」
「皆でトンカンやってたら、魔物も寄ってこないんじゃないの?」
「臆病な草食魔獣は寄らないかもな」
「うわ、おいしそうな草食魔獣に期待できないのか。テンション下がるわ」
「一応、調理班も用意しておりますぞ。昼飯が充実するかは成果次第です」
「おお? 村長さんはテンション上げるのが上手だね」
アハハと笑い合う。
村人がケガしてもいけない。
魔物は手当たり次第積極的に狩っていくか。
バルバロスさんが言う。
「西側街道沿いは己一人で十分だ。レイカ隊は東辺南の柵の守護を頼む」
「任せてくれ」
レイカが大きく頷いている。
「ユーラシア隊とボニーは遊撃の位置で、とにかく魔物の数を減らしてくれ。特に最後の西辺南辺の柵を押し上げる段階が危険だ。その辺りを重点的に頼むぞ」
「りょーかーい」
つまりあたし達のポジションは村の南側。
昼御飯用のお肉調達とボニーの経験値稼ぎとゆーことだな?
あたしの得意分野だ。
さすがバルバロスさん。
「よし、作業開始だ!」
「「「「「「「「おう!」」」」」」」」
◇
『御主人、スライムだぬ! 南へ二〇ヒロくらいだぬ!』
「スライムかー」
なかなかに見通しが利きづらいので、ヴィルに索敵してもらっている。
これだけ木があると、柵設置も大変だな。
「おお? でっかいスライムだな。色も毒々しい」
「先輩はポイズンスライムは初めてか? 西域に多いんだ。燃やしてしまえば無毒化する」
「そーか。ダンテ」
「ファイアーボール!」
ポイズンスライムに着弾、昇天する。
火事にならないよう『プチウォーター』しまくるのがめんどいわ。
燃やしちゃ『スライムスキン』も取れないしな。
ん? まだ何かいる。
『スナイプ』なら届く距離だな。
バサッと仕留める。
「よーし、角ウサギだ! 昼御飯まず一匹ゲット!」
「あの距離が当たるのか。先輩はすごいな」
「慣れだってば。力まずふいっと刃を当てるイメージを持つといいよ」
「角はもらっていいか?」
「角? いいけど、何にするの?」
角は食べられないよな?
多産の草食魔獣である角ウサギの角は、西域では豊作と安産のお守りなんだそうな。
へー、勉強になるなあ。
「ユーラシアさん」
「あれ? ジン、どうしたの?」
レイカパーティーの白魔法使いジンだ。
まあジンくらいのレベルがあれば単独行動したって平気だろうけど。
「思ったより太い木が多いんですよ。柵の進捗がはかばかしくなくて」
「あたしも同じこと思ったところなんだ」
今日は東辺を南へ伸ばす作業は予定になかったから、木をどうするか考えてなかったんだろうな。
「どうにかなりませんか?」
「あっ、なるなる!」
東辺南へ直行。
「困ってる皆さんのところに麗しき主人公登場!」
「登場ぬ!」
「ユーラシア!」
「話は聞いたよ。太い木が多くて困ってるんだって?」
「そうなんだ。『ウインドカッター』だと埒が明かなくてな」
苦々しい表情のレイカ。
「これ貸したげる」
「何だ? パワーカード?」
「エルフが作ってるパワーカード『ウインドエッセンス』だよ。『大木斬り』っていう、スピード遅くて射程も短いけど、威力だけは大きい風魔法が付属してるの。かなり太い木でも一発で切れるから、『ウインドカッター』よりはずっと効率がいいよ」
「木を切る専用のカードだな。どうしてこんなもの持ってるんだ?」
「折れた世界樹を材木にする時必要でさ」
移民の建物事情がどうのこうの。
「世界樹を材木に使おうという発想がユーラシアさんですねえ」
「もっと褒めても構わないぞ?」
「何が幸いするかわからないものだな」
「マジでそう。使ってみてくれる?」
「大木斬りっ!」
かなりの大木だが一発で倒れる。
「すごいな!」
「『ウインドカッター』とほとんど消費マジックポイント変わらないんだよね。でも木が術者と反対側に倒れるのは知らなかった」
横たわってる世界樹をクララが輪切りにしてるとこ見ただけだからなあ。
思ったよりよくできてる魔法だった。
エルフの族長アビーのスキル作製能力はかなり高いのかも?
「じゃあ健闘を祈る」
「ああ。ユーラシアこそ肉の確保は任せたぞ」
任されたぞ?
でもどんな魔物が出るかは選べないから、プレッシャーがかかるんだが。
しかしお肉ハンターのプライドに関わるし、張り切って狩らねば。
持ち場に戻る。
「今日は後輩ズの面々はクエスト休みなんだ?」
「後輩ズ? いや、私達のパーティーは『ネクストジェネレーションズ』と名乗っているんだ」
「えっ?」
自分とこのパーティーに名前つけてるの?
衝撃の事実だな。
大体リーダーの名前で誰それのパーティーって呼ぶけど、考えてみりゃ後輩ズには『アトラスの冒険者』が三人もいるしな?
「先輩やソールさんに続けという意味で……」
「こっ恥ずかしいわ。今日は後輩ズを誘わなかったんだ?」
「休みの日くらいは別行動がいいと思うんだ。予定もあるだろうし」
休息も大事だしな。
ボニーは細かいところに気を使うなあ。
思えば『アトラスの冒険者』になった時も慎重派だった。




