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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1455話:お待ちかねのトラブルの中心

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 ルーネを皇宮に送り、夕食を食べたあとに毎晩恒例のヴィル通信だ。


『今日も皇女のお供だったんだろう?』

「あたしがルーネのお供なんじゃないわ。ルーネがあたしのお供だわ」


 まったくサイナスさんは何を言っているのだ。

 事実誤認も甚だしい。


『どっちでもいいじゃないか。どうせトラブルの中心には君がいるんだ』

「ええ? 結果的にトラブルになっちゃうだけだよ。訂正を要求する!」

『どうせトラブルの中心にはユーラシアがいるんだ』


 全然変わってないやんけ。

 まートラブルを起こしてるって言われないだけいいか。


『お待ちかねの今日のイベントは?』

「やっぱお待ちかねなのか。大きく分けて二つだよ。午前中に帝国の魔道研究所行って、昼からガリアの王宮」

『行先だけ聞くとすごいVIPみたいだね』

「あたしはすごいVIPなんだってば。驚け」

『ガリアは『アトラスの冒険者』のクエストなんだろうが、魔道研究所には何の用があったんだい?』


 確かにちょっと疑問かもな。

 あたしとしては疑問を持たれないくらい、顔なじみになっておきたい場所ではある。


「大した用じゃなかったんだ。魔道研究所に出入りしてる杖職人とドーラの杖職人が同門でさ。ドーラの杖職人を連れてきてくれって言われてたの」

『ああ、なるほど』

「そしたらトラブルが起きてて」

『またか』


 またしてもサイナスさんお待ちかねのトラブルだわ。

 でもあたしが起こしたわけじゃねーよ。


「以前話した宮廷魔道士のマーク君。彼の作った透明マントが盗まれちゃっててさ」

『透明マント?』

「身に着けた人の魔力で起動し、姿をすっごい見づらくするっていうマジックアイテムだよ。悪いことにも使えそうじゃん? あたしみたいな心の清らかな聖女はそんな不埒なことは考えないけど」

『アピールしなくても、ユーラシアが私利私欲のためにズルいことしないのはわかってるよ』

「さすがサイナスさん!」

『私利私欲じゃなければリミッターが外れるんだろうけど』


 実にあたしのことをよくわかってるなあ。


『つまり捕り物に協力か?』

「そうそう。心の清らかな聖女は動揺してるやつがわかるだろうって」

『ここぞとばかりにアピールしなくてもいいよ。で?』

「各研究室に入れてもらえたんだ。いろんな話が聞けたから面白かった」


 むしろ機密はないんか? ってくらいだった。

 まああたしとルーネだから、どうせ魔力炉の存在については知っている。

 専門家じゃないから仕組みについてはわからない。

 隠したって意味がないということだったんだろうが。


『犯人は?』

「窓から入り込んだネコだった。透明マントにくるまって寝てるところを捕まえたから、特に問題なかったよ」

『ハハッ、よかったな』

「ちょっと興味深いことがわかったんだ。帝国が開発進めてる魔力炉だけどさ。使用可能な魔力を作り出すっていう装置だけど、どうやら小型化はできないみたい」

『ということは?』

「将来家庭用の魔力炉利用魔道装置が普及するとなると、ドーラ方式が主流になる可能性が高いってことだよ」

『ドーラ方式というと、大地の魔力を吸い取って使ったり、魔力を溜めて使ったりということかい?』

「大地の、とは限らんけど」


 とゆーか、魔力炉方式は限定した用途でしか使われなくなる気もする。

 魔力炉で魔力作ってコードで引っ張るくらいなら、元々魔力濃度の高い魔境やヴォルヴァヘイムから引くことができそうだもんな。


「魔道研究所も予算が足んなくて大変みたいだねえ。いつどこへ行ってもおゼゼの悲劇はあるもんだ。でも帝国魔物グルメマップを作ってくれそうな雰囲気になったから良かったよ」

『そんな君しか使いそうにないものを何故? また丸め込んだのか?』

「魔物を食料資源と考えた時、どこでどれだけ現地調達できるかの情報がどうのこうの」

『もっともらしい説明がえぐい』


 あたしだってぜひ欲しい情報なのだ。

 何なら研究に協力してもいい。


「お昼はガリアの王宮で食べさせてもらって」

『当たり前みたいに言うなあ』

「昼食分は働いてきたんだぞ? ガリアの将来の王妃に力添えしてきた」

『まともな仕事みたいだな?』

「あたしの仕事はいつもまともだとゆーのに」


 あーんど確かな結果を伴っているとゆーのに。


「ガリアには爵位持ち貴族の代わりに『郷士卿』っていう地方領主がいてさ。それぞれの郷士卿が、王様の花嫁候補を送り込んでくるっていうシステムがあるんだ」

『ほう? 各領主が王の目に留まるような美女を送り込んでくるわけだな?』

「可愛い子は可愛い子達なんだけど、やっぱ王妃ともなると皆が納得できるくらい優秀じゃないとダメみたい。ただの美人じゃちょっとなーって感じ」

『ふうん。王権への支持を王や王妃の人間的魅力に頼ってるのかな?』

「多分ね。王家を支える明確な貴族ってのがいないみたいなんだ。王家が力持ってるのは確かだろうけど、郷士卿の支持がないと治まらないんだと思う」


 そう考えると不安定な王権みたいな気がするな?

 でもピエルマルコ王ができるやつなのは疑いようがない。

 いや、だからこそ各郷士卿が納得するような有能王妃を選ばなきゃいけないってことなのか。


『ガリアの将来の王妃に力添えしたというのは?』

「ラブリーぽにょは王と相思相愛でいい子で王妃向きではあるんだ。でもガリアは尚武の気風があって、ある程度強くないと認めてもらえないんだって」

『ははあ、いつものレベリングか』

「ゴリ押しで力尽くでパワープレイであるところの、あたしの十八番」

『自分で理解してるならいいけど』

「あたしが何もしなくても、ラブリーぽにょに決まったような気はするけどね」

『さっきはあえてスルーしたけど、ラブリーぽにょというのが予定王妃のあだ名なんだな? 失礼だとは……思ってても言うんだな?』

「うん」


 サイナスさんはわかってるなあ。


「明日は珍しく一日空いてるんだ。今の魔物除けの札を西域で使ってくれてる集落があるから、見てこようかと思ってる」

『よく働くなあ』

「暇だとつまんないんだよ。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日は自由開拓民集落クルクル。

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