第1454話:ルーネVSぽにょ
「ただいまー」
「ただいまぬ!」
「戻ったか、ユーラシア」
ガリア王宮と騎士寮の間にある広場に、多くの人が集まっていた。
ラブリーぽにょもすぐに他の女性騎士達に交ざり、準備運動を始めている。
……うん、ざっと女性騎士達を見回してみたけど、大した子いないわ。
決勝はルーネVSぽにょだわ。
「随分たくさん見物人がいるけど、付近の住民も集まってるんだ?」
「見世物としても面白いからな。王妃候補のお披露目という意味もある」
「プニル君見てビックリしてる人いなかった?」
「いたな。王宮の客だと説明したら落ち着いたが」
「ガリアの人は順応性高いなあ」
普通あんなデカいウマいたら騒ぐだろ。
ガリアでのスレイプニルのポジションが高いからか。
神獣だもんな。
王様が言う。
「首尾はどうだ?」
「ぽにょの? もちろんバッチリだよ。あたしの仕事だから間違いない」
「うむ。具体的にはレベルを上げてくれたんだな?」
「そうそう」
「しかし……レベル二〇越えてないか?」
「越えてるね」
「想像以上なんだが」
「そお? 圧倒的な方がいいかと思って」
普通に考えて、レベル一や二の人が二〇も上のレベルの人に勝てるわけがないのだ。
半端なレベル上げだと、却って相手をケガさせちゃったりして危ないという理由もある。
あ、ルーネ来た。
「どう? 騎士の訓練は楽しかった?」
「普段できない経験は楽しかったです。でも……」
「思ったより他の団員が喋ってくれないとか冷たいとか、仲間外れっぽいことがあった?」
「はい。わかりますか? お邪魔だったでしょうか?」
「いや、ルーネは役割を果たした。でも大変よろしくないね」
「ユーラシアも思うか?」
「思う。やっぱ王様の見立ては正しいなー」
「どういうことです?」
「カル帝国の皇女たるルーネをライバルと見て、積極的に親しくしようとしない。そんなしょっぱい考え方の人が王妃になれるわけないだろってこと」
ガリアの王妃になるつもりなら、積極的にルーネとは仲良くしとくべきだろ。
国際感覚を養え。
おっと、トーナメントが始まるな。
特に司会による煽りもなく、粛々と対戦していく。
「勝負ありっ!」
「おい、あの子強えじゃねえか」
「カル帝国のお姫様なんだろ?」
うむ、ルーネは強い。
レベルも四、五はあるはずだし、元々のステータスが高い。
剣術の心得もあるようだしな。
「それまでっ!」
「おおお? 木剣を跳ね飛ばしたぞ?」
「おデブちゃん、すげえ迫力だ!」
一振りで勝負を決めたラブリーぽにょことベアトリーチェ。
レベルが違うのだ。
これくらいは当然だが、対戦相手の子呆然としてるぞ?
着々と試合は消化されていき、決勝戦は順当にルーネVSぽにょとなった。
「ふうむ、こうなるのか」
「番狂わせが起きなければ当然だね。地力が違うもん」
見物人も結構盛り上がってるなあ。
互いに挨拶する。
「ベアトリーチェさん、行きますよ」
「ルーネロッテさん、こちらこそよろしくお願いします」
レッツファイッ!
いきなり切り込むルーネ! やるな、レベルに差があっても木剣を跳ね飛ばせる体勢じゃない。受けるぽにょ。再び切り込むルーネ! ぽにょは防戦一方だ。
「ルーネやるなあ」
「うむ、しかし……」
レベル差を凌駕できるほどではない。
長期戦になり疲労の見えるルーネの喉元に、ぽにょの木剣が突きつけられる。
「ま、まいりました」
「勝負ありっ!」
審判の右手が上がる。
思ったより面白かったなあ。
ぽにょがルーネに声をかける。
「素晴らしい撃ち込みでした。驚きました。学ばせていただき、ありがとうございます」
「いえ、ベアトリーチェさんの、不動の構えこそ、結局、崩せませんでしたよ」
握手。
うんうん、いい雰囲気だね。
息の上がったルーネが戻ってきた。
「ちょっと休む?」
「いえ、もう大丈夫です」
回復早いな。
冒険者じゃなくて、騎士とかにもルーネは向いてそう。
「負けちゃいました。ユーラシアさんの弟子として申しわけないです」
「誰が誰の弟子だ。レベル差のある相手に模擬戦であれだけ戦えれば十分だぞ?」
「実戦ならどうでしょうか?」
「彼我の実力差を知ることが第一。勝てる計算のできない相手とは戦わないことが第二。冒険者は兵士じゃないから、戦う相手が決められているケースは少ないよ。偶発的に勝てない相手と戦闘になったら、逃げることを考えようね」
「なるほど、冒険者の心得……」
「冒険者というお仕事の神髄だね」
まールーネの実戦ということなら、風魔法で牽制すればかなりの魔物と戦えるし逃げられる。
実に有望だ。
本当に冒険者やればいいのに。
「ベアトリーチェ。あなたこんなに強かったのね。知らなかったわ」
「いえ、あの。隠してたわけではないのですが……」
優勝したぽにょの元に何人かの騎士が集まってきた。
まだ無視してる子もいるけど。
「どうしたらあなたのように強くなれるのかしら? コツがあるの?」
「御飯をたくさんいただいていたら、パワーがついてしまって……」
この発言は事前の打ち合わせ通り。
今後は御飯を押しつけられることもなくなるだろう。
レベルが上がったこともあり、ぽにょも自然と痩せてくるに違いない。
あれ、痩せたらぽにょって言えなくなっちゃうのか?
それはそれでつまらんな。
「陛下のお言葉を拝聴いたしましょう」
「うむ。今日は日頃の訓練の成果を見せてもらった。真摯なる対戦は素晴らしきものであった。武神もお喜びくださるであろう」
騎士団の面々を見回す王様。
「しかし、わが国を代表する婦人となるべきことを期待されている諸君らには足りないものがある。ベアトリーチェを見習い、猛省するがよい。以上だ」
王様はあえて言わないな。
考えさせるつもりらしい。
帝国の皇女であるルーネと交流を持たないでどうするのだ。
また女性騎士同士が、蹴落とすべきライバルと思い合っているのもよろしくない。
その点ぽにょは優しいというか、嫉妬心が薄く、誰とでも隔意なく話せるところがいい。
王妃向きと言える。
「面白かったよ。今日は帰るね」
「うむ。また来い」
「バイバイぬ!」
「御機嫌よう」
転移の玉を起動し帰宅する。
『クエストを完了しました。ボーナス経験値が付与されます』
あれ、ルーネのレベルが上がるようなことやらせたって、お父ちゃん閣下に文句言われるかな?




