第1453話:王妃に相応しい
フイィィーンシュパパパッ。
「オニオンさん、こんにちはー」
「こんにちはぬ!」
ラブリーぽにょを連れて魔境にやって来た。
「いらっしゃいませ、ユーラシアさん。そちらの方は?」
「将来のガリア王妃ベアトリーチェだよ」
「えっ? お、王妃だなんて……初めまして」
アタフタするぽにょ。
ぽにょ可愛いよぽにょ。
「ラグランドのあとにガリアのクエストが出ちゃったんだ。ベアトリーチェはガリアのピエルマルコ王と相思相愛なんだけどかくかくしかじかで」
「なるほど、レベル上げが必要ということですね?」
「今のでわかるのか。オニオンさんエスパー?」
何か最近あたしの周りの人達すごい。
これから何が起きるか全然把握していないぽにょが、首をかしげながら聞いてくる。
「ええと、どういうことですか?」
「ぽにょはいい子で、王様から熱い視線浴びるくらいには気に入られてる。でも王妃になるには大きな問題点が一つあるでしょ?」
「戦ったら弱いということですよね? ガリアは強さに重きを置きますから、どうしても不利になります」
「うん。じゃあ逆に強ければ何も障害はないよねってこと」
「強ければ……簡単に剣術は上手にならないと思うのですけれども」
「技術を短時間で向上させることはムリだね。でも技術じゃないところは短時間でどうにかなる部分があるじゃん?」
「ええと、どういうことですか?」
再び首をかしげるぽにょ。
大分ヒント出してるのにな。
オニオンさんが説明する。
「ユーラシアさんの得意技に、魔物狩りをすることによって同行者のレベルを上げるというものがあるのですよ」
「……つまり私が魔物狩りに同行。私のレベルを上げてもらえるということでしょうか? レベルとともに攻撃力や敏捷性は上がる、少々の腕の差は埋められると?」
「おおう。途端に理解が早いね」
「……理屈はわかりますが、私は一ヶ月半の訓練で一つもレベルが上がらなかったのです」
「お嬢さん剣術じゃ仕方ないね」
魔物退治なしで経験値なんかほとんど溜まらん。
レベル一上がった子がいるかいないかくらいだと見た。
「私は戦いに向いてないと思うのです」
「向いてないね。ただ向いてる向いてないは関係ないんだ」
ついて来てくれりゃいいだけだから。
ただぽにょは誤解したみたい。
「わ、わかります。陛下の期待に応えるためには、向いてないからと逃げることはできませんね」
「そーゆー意味じゃなかったけど」
「模擬試合トーナメントまで一時間。どう頑張ったところでレベルなんて……いや、これが私のいけないところですね。死ぬ気でやります!」
「いや、ぽにょは何もしなくていいんだ」
「下手に動くと危険ですから、ユーラシアさんの後ろについて行くことと、戦闘になったらしっかり防御することだけを考えてください」
「わっちがカバーするだぬよ?」
「えっ?」
「あ、オニオンさん。最近ペペさんが開発した盾の魔法ってやつがあるんだけど」
「『ファストシールド』ですね?」
「うん。あれ衝波攻撃には効果ないんだって。謎の人形系対策に使おうとしてる人いたら、無意味だって教えてあげてよ」
「やはりですか。了解です」
ぽにょがまだわからんって顔してるな。
あんまり時間をムダにもできないから。
「行ってくる!」
「行ってくるぬ!」
「行ってらっしゃいませ」
「えっ?」
ユーラシア隊とふよふよいい子、疑問符と体脂肪で肉付けされた子出撃。
◇
ベースキャンプから外に出ると、早速魔物出現。
「そこに今にも襲ってきそうな魔物がいるでしょ?」
「す、すごく恐ろしげですね。頭が三つもあります」
「ケルベロスだよ。倒しまーす」
「えっ?」
レッツファイッ!
いつものパターン、実りある経験からのハヤブサ斬り・改×二! ウィーウィン!
「ぽにょは肉付きがいいから、ボーッとしてるとおいしそうに見えちゃう。戦闘中は一応ガードしててね」
「あっ、ごめんなさい。不注意でした。……私、レベルが上がったみたいです」
「うん、いいね。今のケルベロスはレベル三五フル装備の戦士と互角くらいの強さの魔物なんだ。一般人から見ると結構な魔物だから、経験値も割とあるの」
「レベル上げとはこういう……ありがとうございました!」
「気が早いなー。本番はこれからだぞ? レベル二〇くらいを目標にするよ」
「レベル二〇? レベル二〇?」
「大事なことだから二回言ったのかな?」
「歴戦の勇士クラスのレベルですよね?」
「ドーラでは中級冒険者レベルだね。まずまずの実力」
もうぽにょもレベル四、五にはなってると思うから、今日のトーナメントでもルーネ以外には勝てると思うけどね。
「あんたは他人を傷つけたりするのが嫌なんでしょ? レベルが二〇も違えば、相手をケガさせずに押さえ込めるよ」
「……ユーラシアさんはどういう方なんですか?」
「自己紹介してなかったね。ドーラのスーパーヒロインでウルトラチャーミングビューティーでミラクルシックスティーンだよ。魔物狩りに関して言えば、うちは世界最高の冒険者パーティーだと思ってる」
「世界最高の冒険者……どうして私のことを後押ししてくれるんですか?」
「ラブリーぽにょの触り心地がいいからだぬ。気に入ったんだと思うぬ」
「おいこらヴィル。それも重要な理由だけれども」
大笑い。
最近のヴィルはとても面白い。
「何だか私だけ反則しているみたいで気が引けます」
「自分の実力を引き上げるのは反則じゃないわ。ダメなのは他者を陥れようとしたり、汚い裏工作したりすることだわ」
ライバルを太らせようとするとかな。
ぽにょを手伝う理由はいくつかあるんだが。
「一番大きいのは、王様がぽにょを王妃に相応しいって見ていることだな」
「陛下が私をですか? いえ、幼馴染であるというだけで、さほど自分に優れた点があるとは思えないんですが」
「あの王様が幼馴染ってだけでぽにょをいいと思うわけないじゃん。甘い人じゃないぞ?」
「で、ですが……」
「ぽにょにはすごくいいところがあるんだよ。自分で気付いてないだけ。ぽにょのいいところは、あとで明らかになる」
ルーネがいるからね。
ま、ぽにょが王妃になるとあたしも都合がいいわ。
触り心地いいし。
とっととレベル上げしちゃおう。
「少し中へ行くよ。経験値の高い魔物がいるからね」




