第1451話:腕の上のぽにょ
フイィィーンシュパパパッ。
魔道研究所から帰宅後、うちの子達とルーネを連れ、ガリアの王宮にやって来た。
昼頃に来いって王様に言われていたので、今日は昼御飯をいただくつもりだ。
転送魔法陣の転送先は森の出口にあるので、ここから見る王宮は実に絵になるなあ。
「ガリアの王宮の庭はほんと広いなあ。プニル君ものんびりと草食んでるし」
「ドーラだって広いでしょう?」
「うーん、ドーラに面積があるのはその通りなんだけど、魔物がたくさんいるからねえ。使える土地は広くなかったりするんだよ」
「魔物を倒してみたいです」
「結構難しいんだぞ?」
「コツがありますか?」
「正確な一撃を入れて息の根を止めることが重要だね。ズタボロにすると食べるところがなくなってしまう」
アハハ、でも笑いごとばかりとも言えないのだ。
ピッと首を上手に刎ねれば、お肉をおいしく食べられる上に毛皮も丸々利用できるからね。
ドーラはガリアほど寒くないから、魔物さえ何とかなるなら開発の可能性は大きいな?
おいしい魔物と利用可能な居住域、どっち取るかが悩ましい。
「あら、スレイプニルが近寄ってきましたよ」
「あたし達がいるのがわかったんだな。用があるのかな?」
跳ねるような駆け方だ。
機嫌がいいんだろう。
「プニル君、こんにちはー」
『うむ、よく来たな』
「プニル君は格好いいよなー。待遇はどう?」
『待遇というか、王の通達が行き届いたようでな。完全というわけではないが、慌てる人間はいなくなったのだ』
「よしよし、もう安心だね」
神獣っていわれるとビビるかもしれんけど、見慣れりゃどうってことないだろ。
プニル君は理知的な子だし。
「ところでプニル君はニンジン好き?」
『ニンジン? 何だそれは?』
「えっ?」
プニル君はニンジンを知らないのか。
クララが言う。
ニンジンの生育には数ヶ月にわたってある程度以上の温度が必要だから、ガリアでは一般的じゃないんじゃないかって?
マジかよ。
「ニンジンっていう根っこを食べる野菜があるんだよ。ドーラではウマの大好物だとされてるの。ユニコーンも大好き」
『ふむ、興味があるな』
「今度持ってきてあげるよ」
『うむ、楽しみにしているぞ』
ニンジンを知らないというのは不幸だ。
でもスレイプニルはただのウマじゃないからどうなんだろ?
あたしも興味あるわ。
「じゃねー」
『さらばだ』
駆け去るプニル君。
ルーネが言う。
「完全に意思の疎通ができるんですねえ」
「プニル君とは問題なく話せるな。普通のウマだと考えてることが何となくわかるっていう程度だけど」
プニル君はそんじょそこらの人間よりずっと思慮深いまである。
やっぱ神獣だもんな。
いつか知恵を借りる時があるかもしれない。
「さて、昼御飯をごちそーにならないと」
王宮へ。
「こんにちはー」
「ようこそユーラシア殿」
警備兵も今日はにこやかだ。
「王様いる? 昼頃来てくれって言われてたんだけど」
「御在宮ですぞ。案内いた……」
「待ちかねたぞ、ユーラシア! ルーネロッテ嬢」
「こんにちはー」「お邪魔します」
王様もフットワークの軽い人だなあ。
何やるんでも早い人というのは、それだけで評価できるわ。
うっかり公爵?
うん、何事にも例外はあるね。
反省する。
「今日はお仕事がない日なんだ?」
「いや、公務の一環であるぞ」
「あれ、女性問題って言ってなかったっけ?」
「女性問題といえば女性問題だな。王宮で行われる新人女性騎士団の演習の視察なのだ」
「新人女性騎士団? ふーん」
一瞬何だつまらんと思ったが、あたしに相談したいことって言ってたしな?
しかもラブい予感がプンプンする。
愉快な展開になること間違いない。
「昼食が用意してあるのだ。食べていくのだろう?」
「もちろんだよ。お腹ペコペコ」
「食しながら話そうではないか。こちらだ」
奥に案内される。
何食べさせてくれるんだろ?
この前のトナカイ肉ステーキは美味かったなあ。
大きいんだけど淡白な味わいなのでスッと食べられちゃう。
なんてことを考えていたら……。
「きゃああああああ!」
「おお?」
大柄でえらく丸い女の子が二階から降ってきた。
危ないなー。
どういう状況だ?
避けてあとから『リフレッシュ』かけてもいいけど……。
「どすこーい!」
受けとめてみました。
ルーネにぶつかってケガでもしたら、お父ちゃん閣下に怒られそうだから。
丸い女の子がおずおずと言う。
「あ、ありがとうございます! 重いでしょ?」
「あたしは力持ちだから平気だぞ? あんたこそどこか身体打ったりしてない? 痛くない?」
「お気遣いありがとうございます。全然平気です。丈夫だけが取り柄なんです」
王様が言う。
「ベアトリーチェ、何があった?」
「あっ、へ、陛下? こんな格好で申し訳ありません!」
「お姫様抱っこは女の子が一番可愛く見える格好だと思うけどなあ?」
「可愛いぬよ?」
コクコク頷いているルーネ。
「ユーラシアさん。私もあとでお姫様抱っこしてください」
「えっ? べつにいいけど」
ルーネはお姫様抱っこに憧れがあるのかな?
そーいやあたしもお姫様抱っこされた記憶はないな。
ベアトリーチェと呼ばれた女の子が言う。
「寄りかかったら二階の手すりが壊れてしまったのです。申し訳ありませんでした」
「その方が悪いわけではない。寄りかかったくらいで壊れる方が悪いのだ。直ちに修理。階段を含めすべての手すりの強度を点検せよ!」
「はっ!」
王宮を預かる家令だか執事だかがすっ飛んでいく。
責任問題ギャアギャアじゃなくて、破損に対してすぐに対応するのは気持ちがいいなあ。
王様はさすがだわ。
「あの……降ろしてもらってよろしいですか?」
「もうちょっと抱っこしてちゃダメ? えらく触り心地がいいんだ」
ぷにぷに。
太っちゃいるけど肌は綺麗だ。
腕の上のぽにょだわ。
恥ずかしそうなぽにょ。
「ちょうどいい。ベアトリーチェ、その方にも関係のあることなのだ。今からの会食に同席せよ」
「えっ? は、はい。わかりました」
「ユーラシア、そのままベアトリーチェを連れてきてくれ」
「りょーかいでーす」
どうやら王様はラブリーぽにょに好意があるようだ。
いい感情が溢れているのか、ヴィルが王様にくっついてるやんけニヤニヤ。
面白くなってきたなあ。
ぽにょを抱えながら食事の席へ。




