第1450話:杖職人の対決決定
「もー何やってんの?」
「何やってるぬ!」
ラウンジに戻ってきたら、二人の杖職人ナバルさんとモプシュさんがカンカンガクガクの言い争いなのだ。
宮廷魔道士達が遠巻きに見てるじゃん。
放って帰りたいくらいだわ……意外といい手だな?
「あっ、超絶美少女精霊使い。見学は終わったか?」
「うん、楽しかった。で、これは何の有様?」
「ナバルのやつが自慢ばかり垂れるのだ! 堪忍ならぬわ!」
「何を言うか! お前こそ私の作った宮廷魔道士長殿とマーク殿の杖を認めぬではないか! 目が曇っているのだ!」
「俺の杖を見てからほざけ!」
魔道士長さんとマーク青年が困ってるじゃねーか。
実際に持ってる片眼鏡の杖の良さも、モプシュさんの杖の評価も知ってるだろうから。
ただ帝国で必要とされている杖とドーラで使われてる杖は、傾向が違うってことがあるんじゃないかな?
帝国では一般人が武器を持っちゃいけないっていう縛りがあるわけだし。
「どうどう、ブレイク。こういう争いはいい男かいい女がやってるとエンターテインメントとして成立するけど、おっちゃん二人では目を背けたくなるよ」
「「む……」」
不承不承ながら黙る二人。
「双方の言い分を聞こうじゃないか。何が不満なん?」
「ナバルはドーラへ逃げたクセに、お土産と称して燿竜珠と世界樹の乾燥木をくれると言うのだ!」
「もらえばいいじゃん。燿竜珠なんて帝都では高価なんでしょ? 怒る意味がわからん」
「上から目線で寄越されて、どう感謝すればいいのだ!」
「ドーラに逃げたなどと言うからではないか! 手に入れられる材料の面から、ドーラが杖造りに適しているのは事実なのだ!」
「腕には関係がない!」
「私の工房はギルドの指定工房なのだぞ!」
ヒートアップするなあ。
これはいくら言い合ったところで二人とも満足しないと思う。
「要するにどっちの腕が上かってことなんだね?」
「「そうだ!」」
人口の多い帝都で揉まれたモプシュさんの方が、いろんなケースを経験してそう。
一方で片眼鏡のおっちゃんは、様々な材料を試してみることに関して一日の長がありそう。
「ナバルの杖を見てわかった。同じ材料なら俺はもっと優れた杖を作ることができる」
「思い上がりだ! 使ったこともない材料だろうが!」
「よーし、言い争ってたって水掛け論だね。正々堂々と決着をつけよう」
「「どうやって?」」
「モプシュさんナバルさんの双方が、ルーネに杖を一本ずつ作ってプレゼントしてください。ルーネの気に入った方が勝ち」
「「おお!」」「ええっ?」
興奮する杖職人ズと困惑するルーネ。
「ルーネは風魔法使いなんだ。あーんど皇女でありながら冒険者になりたいっていう希望がありまーす。ルーネ、ちょっとこれ触ってくれる?」
「はい」
ギルドカードを触らせてステータスを見せる。
「いいかな? ルーネは魔法力だけじゃなくて各ステータスが高いんだ。どんな杖が最適か、よく考えてね」
「「ふむふむ」」
「開示する情報はここまで。モプシュさんは聞き込みでルーネの好み等のもっと詳しい情報を得られるかもしれないけど、調査するのはなし。魔宝玉の使用を許可するとドーラ人ナバルのおっちゃんが有利過ぎるからそれもなし。ルーネの判定には文句をつけない。とゆー勝負でどう?」
「十分だ! 腕が鳴る!」
「私もだ! 創作魂が刺激されるわ!」
「ナバルなどに絶対に負けはせぬわ!」
「モプシュなどルーネロッテ嬢が私の杖を気に入るのを、悔しがって眺めていればいいのだ!」
おーバチバチ火花が散ってるぞ?
対決は盛り上がるなあ。
ん? ルーネ何?
「ユーラシアさん、困ります」
「困りゃしないよ。ルーネだって魔道杖欲しいでしょ?」
「ぜひ欲しいです!」
「男は女の子にプレゼントしたいものなんだ。自分の作ったものを喜んで使ってもらえるなんて、大喜びのはずだぞ?」
「超絶美少女精霊使いの言う通り!」
「ルーネロッテ嬢に我が杖を使用してもらう幸せ!」
「そ、そうですか? ありがとうございます」
杖職人ズのテンションに比べ、引き気味のルーネが対照的だけれども。
くれるものはもらっておけばいいと思うよ。
ムリヤリもらえる展開に仕立てたじゃないかって?
細けえことはいーんだよ。
「ところで対決の日はいつにする?」
「ナバル、五日後でどうだ?」
「うむ、私は五日後で構わぬ。超絶美少女精霊使いとルーネロッテ嬢の都合はいかがかな?」
「あたしも五日後は大丈夫だよ。ルーネはどう?」
「私も問題ないです」
「じゃ五日後、この魔道研究所ラウンジでレッツファイッ! オーケー?」
「「オーケーだ!」」「オーケーだぬ!」
よしよし、五日後ヴィルも連れてきてやろうね。
今までテンション上がってたのがウソのように、モプシュさんがしんみりした様子で言う。
「……ナバルよ」
「何だ?」
「土産に感謝する。特に燿竜珠、ドーラからもほとんど入らないのだ。大変に高価なものなのだろう?」
「高価といえば高価だが、これは超絶美少女精霊使いにタダでもらったものだ」
「タダであげたわけじゃないよ。ファイアードラゴン戦でナバルのおっちゃんと共闘する機会があってさ。正当な分け前だよ」
「共闘? どういうことだ?」
片眼鏡に火属性無効の装備をさせてファイアードラゴン狩りしたことを話す。
ルーネが目をキラキラさせてるけどダメだぞ?
ファイアードラゴンは群れで現われるから、普通のドラゴンを倒すよりずっと危ないのだ。
「燿竜珠はファイアードラゴンだけがドロップするのですか?」
「確認したところだとブラックデモンズドラゴンも落とすよ。確率はファイアードラゴンと同じくらいだと思う。ブラックデモンズドラゴンは幽玄浮島珠をドロップすることもあって、多分そっちがレアだな」
「ユーラシア殿はブラックデモンズドラゴンを何体倒しているのですかな?」
「七体だよ。この前五体のブラックデモンズドラゴンをいっぺんに倒せってイベントがあったから数は増えたな。うちのパーティーだけじゃムリだったと思う」
ソル君と魔王のスキルあってこそだった。
だからルーネよ。
目をキラキラさせてもダメだとゆーのに。
お父ちゃん閣下が許してくれないわ。
「じゃ、五日後また来るね」
「バイバイぬ!」
転移の玉を起動し帰宅する。




