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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1444話:慈愛のオーラ、自愛のオーラ

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。


「今日帝国施政館で、特級聖女勲章とゆーのをもらったんだ。ラグランドの件での御褒美として」

『最近聖女付いてるじゃないか』

「いい傾向だよね。慈愛のオーラが溢れそう」

『自愛のオーラだろう?』


 アハハと笑い合う。

 心地良い掛け合いの時間だ。


『今日は帝国でも認定聖女になったことがメインイベントなのかい?』

「うん。今後帝国で話題になる二人のユーラシアは、聖女ユーラシアとユーラシアの聖女だね」

『油断し過ぎじゃないか? 君の都合のいい予想は、大体面白くなる方に傾く』

「あれ? 何かサイナスさんの言うことが当たってる気がするな。となると可憐な美少女に待ち受ける運命は?」

『口うるさい方の聖女とか自称の方の聖女とか呼ばれそう』

「ええ? カッコ悪い!」


 聖女に拘ってるとマジでカッコ悪いフラグ立ちそう。

 あんまり触らんどこ。


「施政館ではもう二つイベントがあったんだ」

『何があっても君の人生を楽しませるためのイベントに換算するんだなあ。いや、施政館でユーラシアが喜ぶようなイベントが起きることが、そもそもよろしくない』


 サイナスさんは何を言っているのだ。

 エンターテインメントに罪はないわ。


「あたしがいい子だから、神様が面白いことを振ってくれるんじゃないかなあ?」

『神様も余計なことを』

「おいこら、余計なことじゃないわ! お肉とともに、あたしの生きる原動力だわ」

『普通は神話級の魔物が現れるなんてのは、生きるか死ぬかの大事だからな?』


 かもしれんけど、今日施政館であったのは全然大事じゃないわ。


『さあ、何があったのか自白しようか』

「自白って。うっかり公爵が公爵を降りるんだそーな。で、新しく公爵になる息子さんにすげえ感謝された」

『ん? 君公爵辞めろなんて言ったのかい?』

「いや、直接辞めろとは言ってないな。ラグランドのことに関係するんだけどさ。うっかり公爵は孫のリキニウスちゃんとオードリー王女にメロメロなわけじゃん? リキニウスちゃんとオードリーが結婚してラグランドに転居すると、ついて行きたいわけで。公務でもないのに公爵が長いこと帝国を離れるのよろしくないから譲れば、みたいなことは言った」

『まともな理屈だな。でも二人の結婚なんて先のことだろう?』

「まあねえ。うっかり公爵行動だけは驚くほど早いんだよね」


 反射で生きてるからだ。

 脳を使え。


『うっかり公爵の息子というのは野心家なのかい? 公爵になってやりたいことがあるとか?』

「普通に善人だよ。あたしの苦手なタイプ」

『どうして君は善人が苦手なんだ?』

「普段善人には関わりがないから、慣れないんじゃないかなあ?」

『周りが悪人ばかりという全方向へのディスりがえぐい』


 アハハ、あたしは悪人ばかりとまでは言ってないけどな。


「帝国では跡継ぎが一人前になると爵位を譲られるものらしいの。いい歳なのにいつまでも爵位を譲られないと、当主に認められてないか何か欠陥があるかと思われて、肩身が狭いみたい」

『なるほどな。体面で生きている貴族としては厳しいのか』

「主席執政官閣下もすげえ悪い顔してんだよ。うっかり公爵に邪魔されることがなくなって嬉しいんだと思う」

『エゴが醜過ぎてひどい』


 サイナスさんはひどいって言うけど、可愛いもんだと思う。

 あたしだって邪魔するやつは排除したくなるわ。


「で、もう一つのイベントが、閣下の娘のルーネを遊んでやること」

『は?』

「ルーネが冒険者に憧れてるから、今日明日あたしのお供にしてもらえないだろうかって、閣下に頼まれたの」

『主席執政官閣下は娘に危ないことをして欲しくないんだろう?』

「でもルーネにおねだりされちゃうと断れないパパの弱さ」

『ははあ?』


 ジレンマなのだ。

 傍から見てると苦しんでるのがわかって笑える。


『魔境に連れてっちゃったりするのか?』

「いや、閣下に危ないことするなって言われてるから」


 魔境はドーラで一番楽しいところだけどねえ。

 ルーネも絶対喜んでくれるだろうし。


『君の理屈だと魔境は危ないことないんだろう?』

「ないけど、閣下の基準だと危ないことだと思ってそうだもん。露骨に機嫌を損ねることはできないじゃん」

『……貿易にも移民にも影響が出るかもしれない、か。バランスが微妙だな』

「ギリギリ機嫌を損ねないところを見極めるのがスリルなの」

『ただただえぐい』


 楽しみだとゆーのに。


「だから今日はギルドを案内して、その後ガリアの王宮連れていって」

『いいんじゃないか? 平和で安全で』

「王宮でスレイプニルが出て困ってた」

『スレイプニルって空飛ぶ神馬か? ユーラシアのやることだからなあ』


 あたしのやったことちゃうわ。

 たまたまだわ。


「スレイプニルはただ飛ぶんじゃなくて、空を踏みしめて走るんだよ。あれ特殊な飛行魔法なんだろうな。背中乗せてもらったんだけど、良かったわー」

『仲良くなったのかい?』

「うん。あ、スレイプニルは喋れるよ? でもスレイプニルより高いレベルがないと理解できないって」

『スレイプニルのレベルっていくつなんだい?』

「九九」

『喋れないのと一緒じゃないか』


 まあ。

 でもこっちの言ってることは理解してくれるしな?


「あたしからは以上でーす。明日もルーネ連れてあちこち行く予定つもり。カラーズは何かあった?」

『緑の民が本に向いた安い紙を開発したらしいぞ。アレク達が言ってた』

「へー、研究熱心だな。ありがたい」

『需要を作れるか?』

「夏くらいを目処にスイーツのレシピ集出す予定だよ。これはイシュトバーンさんに頼んでるんだ。あとは悪役令嬢のドーラ西域紀行珍道中がそろそろ書き上がるはず」

『万全じゃないか』

「でもこれは緑の民の村じゃなくてレイノスで刷ってもらおうと思ってるんだ。新聞社は活字たくさん持ってるから」


 字の本は当面新聞社で刷ることになるだろうな。

 両方とも輸出するつもりなのだ。

 特にフィフィの本は当たれば大きい。

 新しい本用の紙はヘリオスさんに見てもらった方がいいか。


「楽しみが多いなー。サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 明日は魔道研究所。

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