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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1442/2453

第1442話:神獣スレイプニル

 フイィィーンシュパパパッ。


「ここがガリアですか。森と……宮殿?」

「王宮だよ。中に入ったことはないけど」


 ラルフ君家に寄ったあと、うちの子達とルーネを連れて、『ガリア・セット』の転送魔法陣から飛んできたのだ。

 ハハッ、皆キョロキョロしてるわ。


「王宮ですか。何か用があったんですか?」

「特にはないよ。遊びに来たの」

「えっ? いいんですか?」

「あたしやルーネみたいな可愛い女の子が遊びに来て嫌がるわけないでしょ」

「そういうものなんですね?」

「世の中の真理だよ」


 箱入り娘ルーネには常識を教えてやらないとな。

 あれ、うちの子達がそんな常識はないぞって顔してるけど。


「午後三時以降は王様大体帰ってるんだって。早めに公務を片付ける体制なんじゃないかと思うんだ」

「ガリアの公務は楽なんですね」


 王宮に遊びに来るということに関して、イマイチルーネが納得していないようだ。

 うちの子達はイマサンくらい納得してないって?

 いーんだよ、細けえことは。


 ガリアはセットのクエストなのだ。

 以前の経験からして、ここへ来てれば高確率で何かの揉め事に巻き込まれるはず。

 ルーネを危険な目に遭わせるなと言われただろって?

 いーんだよ、細けえことは。

 セットのクエストは大体難易度低いわ。


 ダンテから短く声がかかる。


「ボス」

「ウマだね。放し飼いかな?」


 遠くに黒いウマがいる。

 この王宮、庭がやたらと広いから、牧場を兼ねてるってこともあるのかもしれないな。

 一頭だけってのは違和感あるけど。

 あれ? でも捕まえる時どうするのかな?

 逃げられちゃう気もする。


「ユーラシアさん、あのウマ、すごく大きくないですか?」

「……本当だ。やたらとデカいね」


 遠目でわかりにくいけど、木と比べるとかなり大きいな。

 普通のウマの何倍かありそう。


「あっ、脚の数が多い?」


 前脚後脚四本ずつあるじゃん。

 ダンテが注意喚起したのはただのウマじゃないからか。

 クララが囁く。

 おそらくスレイプニル?

 空も飛べる神獣?

 メッチャ格好いいな。


「ガリアの王宮はあんなの飼ってるんだ。やるなあ」

「近寄って来ましたよ?」


 ほんとだ。

 どうしたんだろ?


「あたしに用があるみたい。ちょっと行ってくるね」

「危ないですよ?」

「危なくはないな」


 ルーネもパッと見で危険度を判断できるようになるといいかも。

 八本脚のデカいウマに敵意はない。

 困ってるっぽい?

 デカウマの方に行ったら喜んでる。


「こんにちはー。どうしたの?」

『うむ、御機嫌よう』

「あっ、何だ。あんた喋れるんじゃん」


 普通にコミュニケーション取れるとは。

 さすがは神獣。

 しかしデカウマは苦りきった顔で言う。


『我は我より高次の者としか意思の疎通ができないのだ』

「レベルの高い人としか喋れないってこと? あんたかなりのレベルでしょ?」

『レベル九九カンストしておる』


 見た感じそーだろうなとは思った。

 でもせっかく知性のある喋るウマなのに、実質あたしとしかコミュニケーション取れないって不便じゃん。

 役に立たない設定だな。


『ここの宮殿の庭は我好みの草が生えるのだ。時折訪れたいが、人間どもは怖がって近寄ってこん。敵扱いされても迷惑だし、どうしたものかと』

「何だそんなことか。じゃああたしが通訳してあげるよ」

『本当か?』

「うん。低レベルの人の喋ってる内容はわかるんだよね?」

『うむ』


 飼われているわけじゃなかった。

 王様に言っとけば、面白そうなこと好きな人だから許してくれるだろ。

 王宮玄関へ行くか。


『我が汝を乗せていってやろう』

「ほんと? じゃ、お願いする。クララ、皆を『フライ』で玄関まで連れてきて!」


 パカラッパカラッと助走し、力強く空を蹴ってゆく。

 こういうまさに空を疾駆する飛び方は初めての感覚だ。

 スレイプニルすげえ!

 あっという間に玄関まで来て着地した。

 続いてクララ達もフワリと着地、警備兵が唖然としてるけど。


「こんにちはー」

「き、君はこの前のドーラの冒険者!」

「そうそう。この子が王様に用があるんだって。王様いる?」

「こんなところに連れてきては困るだろうが!」

「玄関前は駐馬禁止だった?」

「えっ? 禁止ではないが……」


 どういうことだったろ?

 あたしも王宮ルールには不案内だしな?

 おっと、王様出てきた。


「者ども! 何事だ!」

「王様、こんにちはー」

「おう、ユーラシアだったか。よく来たな!」

「この子が王様に用があるんだって」

「可愛らしい少女の用とあらば聞かずばなるまい。どこのお嬢さんだ?」

「いや、ルーネじゃなくてこっちのスレイプニル」

「おおおおおおおおお?」


 こんなデカいウマ無視して、よくルーネの方行ったな?

 王様もやはり只者ではない。


「さては問題のスレイプニルだな!」

「問題だったんだ?」


 まー敵か味方かわからんレベル九九のデカいウマが庭にいたら、ふつーの人はビビるか。

 あたしもプニル君の言い分しか聞いてないから、王宮側の事情がわからん。

 王様が言う。


「最近八本脚の巨大なウマが王宮庭に出没するとの報告があったのだ」

「聞くまでもなくプニル君のことだよね?」

『うむ、我のことであろう。他の個体は近辺におらぬゆえ』

「こっち来始めたの最近なんだ?」

『そうだな。というか、あとになって王宮の庭だと気付いたのだ』


 ここやたらと広いもんな。

 王様が不思議そうに言う。


「ユーラシアはスレイプニルと話せるのか?」

「レベルの高い人となら話せるって言ってるよ。会話できなくても、人間が喋ってることは完全に理解してる。あたしが通訳するから、聞きたいことあったら言って」

「ふむ、都合が良いな。ガリア人の間では、スレイプニルは神の軍馬であるという伝承があるのだ。相違ないか?」

『我は我である。神になど従属せぬ』

「自分は自分だって。神様のものじゃないって」

「ほう? 軍馬というからには気性が荒いのではないかと、王宮の者が心配しておったのだ。それに関しては?」

『我は平穏を愛する。しかし降りかかる火の粉は払う』

「平和主義者だって。でも逆らう者には容赦しないって」

『ニュアンスが違うのではないか?』

「そお?」

『我が聞く耳を持たぬ存在と思われるような……』


 温和だな。

 少なくとも平和主義者であることに間違いはないでしょ。

 プニル君首振ってるけど、舐められるよりいいと思うよ?

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