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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1436話:認定聖女と本物の聖女

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 夕食後に毎晩恒例のヴィル通信だ。


「今日本物の聖女に会ったんだ」

『ほう?』


 あれ、どうした?

 サイナスさんったら言葉が続かないね?

 興味津々なのはわかるけど。


『ユーラシアだって、昨日聖女認定されたって喜んでたじゃないか』

「うん。あたしはガリア王国に認められた正真正銘の聖女だよ」

『どうしてぬけぬけと本当のことを言うんだ』

「何だとお……いや、本当のことだからいいのか。あたしは聖女あたしは聖女」


 いつもの掛け合いのパターンかと誤認したじゃないか。

 つい反論の態勢に入ってしまったわ。

 そこはかとなく呆れたような雰囲気を漂わせるのがいけない。


『認定聖女が本物って言うくらいだから、相当な女性なんだろう?』

「どーも認定聖女が聖女に劣っているような言い草だけど、まあ聖女はヤバい子だったんだよ。リリーの縁談をぶち壊せイベント、またの名を貴公子こてんぱんイベントあったじゃん?」

『あったな。どっちの言い草がえぐいかはさておき』

「天才剣士の女性関係のイベントの対象が聖女だったんだ」

『ふむ?』

「今帝国では二人のユーラシアというのが話題だそうで」

『これは撹乱話法の方だな? 話が飛んでるわけじゃなくて』

「何なの、撹乱話法って?」


 サイナスさんたら、あたしの語り口に格好いい名前つけちゃって。

 気に入ったから掘り下げたいけど、こーゆーのはさりげない方がいい気はするな。

 話が飛ぶ方は何話法なのかは知りたいけど。


「その二人というのが勇士ユーラシアとユーラシアの聖女なんだって」

『ユーラシアの聖女?』

「あたしのことだと思うよねえ?」

『思わないよ。君は当然勇士の方だろ』

「あたしなら当然聖女ユーラシアか。ユーラシアの聖女ってのは、ちょっと違和感あるわ」

『……』


 あれっ? 同意が得られないのは何故だ?

 あたしは認定聖女なのに。


「もう一人の聖女はキャロって言うんだけど、汎神教ユーラシア教会の修道女でさ。生まれつき聖女のスキルって呼ばれてる高効率の全体回復魔法『リフレッシュ』を使えるんだそーな。ケガをしてる人なんかに無料で回復魔法を提供してるんだ」

『『リフレッシュ』ってレアスキルなんだろう? なるほど、聖女らしい振舞いだね』

「認定聖女たるあたしも使えるから、『リフレッシュ』くらいじゃ驚いたりはしないんだ。ところがキャロは多い日は一〇〇人以上も癒してるそうで」

『ふうん。かなりのマジックポイント持ちなんだな』

「そんなわけないじゃん。ただのレベル一の人なんだから」

『何らかの手段でマジックポイントを回復しているということか? ……おぞましい想像が口の中を苦く侵食してきたような気がする』


 サイナスさん正解。


「お布施でもらった魔法の葉を食べてマジックポイントを回復、『リフレッシュ』をかけ続けるんだって」

『頭の芯が痺れるような魔法の葉の不味さを知っていてなお、無料奉仕のために摂取するのか? 考えられない……』

「魔法の葉を常食って話だったぞ? 聖女は味覚が破壊されてないと務まらんのかしらん?」


 破壊されてないわ。

 あまりの不味さにキャロ気絶してたわ。


「あたしが本物の聖女って言ったわけがわかるでしょ?」

『わかる。想像を絶する奉仕の過酷さ。まさに聖女』

「聖女認定試験に魔法の葉を食べる実技がなくてよかったよ。マジで震えがくる」

『聖女免許の更新のたびに魔法の葉を食べなきゃいけないとかな』

「嫌なこと言うなあ」


 魔法の葉を食べなきゃいけない義務がもしあるなら、あたしは聖女じゃなくていい。


『天才剣士との関係性がわからないんだが』

「天才剣士が伯爵家の跡取りだってことは言ったっけ? 聖女キャロはその伯爵領の出身で、天才剣士はキャロのことを昔から知ってたんだ。で、聖女キャロの暴挙とゆーか死に急ぎとゆーか。自らを鞭打つにもほどがある生き方を心配して、あたしに相談してきたの」

『君の異常な説得力に賭けたということだな?』

「あれ、そーゆー意図だったのかな?」


 考えてみりゃサイナスさんの言う通りだ。

 あたしにキャロが無茶しないよう説得してくれってことだったのか。

 全然気がつかなかったぞ?


『ということは、力技で解決したんだな?』

「最近サイナスさんが、乙女心を察してくれる気がする」

『力技と乙女心のコラボレーション』


 アハハと笑い合う。


「要は聖女キャロの最大マジックポイントが大きくなれば、好きなだけ『リフレッシュ』かけられるわけじゃん?」

『つまりレベル上げしたということか』

「うん。あたしの十八番にして至高の御業。聖女の振る舞い」

『ユーラシアは面倒見がいいなあ』

「あたしを崇めてくれる修道女だぞ? 放っておけないじゃん」

『ユーラシア教会は君の私物じゃないからな?』


 似たようなもんだ。

 修道士の言い分からすると、どうも地母神ユーラシアって何でもウェルカムの神様って気がする。

 きっとあたしの気に入る、あたしを気に入ってくれる神様だと思う。


「今日ずっとキャロの意識なかったんだ。気絶したまま魔境行ってレベル上げ」

『起きたらビックリするだろう?』

「女神ユーラシア様の奇跡だわって感激しちゃう。実際は聖女ユーラシア様のパワープレイ」

『ハハッ、面白いな』

「キャロとはまたいつか会うだろうから、楽しみにしとくんだ」


 キャロの固有能力『灯火』については詳しく知っておきたい気がする。

 マルーのばっちゃんに聞いてくるかな。


『アレク達と赤眼族の集落へ行ったんだって?』

「赤眼族の使ってる魔物除けが、あたしの知ってる魔物除けで一番効果が高いんだよね。南部まで街道を通そうと思うと必要になる気がして」

『必要か? 今黒の民が販売してる魔物除けは、以前のものよりかなり効果が増強されてるんだろう?』

「うーん、西域でかなり戦力になってるとは思うんだ。バルバロスさんが買っていったくらいだから。でも柵があるところに使うのと道に適用するのとは違うじゃん?」


 新型の魔物除けの札にどれほどの効き目があるのか、一度確認しなくちゃいけないな。

 近い内にクルクルへ行くか。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日は施政館。

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