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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1435/2453

第1435話:赤眼族の魔物除け

 フイィィーンシュパパパッ。


「ここは?」

「赤眼族の集落の近くにある不思議な建物だよ」


 うちの子達とアレクケスハヤテ、黒の民の呪術師グロちゃんを連れて、『焼野原』の転送先にやって来た。

 まあ建物の中だから変だと思うんだろうけど。

 恐る恐る周りを見渡すグロちゃん。

 アレクケスハヤテもキョロキョロしている。


「で、ハヤテは知ってるけど、ここに吊り下げてあるのが海の王国の『破魔の銅鑼』だよ。鳴らすとすげえいい音が出まーす。悪魔は嫌がるけどね」

「姐さん、鳴らしていいか?」

「おっ、ケスやる気だね? もちろん構わないよ。とゆーか、ここに来た時はガンガン鳴らすのがルール」

「遠慮なくいくぜっ!」

「ボクも鳴らしたい」

「わかってるって。順番にね」

「グオングオングオングオングオングオーン!」×八。


 お約束通り全員が鳴らすわけだ。

 うんうん、感動するいい音でしょ?

 グロちゃんったら呪術師らしくない澄んだ目してるやん。


「素晴らしい……」

「気に入ったんだったらハヤテに買ってきてもらうといいよ」


 ハヤテは嬉しそうな顔してるけど、あたしとしてはこの銅鑼あんまり普及して欲しくないんだよな。

 鳴らすとヴィルが嫌がるだろうから。


「行こうか」


 外に出る。


「ふうん。周囲の様子にそぐわない、奇妙な建物だね」

「縞模様だもんなあ。これ外から中には入れないみたいなんだ」

「あっ、本当だ。見えない抵抗があって痺れる感じがする」

「魔道的なカラクリだな」


 考えてみりゃこれも仕組みを解明すれば魔物除けに使えるのかも?

 でも大掛かりな装置だしな。

 どこに魔道の仕掛けの本体があるのかすらわからん。

 床下かな?


「ま、いいや。クララ、お願い」

「はい、フライ!」


 皆とコブタマンとともにびゅーんと赤眼族の集落へ。


          ◇


「おっ、精霊使いの人。今日は大勢だな」

「こんにちはー。お肉の素をお土産に持ってきたから、解体してね」

「いつもすまねえな。しかしお肉の素って」


 魔物の死体とか亡骸とかってゆーと食欲が減退するから、うまい言い方が欲しいな。

 お肉の素が却下されるなら、お肉の原形とか?

 あ、村長とミサイル来た。

 村長とその息子であることを説明っと。


「いらっしゃい」

「よく来た! 今日は多いな」

「例の碧長石の魔物除けあるじゃん? メッチャ効果高いからさ。あれの謎をぜひとも解き明かしたいんだよ。応用できれば、広い土地を魔物の心配することなく使えるからね」

「調査のための人材を連れてきたんだな?」

「そゆこと。あたしの弟分のアレクと呪術師グロちゃんだよ。ケイオスワードを理解してるこの二人でわかんなきゃ諦める。こっちはアレクとつるんでるケスと精霊ハヤテだよ。よろしくね」


 よしよし、いいだろう。

 将来は赤眼族とも商売ができるといいな。

 村人が言う。


「村長、せっかくの土産だ。バラしちまおうぜ」

「そうだな。魔物除けについては何も手助けできないが、よかったかな?」

「ありがとう。勝手に見させてもらうだけだから大丈夫だよ」


 村人達が出てきてコブタマンを肉にしている間に、正門の魔物除けのところへ。

 グロちゃんが驚く。


「……これはすごい魔物除けだな」

「でしょ? 魔境クラスのすげー強い魔物でも半径二〇ヒロ以内には近付こうとしないと思う。並みの魔物じゃメッチャ距離あっても嫌がるんじゃないかな」


 魔物とは邪気のある生き物や霊のことだ。

 魔物除けは魔物を寄せにくくするものだが、無論普通の動物や虫などには効果がない。

 魔物の多い地域のドーラのノーマル人集落では、何らかの魔物除けがほぼ必須ではある。

 これは逆に魔物の家畜化が難しい原因の一つにもなっている。


「……この文様、ケイオスワードで組み立ててあることには間違いなさそうだが、ゴテゴテしていて読み取れないな」

「ボクわかりますので、書き下しますね」


 グロちゃんが目を瞬く。


「かなりの古典装飾文字だぞ? 随分古い資料を研究してるんだな」

「たまたまそういう資料を見る機会があったんですよ」

「ふふん、あたしの弟分だからね」

「どうして君が得意げなんだ!」

「あたしが育てたから……ウソだけど」


 胡散臭いものを見る目に囲まれると押せないわ。


「でもボクは呪術や魔物除けには詳しくないですから……こんなところです」


 サラサラと簡単にした文様をグロちゃんに見せるアレク。

 あれ、呪術のプロであるグロちゃんでもわかんないのか?

 首傾げてるじゃないか。


「かなり難しいの?」

「というか、未知の増幅式が基になっている。このベースになっている石は何なんだ?」

「これ碧長石っていうんだ。碧長石だと魔物除けの効果が高いってのは赤眼族に伝承されているようなんだけど、今はケイオスワードの知識も失っちゃってるから、詳しいことが丸っきりわかんないの」

「ふうむ、なるほど……」


 グロちゃんもアレクも難しい顔だ。

 何事も簡単じゃないんだなあ。

 グロちゃんが結論を出す。


「……石自体に魔物除け効果を発揮させる素質があるらしいな」

「じゃあ碧長石の特性なんだ?」


 何かのきっかけで碧長石は魔物除け効果を発揮できる?

 特性に気付いた誰かが呪術で効果を生じさせ、増幅させる方法を考えた?


「これは石の効果に頼った儀式魔術の一種だ。しかし俺にはどの石を使ったらいいかの知識はないから、術式についてしかわからん」

「アレクは碧長石が魔物除けの効果を持ってるなんて知ってた? 代わりになる石に心当たりある?」

「いや、全然」


 片っ端から文様彫りつけてみる手はあるけど、石なんてどんだけ種類があるかわからん。

 ドワーフじゃあるまいし、さすがに石彫刻マニアみたいなことはやっとれん。


「……同じ種類の石なら、同じ文様を彫りつければ魔物除けになるんだよね?」

「もちろんだ」

「大きさは重要?」

「効果は石と文様の大きさに比例だな」

「わかった、ありがとう」


 碧長石を手に入れないとこの魔除けは使い物にならないようだ。

 眺めてたってこれ以上の進展はなさそう。


「ユー姉、どうするの?」

「碧長石が必要だな。あたしが冒険者になったばっかりの時、アトムと出会ったダンジョンに碧長石が使われてたんだ。近い内にそこ行ってみるよ」


 今のところ他には手掛かりがない。


「よし、帰ろう。今日の報酬はたっぷりのお肉だぞー」

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