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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1431/2453

第1431話:お姫様抱っこをして魔境を往く二人目の男

 フイィィーンシュパパパッ。

 うちの子達の他、色男騎士ライナー君と気を失ったままの修道女キャロを連れて、この世の楽園、魔境にやって来た。


「オニオンさん、こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「いらっしゃいませ。そちらは?」

「帝国の騎士ライナー君とユーラシアの聖女だよ」

「これはどうも。魔境ガイドのペコロスと申します」

「ライナーです。こんな状態なので握手は失礼します」


 お姫様抱っこしてるもんな。


「ところでユーラシアの聖女、とは何でしょう?」

「汎神教ユーラシア教会の修道女キャロラインって言うんだ。キャロは生まれつき『リフレッシュ』を使えるんだって」

「ほう、生まれつきですか。大変に珍しいケースですね」


 興味を惹かれたらしいオニオンさん。

 スキルのことが好きな人だなあ。


「今帝都で勇士ユーラシアとユーラシアの聖女とゆー、二人のユーラシアが話題だそうで」

「つまりユーラシアさんとキャロラインさんということですね?」

「あたしだって聖女がいいのに、聖女の称号をかっさらってくのはどんな子か興味があるじゃん? だから会いに行ったんだ」

「実に面白いですね」


 オニオンさんったらワクワクしてら。

 世の中の人は大体エンタメ好き。


「キャロは聖女らしく、聖堂前でケガ人なんかに『リフレッシュ』を奉仕してるの。でも低レベルじゃマジックポイントがあんまりないから、使える回数なんかたかが知れてるでしょ?」

「ははあ、了解しました。いつものやつですね」

「そうそう、いつものやつ」

「いつものやつとは何だい? 状況を掴めないんだが」


 不思議そうなライナー君。


「魔物を倒してレベルを上げれば最大マジックポイントが上がるから、『リフレッシュ』を乱発できるとゆー理屈」

「ユーラシア君の言いたいことはわかるが、キャロラインに魔物退治なんかできるはずないじゃないか」

「あたしの得意技が解決するのだ」

「ユーラシアさんは同伴レベリングのプロフェッショナルなのです」

「……つまり君のパーティーで魔物を倒し、私達はおこぼれで経験値をもらうと?」

「おこぼれって言い方はあれだけど、ライナー君のレベルも上がると思うよ。キャロを抱っこしてついて来てくれればいいから」

「危ないだろう?」


 オニオンさんがしたり顔で言う。


「ユーラシアさんなら問題ないと思われます」

「ライナー君が抱えてるなら問題ないぞ? 一応ヴィルにカバーさせるからね」

「問題ないぬよ?」

「そ、そうかい?」

「行ってくる!」

「行ってくるぬ!」

「行ってらっしゃいませ!」


 色々思うところはあるんだろうが、ライナー君は素直に従ってくれる。

 ヤマタノオロチを倒すところを見せてるからだろう。

 実績は重要だな。

 ユーラシア隊及びふよふよいい子、半信半疑の色男と眠れる聖女出撃。


          ◇


「リフレッシュ! もういくつかキャロのレベル上がってるはずだよ」

「そうだね。しかし随分と強い魔物なんじゃないか?」


 オーガを倒した後、安らぎの一コマだ。


「まあ。ライナー君の剣技があっても、一対一でオーガを倒すんだったらレベル三〇は最低必要だと思う」

「最低レベル三〇って……もし帝国本土で出現したら結構な騒ぎになるな」

「ライナー君の実力を最大限に評価してるんだぞ? 普通だったらレベル四〇あっても一人じゃ危ないわ。オーガはクリティカル持ちだからね」

「あ、ああ」


 納得いかない表情のライナー君。

 聞きたいことがあるなら吐き出しなさい。


「何故、こんなに魔物の強いところでレベル上げするんだ?」

「単純に経験値が高いからだよ。教会と新聞記者トリオには一時間で帰るって言ってあるし」

「だろうとは思ったが」

「どうせ敵にターンを渡さずに倒せるんだから、経験値の高いエリアの方がお得じゃん?」

「なるほど、道理だね」


 ライナー君はものわかりがいいなあ。


「もうちょい獲得経験値の高いところへ行くよ」


          ◇


「ライナー君は、お姫様抱っこしながら魔境を闊歩する二人目の男だよ」

「ハハッ、光栄だね」


 ザコを倒しながらドラゴン帯に近いところまで来た。


「少し身体弱めの子がいてさ。ちょっとレベル上げたら元気に動けるだろってことで、その子のパートナーの冒険者にお姫様抱っこさせてレベリング、ってゆーイベントが前にあったんだ」

「ふうん、その冒険者も勇者だね」

「でしょ? お姫様抱っこで魔境を往くってのを、伝説としてギルドで流行らそうとしたけどダメだった」

「面白半分だったのか!」

「当時は面白半分だったねえ」


 伝説は作ろうと思っちゃダメってのがわかった。


「……デカダンスだな」


 仕上げにちょうどいい。

 しかしドラゴン帯まで来ちゃってたか。


「大きい。人形系魔物だね?」

「うん。あれ倒したら目標達成だよ」

「後ろにも鳥の魔物がいるぞ?」

「グリフォンだよ。あの子は敵じゃないから平気。でもこの辺はドラゴンが出てもおかしくないところなんだ。周りを見る限り大丈夫そうだけど、警戒はしててね」

「了解だ」


 レッツファイッ!

 実りある経験からあたしの通常攻撃! やったぜウィーウィン!


「れ、レベルがわからなくなった……」

「ライナー君のレベルは三〇オーバー、キャロは二二、三だと思う。経験値を大量に獲得してレベルわかんなくなるのは、ドーラではよくあることなんだ。後で調べりゃいいよ」

「よくあることって……人形系魔物の経験値が多いことは知ってるが、簡単に倒せるものじゃないんだろう?」

「人形系に通用する武器やスキルを持ってないと倒せないな」


 人形系を倒すことについては、ドーラの方が帝国より進んでるだろう。

 御用向きの折りはドーラに御注文をどーぞ。


「よーし、エサあげようね」

「くおっ!」

「グリフォンが馴れてる……」

「大きい鳥の魔物は人形系の亡骸が好物みたいだね。グリフォンも例外じゃなくてさ。でも自分じゃ人形系の魔物なんて倒せないじゃん? あたし達におねだりしてくるんだよ。こうやって喜んでエサ食べてるグリフォンは結構可愛いでしょ?」

「可愛いぬよ?」

「ドーラの事情は常識外だな」


 ドーラの事情で片付けるライナー君も大物だな。

 しかしさすがに今日は羽毛を梳いてやるほど警戒は解けない。

 グリフォンごめんよ。


「帰ろう。ヴィル、ユーラシア教会の聖堂内にビーコン置いてくれる?」

「わかったぬ!」

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