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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1427話:うっかり公爵に杖を献上

「やっぱ盾の魔法は、衝波属性の攻撃を無効にできないんだ?」


 道々杖職人ナバルのおっちゃんと話しながら行く。

 ヴィルはおっちゃんに肩車されて御機嫌だ。

 おっちゃんのおっぱいさんショックは完全に抜けたみたい。

 美少女たるあたしが同行だからだな。


「うむ。いかなる手段によっても衝波属性のダメージを軽減することはできないと、ペペちゃんは言っていたぞ」

「うんうん。そんな気はしてたんだ。売る時気をつけないといけないな」


 全てのダメージを無効化と宣伝してしまうと、看板に偽りありになってしまう。


「ひょっとして謎経験値君対策として『ファストシールド』を買おうとしてる人がいるかもしれないな。オニオンさんに注意してもらお」

「謎経験値君とはホッパーのことだな? 魔物図鑑に載っていない跳ねる人形系」

「うん。うちのダンテがシルバークラウンって呼んでるやつ。あれマジでヤバいんだよね。対抗策がレベルを上げて防御しかない」


 デカダンス以外の人形系は先手も取れないしな?


「魔物が使う衝波属性攻撃はメッチャ厄介だな」

「衝波属性は例外とする以外ないだろう。こちらが使って一方的に有利で、敵が使った場合に対抗策があるでは公平ではない」

「まあねえ」


 有利不利で公平がどうのって、魔物相手なのに変わった考え方だな。

 

「しかし盾の魔法は、基本八属性や即死には効果があるそうだぞ」

「耐性があるってこと? 無効化するってこと?」

「無効化するそうな。特殊なステートはダメだそうだが」

「ふーん?」


 考えてた通り、盾の魔法は人形系レア魔物の防御を参考にしてるみたいだな。


「特殊なステートって何だろ?」

「私も疑問に思ったので聞いてみたのだ。例えば超絶美少女精霊使いの一掃スキル、あれは特殊ステートの一種だそうな」

「『雑魚は往ね』のこと?」


 自分よりレベルの低いザコを倒すとしか思ってなかったぞ?


「術者以下のレベルの敵に、最大ヒットポイント以上のヒットポイントを失うステートを与えるスキルらしい」

「即死と何が違うのかサッパリ。ダメージを与えるとヒットポイントを失うの違いも全く」

「安心するがいい、超絶美少女精霊使いよ。私もわからん」


 アハハと笑い合う。

 何が安心なんだか。

 まー研究者じゃなきゃ理解できない深奥みたいなもんがあるんだろ。

 『雑魚は往ね』が人形系に効くのは、特殊ステートを与えるスキルだからとだけ覚えとこ。


「そこがうっかり公爵の家だぬよ」

「近いじゃん。立派なお屋敷だなー」


 アーベントロート公爵家もそうだけど、位の高い貴族ほど皇宮から近いところにお屋敷を持つ傾向にあるみたいだな。

 門番さんに挨拶する。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「何者だ?」

「ドーラの美少女冒険者ユーラシアだよ」

「これは失礼を」


 すぐに警戒を解く門番。

 あたしのレベルを見て察したらしい。

 この前リキニウスちゃん達の船出の時に会ったお供の人達もだけど、うっかり公爵のところの使用人は皆優秀じゃない?

 おかげで人間お手玉の芸を披露し損なったぞ?


「ユーラシアではないか!」

「あっ、オードリー!」


 敷地内に入れてもらったら、いきなり飛びついてきたぞ?

 ついでにヴィルも。

 よしよし、可愛いやつらめ。


「今日はどうしたのだ?」

「あんたが歓迎されてるか、確認しに来たんだよ」

「歓迎されてるのだ! 皆優しいのだ!」


 あ、リキニウスちゃんとうっかり公爵も来た。

 庭で遊んでたらしいな。


「こんにちはー」

「ユーラシアさん、こんにちは」

「おお、そなたか」

「じっちゃんデレデレやん」


 孫が増えたみたいで嬉しいんだろうな。

 オードリーも懐いてるし。


「オードリーがどうしてるかと思ってさ。楽しそうだから安心した」

「わしとリキニウスちゃんも、オードリー王女を送りがてらラグランドに遊びに行こうかと思ってな」

「えっ、いつ?」

「船の手配がつき次第だな。一〇日後くらいが出発になるであろうか?」


 一〇日で船の都合がつくのか。

 うっかり公爵の行動は早い。

 考えずに反射で動いてるからかな?

 ラグランドは帝国憎しの地なのに、危ないとか考えないんだろーか?

 考えないんだろーな。

 一度ラグランドの様子を見に行く必要がありそう。


「あたしが転移で連れていってもいいんだぞ?」

「わらわも一度、船に乗ってみたいのじゃ!」

「船旅か。わかった。正式に日程が決まったら教えてよ。向こうにも知らせなきゃいけないからね」

「うむ、了解したぞ」

「ところでセグさんは?」

「爺はぎっくり腰で倒れたのだ。安静にしておる」

「あちゃー。お大事に」


 年齢も考えんと張り切り過ぎたんだろうな。

 オードリーが楽しそうだから仕方ないか。


「そちらの御仁は、ドーラの杖職人ではないか」

「公爵様の御記憶に留めていただいていたとは、恐悦至極に存じまする」

「ナバルさんがじっちゃんに杖を献上したいんだって」

「ほう、楽しみだ。先日の魔道杖は実に優雅であったからな」


 ナバルさんがステッキを手渡す。


「五日前に拝見した公爵様のステッキよりも、一ツカ弱ほど長くしてあります」

「うむ、手に馴染むぞ」


 おおう、結構な紳士に見えるぞ?

 


「特殊な杖なんだ。『ファストシールド』って唱えてみて?」

「ファストシールド!」


 術が発動したのを確認して蹴り飛ばす。

 一〇ヒロ以上飛んだのを、門番や警備員が青い顔して見てるけど、すぐさま起きて怒り出すうっかり公爵。


「何をするかっ!」

「何ともないでしょ?」

「うむ、えっ?」

「効果時間は短いけど物理だろーが魔法だろーが、ほぼ全てのダメージをカットするスキルが付与されてるんだ。ちょっと前にドーラで開発されたやつ。じっちゃんの身を守ってくれる貴重な道具だから、大事にしてね」


 大喜びのうっかり公爵。


「礼をしたいが、何が良いか?」

「いえいえ、結構にございます」

「しかし、それでは……」

「ナバルさんの杖の出来の良さが、まだ帝国本土では浸透してないんだよ。宣伝してくれると嬉しいな」

「造作もないことだ! 任せよ!」


 盛大にすっ転んだところで盾の魔法が発動して無傷、なんて場面があるといいなあ。

 でもタイミングよく『ファストシールド』を使えるならうっかり公爵じゃない気もする。


「今日は帰るね」

「また来るのじゃ!」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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