第1425話:統一通貨単位の思想
「ごちそーさまっ! もー入んない!」
「入んないぬ!」
でっかいトナカイ肉がおいしい。
お肉は大きいとそれだけで食欲をそそるものなのだ。
砂糖がけのパンもイケるなあ。
ん? ガリアみたいな北国で砂糖?
「砂糖は輸入してるんだ?」
「いや、国内で生産しているぞ」
「ふーん? サトウキビって寒いところで育てるの厳しいんじゃない?」
「サトウキビではないのだ」
ビートというガリアで多く栽培されている野菜があり、その一部品種の根から砂糖が取れるそうな。
知らんことはあるもんだ。
「寒い国でも甘味を得るために努力してるんだなあ。勉強になったよ。ありがとう!」
「ドーラでは当然サトウキビなんだろう?」
「うん。でもそんなに一生懸命作られてるわけじゃないんだよね」
「不思議に思えるな。何故だ?」
「腹に溜まるものが優先されちゃうってことが、第一の要因かな」
「ドーラの農地は広いのだろう? サトウキビを栽培する余地は十分にあるように思えるが」
外国からは農業に関していい国に思われてるんだなあ。
「農地は広くしたいねえ。でも魔物も多いから、広くできない場所も多いんだ」
「ふーむ。ドーラにとって魔物は脅威か」
「おいしい魔物もいるから、悪いことばかりじゃないけどね。ドーラでお肉は、骨皮付きでその辺を歩いてるものと言われてるの」
「ハハハ!」
ウケた。
気分がいいなあ。
「独立後のドーラは、当然農業メインなのだな?」
「基本は農業だね。帝国から移民が一杯来るから、とにかく今年は餓死者出さないように全力だよ」
「む、餓死者を心配せねばならんほどか?」
「独立もいきなりだったじゃん? 去年の段階で大量移民が来る未来なんか見えてないから、使える耕地も余計な穀物の種もないんだよね。ドーラは確かに土地は肥えてるんだけど、水に恵まれてるとは言えなくてさ。今年になってから水路引いたりしてるの。何とかイモ作って乗り切れば、来年はノウハウがあるから大丈夫かな」
「どこでも苦労はあるのだな」
「でも帝国へ輸出してバカ売れしてるものもあるんだよ。王様にもあげるね」
ナップザックから画集と札取りゲームを取り出す。
「おおお? 表紙はその方だな?」
「うん。いいでしょ? ドーラの美女美少女を集めた画集だよ」
ハハッ、わかっちゃいたけど王様ガン見ですがな。
「……この『サクラ』というのは?」
「おっぱいさん? お目が高いね。ドーラ一の美人だよ。でも残念ながらこの前婚約しちゃった」
「こちらの札取りゲームというのは何だ?」
「識字率を高める試みで作ったんだ」
「識字率?」
絵で言葉を連想させ、字を当てはめるものだと説明。
「予も教育の重要性は感じていた。こんな手があったか……」
「識字率が高まれば紙が売れるよ。森林国のガリアにはいいことだと思うけど」
「うむ! 紙は産業として有力だ」
ガストーネ森林大臣も目を輝かせている。
木材を生産して残った部分で紙を作れるならばムダがないのだ。
「興味深い話だったぞ、美少女冒険者ユーラシアよ」
「そりゃよかった。あたしもガリアのことは全然知らなかったから、面白かったよ」
「昨日の霜の巨人退治の謝礼の件なのだが」
「ドロップアイテムだけで儲かったし欲しいものは自分で手に入れるからいらないって言ってるのにでもどうしてくれるって言うなら気持ちに鑑みてもらうよありがとう」
「聞いたことのないような早口だったな」
早口にもなろうというもの。
何くれるつもりだろ?
あたしはくれるものはもらう主義なのだ。
ワクワク。
「我が国の武勲における最高勲章、ブレイブハート勲章だ!」
「……ありがとう」
「どうした、不満か?」
勲章とゆーのは国の認めた権威だから、くれるのは嬉しいのだが。
不満とゆーか何とゆーか。
え? ヴィルが説明するの?
「御主人は先月帝国で特級勇士勲章をもらったんだぬ。モテなくなりそうだから特級聖女勲章にしてくれと言ったんだぬが、通らなかったんだぬ」
「ピュアセイント勲章を新設し、授与しようではないか」
「あっ、王様ありがとう! わかってるなー」
これであたしはガリア王国公認の聖女だ。
やったぜ!
「では勲章が完成し次第授与しよう。副賞の一〇万ギルは渡しておくぞ。また時々こちらへ来てくれ」
「クエストをいくつかこっちでこなさなきゃいけないみたいだから、しょっちゅう来ると思うよ。それはそれとして一〇万ギル?」
知らん通貨単位だ。
ガリアは独自通貨だったのか。
「ドーラは帝国ゴールドを使用しているのだったか?」
「うん。独立後も継続してゴールド使ってる。貿易するのに都合いいし」
とゆーかドーラが独自通貨始めたって信用もないだろうし。
余計な機関を作ってる余裕もない。
ラグランド貿易も開始するんだから、いよいよゴールド以外の通貨なんて使っていられない。
「ギルは我が国以外でも北方諸国で広く用いられているのだぞ?」
「通貨のことはよく知らなかったよ」
「大雑把に言うと、大体三ギルが一ゴールドくらいのレートで通用しているのだ」
ゼムリヤとかで帝国とも商売してるから、交換レートもあるんだな。
「でも商売するのに通貨単位が違うのは面倒だな。小さい業者が入りづらくなっちゃうし、贋金が出やすくなっちゃう」
警戒した表情になる王様。
「ゴールドに統一せいということか? 認められんぞ」
「どっかの国の通貨に統一するのは問題があるな。各国から代表出して独立した組織を作ってさ。どこの国でも通用する通貨を発行したいねえ。ついでにその他の長さや重さの単位も統一すると便利だと思う」
「商売の都合か」
「こっちのものが簡単に売れて、向こうのものを簡単に買えることは嬉しいことだよ。実現は遠いかもしれないけど、王様も統一通貨単位の考えは持っててよ」
「うむ」
さて、そろそろ帰るべか。
「転送先が王宮になってるんだよね。今度来る時は王宮でいいのかな?」
「構わんぞ。午後三時以降なら、大概予は王宮におる」
「午後三時以降ね。りょーかいでーす。また遊びに行くよ。じゃーねー」
「バイバイぬ!」
転移の玉を起動し帰宅する。
『クエストを完了しました。ボーナス経験値が付与されます』
おっと、これでクエストが終わりか。
セットだから次の『地図の石板』はまだ来ないだろうけど、一応確認は必要か?




