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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1420話:眠さが限界

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 毎晩恒例のヴィル通信だ。

 今日もう眠いんだけど。


『声が眠そうだな。手早く話してくれ』

「やるなあ。美少女が眠いの感知した?」

『何となく。でも君美少女って言いたいだけだろ』

「目一杯主張したいポイントだね。ところでサイナスさんって、あたしと話してる時以外に鋭さを発揮することってあるの?」

『ないかもしれない』

「能力を有効に使い過ぎてて笑える」


 ってのはともかく。


「今日超展開になって疲れちゃった。マジで寝落ちしちゃいそうだから、用件あったら先に聞いておくよ」

『明日は輸送隊の進発日だ。ただしアレクもケスも非番だ』

「ふむふむ、了解」


 冒険者活動するのかスキルスクロール生産の方か。

 ハヤテから海の王国の話聞いて、何か行動を起こすかもしれないな。

 アレクケスハヤテがどう動いてるかは把握しておきたいとは思う。


『青の民ディオゲネス族長代理から。帝都からセレシア族長のファッションの追加デザインの発注が届いたそうだ。もうできてるはずだから、先方の帝都の店に届けてくれないかと』

「セレシアさんにも帝都『ケーニッヒバウム』のフーゴーさんにも、最近会ってなかったな。うっかりしてた」


 うっかり公爵に付き合ってたせいだと、責任を押しつけてみる。

 しかし販売できるくらいに商品を揃えるのは、かなり時間かかったはずだ。

 この前『ケーニッヒバウム』行った時、何も言われなかったしな。

 とゆーことは販売した途端爆売れってことか。

 貿易商経由で連絡が入ったんだと、結構タイムラグありそう。

 明日午後セレシアさんとこ行って、デザインを『ケーニッヒバウム』に届けないと。


『こちらからの連絡は終わりだよ。ユーラシア劇場超展開の巻を聞かせてくれ』

「サイナスさんが楽しみにしてるのが、ありありと感じられるよ」

『まずラグランドの交渉だったんだろう?』

「急かすなあ」

『君が寝ない内に早く』

「交渉自体はすんなり終了だよ。面と向かえば、プリンスルキウスのレベル五〇『威厳』が効きまくるじゃん? ラグランド側の人がビビってたわ。でもまあ双方が考えてる妥協点が近いから、全然ごたつくことなかったな」


 ある程度ラグランドに譲ってやる方がメリットあるってことを、帝国サイドが理解していたし。


『超展開になりそうにないんだが?』

「交渉後、三人の殿下がラグランド過激派の魔道士に襲われたんだ。リキニウスちゃんとルーネをかばったプリンスがケガした」

『ほう、ちょっと面白くなってきたな。しかし君もいたんだろう?』


 あたしの護衛能力を評価してくれるのは嬉しいけど。


「敵もさる者だった。護衛対象が分散したとこ狙われたんだよなー。あたしはラグランド総督の方についてたんだ。殿下達の方はプリンスとヴィルに任せてた」

『えっ? ルキウス皇子を戦力として数えてたのか?』

「そりゃあの場であたしとヴィルに次いでレベル高いのはプリンスだし。パワーカード起動してたらほぼ無傷だったわ。プリンスも未熟だから」

『では大したケガではない?』

「風魔法でちょこっと切られただけだよ。かすり傷」


 あたしが『リフレッシュ』したから、お亡くなりになったのはスーツだけだわ。


「で、リキニウスちゃんとオードリーが婚約」

『えっ?』

「二人とも一〇歳以下なのになー。先越されちゃったよ。皇族と王族はませてるから」

『ませてるのはともかく……なるほど、強圧支配はデメリットが大きいと見たのか。今日の交渉を機に、ラグランド支配のあり方を変えるということだな? 王制を復活させ、帝国自治領に移行する?』


 サイナスさんも支配とか政治の話が好きだよなー。


「かどうかはまだわからないね。でも帝国保護下のラグランド王国が自然かな。主席執政官閣下もプリンスルキウスもこの婚約の利点にすぐ気付いて、あたしにうっかり公爵説得しろって目向けてくんの」

『説得もユーラシアのお仕事か?』

「うっかり公爵の説得なんてドラゴン倒すよりも簡単だけれども」

『一般人には響かない表現なんだが』


 アハハと笑い合う。


「オードリーがうっかり公爵を気に入ったみたいなんだよね。オードリーはラグランドの王家の生き残りであるけれども、要は孤児じゃん? 弱みを見せないだけで、愛情に飢えてる子なんだよね。一方でうっかり公爵は、愛情だけは溢れてる人だから」

『婚約はピッタリだったと』

「うん。オードリーは何日か帝都の公爵邸でお世話になるって」

『いい話だな。しかし超展開というには物足りないんだが』


 ふっふっふっ、超展開はここからなんだってばよ。


「ラグランドクエストはそこで終了。すぐに『魔物退治:大至急』ってクエストが出ちゃった」

『大至急か。魔物退治で、しかもユーラシアほどの高レベル者に回されるクエストとなると?』

「現地で霜の巨人って呼ばれてる、神話級の魔物を倒せってやつだった。レア素材『巨人樫の幹』三つと、未知の魔宝玉をドロップしたんだ。たしかなまんぞく」


 未知の魔宝玉は売れはしないけど、重要な交渉事で使えるかもしれないしな。


『現地はどこだったんだ?』

「ガリア。ゼムリヤの海を渡って北隣の国だよ」

『ええ? ガリア王と知り合いになっちゃったりするのか?』

「なっちゃった。若くてえらそーな人だった」

『なるほど、超展開だ』

「結構なイベントの割にはあんまり驚かれなかったなあ。大きく振りかぶり過ぎたか」

『あんまり淡々と話すから、驚いちゃいけないような気になる』

「おおう、ちょっと失敗した」


 退治自体はいつものやり方で、ヤマタノオロチの時みたいなお楽しみ要素がなかったんだよ。


「イシュトバーンさん家で夕食の予定が入ってたから、魔物退治してすぐ帰ってきちゃったんだ。明日もう一度ガリアへ行くつもり」

『最近外国のクエスト多くないか?』

「世界を征服しろっていう神様の思し召しかもしれないね」

『本気だか冗談だかわからないところがえぐい』


 ヴィルがあたしのことを、どんな時でも一〇〇%冗談ということはないって言ってた。

 まことに言い得て妙だ。


「サイナスさん、おやすみなさい。眠さが限界」

『ああ、御苦労だったね。おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 明日もガリアだ、ぐう。

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