第1417話:まったくガリア人は失礼だな
「ところでさっきの会議は、霜の巨人の対策なんでしょ? どうしようと思ってたの?」
「どうもこうも。軍をぶつけるしかないだろう、普通」
「ええ? 軍隊じゃ現地に行くまでメッチャ時間かかるじゃん。被害が大きくなっちゃうんじゃないの?」
「じゃあどうすればいいのだ!」
「ドーラに依頼を出してよ。ドーラは魔物が多い関係で、レベルの高い冒険者が多いからね」
「ドーラは遠いだろうが! 依頼が届くまでに被害が甚大になってしまうわ!」
まあとっととやっつけたいのに、ドーラに依頼を出せはわけわからんだろうが。
「んー北の方は人住んでないんでしょ? 北から魔物を挑発しておびき寄せ、時間稼ぎすることはできるんじゃないの? 相手が巨人なら」
「む? ……参考になる意見だな。可能かもしれぬ」
腑に落ちたような顔になるガリアの三人。
滅多に現れないような魔物は、存在するための魔力条件も厳しいと思うよ。
消滅しても依頼が間に合ってもオーケー。
ガリアはあまり人が住んでない地区が多いようだから、時間稼ぎが有効だと思うのだ。
あたし達は魔物を倒すのが商売だけれども、倒すばかりが目的を達成する手段ではない。
「ドラゴンなんかだと素早いから、挑発すると食べられちゃうけどね。ガリアも強い魔物が湧くことがあるんだ?」
森林大臣が答えてくれる。
「フェンリルなどの魔獣か、もしくは巨人の類が稀に出現しますな。数年に一度の割合です」
「ふーん、それくらいの間隔で魔力の濃いところができちゃうのかも」
「霜の巨人が現れたのは、歴史上初めてだ」
憮然とする王様。
神話級だもんな。
面白くはないだろうけど。
「……見えてきましたぞ」
「どこだ」
「進行方向やや右、開けたところに青く立っているあれです」
「ふむ、予も確認したぞ」
森じゃなくて平原だな。
少し移動したのか。
森よりも戦いやすいが、集落に近いな。
しかし青白いあの巨人は?
「あっ、平気だ。勝てる勝てる!」
「何、本当か?」
「うん、任せて」
以前バアルが宝箱に仕掛けてたやつだ。
クララの見立てによると、ダイダラボッチの上級近縁種ってことだった。
今のあたしはあの頃よりもずっとレベル高いし、問題はなさそう。
「ドロップアイテムがあったらもらっていいかな?」
「えっ? 構わんが……」
「やたっ! 王様ありがとう!」
レア素材『巨人樫の幹』を複数落としていくのは確定なんだよな。
レアドロップも狙ってみよう……あれ、何故ガリアの三人は変な顔をしているのだ?
「……ドロップアイテムの心配なぞ、倒してからすればよかろう?」
「ガリアの習慣ではあとなの? 取り分で揉めない?」
「そういうことではないんだが」
どういうことだったろ?
ま、いいや。
フワリと着陸。
「この辺で待っててね。行ってくる!」
さーどうやって片付けてくれよう。
「姐御、どうしやす?」
「まず、欲張ってみようか。パワーカードの編成は通常。ダンテは『豊穣祈念』で、アトムとクララは防御。あたしの『雑魚は往ね』でいってみよう。倒せなかったらクララは『煙玉』使ってね。一旦逃げて仕切り直し。いいかな?」
「「「了解!」」」
『雑魚は往ね』が効かないなら、最初にウィッカーマンを倒したパワーカード編成にし、全力でやっつければいいのだ。
ドロップの確率は減るけど。
「行くぞお!」
レッツファイッ!
ダンテの豊穣祈念! 霜の巨人のフルスイングぶん回し! 全員がダメージを受ける。しかしあたし達のレベルは高いから全然大丈夫だ。そしてあたしの……。
「雑魚は往ねっ!」
一瞬棒立ちになった巨人が、生き物でない像であるかのように仰向けに倒れた。
ウィーウィン!
駆け寄るガリアの三人。
「おお、やったか!」
「い、一撃?」
「完全に息の根は止まっていますな。お見事!」
「あたし、自分よりレベルの低い魔物は一撃で倒せるスキル持ってるんだ。ボス敵には効かないけど、大概の魔物はイケるよ」
「む? その方、レベルいくつなのだ?」
「正確にはわかんない。一三五以上ではあるよ」
「「「一三五以上?」」」
「あたしはレベル上限が一五〇になる固有能力持ちなんだ。どうでもいいことより……」
ドロップ品はと。
「『巨人樫の幹』三つと、見たことない魔宝玉か。大満足です」
瞬くようにキラキラ鮮やかな青白の珠だ。
クララも知らないようだから、未知の魔宝玉っぽい。
イシュトバーンさんに見せてみよ。
いいお土産ができてよかったなー。
「亡骸はこのままにしといていいかな?」
「うむ、後日部隊を派遣して焼却しよう」
「じゃ、帰ろうか。一旦あたしん家経由した方が早いな」
新しい転移の玉を起動し、ドーラのホームへ。
◇
フイィィーンシュパパパッ。
「ただいまー」
先ほどの会議室へ戻ってきた。
おお? 皆緊張してんじゃん。
「王よ、首尾はいかに?」
「うむ、ドーラの美少女冒険者ユーラシアの見事な腕によって、霜の巨人は打ち倒された!」
「「「「「「「「おおー!」」」」」」」」
居並ぶ高官の皆が皆、安堵の表情を見せる。
喜んでもらえると、あたしも依頼をこなしたなーって充実感があるわ。
あれ、何王様泣いてるのよ?
そーゆーキャラだったの?
「あ、あの霜の巨人は、予の治世に不満を持つ天が使わした罰かと思ったのだ。これまでに出現したことのない、神話上の魔物など……」
「罰で魔物が現れるなんてことがあるわけないだろ。単なる偶然、単なる魔物だぞ? 単なる魔物ではなかったわ。結構儲かる魔物だわ」
「うむ、うむ……」
皆もらい泣きしてんじゃん。
「じゃ、あたし達帰るね」
「待て!」
「まだ何か用あった? 今日は御飯食べに行く約束してるから、急ぎたいんだけど?」
「ご、御飯……多大なる功績に対し、礼物を進呈したいのだが」
「え? いいよ。ドロップアイテムもらってるし。でも感謝を形にしたいとゆーなら、いただくのはやぶさかでないよ」
「欲しいものはあるか?」
「おっぱいのボリューム」
爆笑する場面ちゃうわ。
まったくガリア人は失礼だな。
王様が言う。
「明日、こちらへ来られるか? ゆっくり話をしたい」
「時間あるから大丈夫だよ。午前中に来るね」
「うむ。待っておるぞ、美少女冒険者ユーラシアよ」
「じゃねー」
転移の玉を起動して帰宅する。
クエスト終了にならないな。
まだ何かあるらしい。




