第1416話:霜の巨人
フイィィーンシュパパパッ。
急いで新しいクエスト『魔物退治:大至急』の転送先にやって来た。
が?
「えーと、こんにちは?」
「何やつだ!」
「何って言われても、ドーラの美少女精霊使いだよ。よろしくね」
予想外の場所だ。
デカい建物の会議室?
いや、問題の魔物をどうするかの緊急会議中なんだろーな。
こういう転送の仕方はマジで勘弁して欲しい。
えらそーな人達が一斉にこっち見てくるんだけど。
いやん。
「あっ、ユーラシア殿?」
「えっ?」
あたしを知ってる人がいる?
あの細い目の中年男性は……。
「コージモ外務大臣?」
以前ゼムリヤで輸出入に関する話し合いがあった時、ガリア王国の代表だった人だ。
てことは、ここはガリアか。
若いけど一番えらそーな人、王様かな? が大声で言う。
「コージモ、説明せよ!」
「先日カル帝国でヤマタノオロチが出現した際、それを見事退治したというドーラ人です。世界を旅して回る、伝説の『アトラスの冒険者』だという話です。私はゼムリヤで、メルヒオール辺境侯爵に彼女を紹介されました」
「ヤマタノオロチ? 神話レベルの魔物ではないか! 退治したなどあり得ぬ!」
「言うなあ」
「か弱く可憐な美少女ではないか!」
「王様は本質を掴んでるなあ」
会議の参加者が一斉に首捻ってるんだけど?
あたしもいきなり放り込まれたから、会議の状況がわからん。
ちょっと様子を見た方がいいかしらん?
一人の軍人が挙手する。
「陛下、そのユーラシアなる少女に協力を要請すべきです」
「何故だ、トリスターノ!」
「それがしヤマタノオロチ退治の真偽は存じませぬが、彼女が未だかつて見たことのないほど高レベルの者であることはわかります。大いに力になってくれるかと愚考いたします」
大きく頷く王様。
いや、王様もあたしのレベルくらいわかりそうだけど。
他の人を納得させるためにこう言ってるのかな?
ともかくあたしが手伝う道筋はできた。
「その方、協力してくれるか?」
「もちろん。でもえーと、何すればいいのかな? 状況がわかんないんだ」
「ふむ、美少女冒険者ユーラシアよ。その方はどういう理由でここに来た?」
『アトラスの冒険者』で大至急クエストが発生。
取るものもとりあえずどうのこうの。
「……ってことなんだ。大至急で魔物だから急がないととは思ったんだけど、転送先がガリアとは思わなかった」
ただ来たことない外国に繋がったのは嬉しい。
「解説がまったく足りてないではないか。存外『アトラスの冒険者』とは不親切だな」
「そーなんだよ。強い魔物が出ちゃって何とかしろってことなんだろうけど、あとはサッパリ」
「霜の巨人が現れたのだ」
「霜の巨人?」
ガリアの伝承にある、圧倒的な暴威を振るう巨人だそうな。
クララが首振ってるから、『魔物図説一覧』には載ってない魔物だ。
察するにヤマタノオロチと同じ、神話級の魔物か。
しかし名前から察するに巨人族だから、クリティカル持ちでヒドラみたいな明らかな弱点はないと思われる。
かなり厄介なやつと見た。
「伝承にある記述と一致しているというだけで、正確な記録はない」
「ふーん。じゃ、倒しに行こうか」
「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」
何皆驚いてるんだよ。
大至急のクエストだぞ?
のんびり構えてちゃいけないんじゃないの?
「退治ってクエストだから、うちのパーティーの役割は倒すことだと思ってるよ。他に面倒な事情とかあるの? 神話上の存在だから倒しちゃいけませんとか?」
「い、いや。そんなことはないが」
「じゃあ、とっととやっつけちゃった方が被害小さいんじゃない?」
「待たれよ!」
先ほどのトリスターノとかいう軍人のおっちゃんだ。
「簡単に言うが、倒せるのか?」
「知らない魔物だからわかんないな。でも見れば大体の強さは把握できるよ。現地に行ってみて倒せるものなら倒しちゃうし、ムリならその時考えればいいじゃん」
「むう、実にもっともなことだな」
もっともダンテの『デトネートストライク』で倒せない巨人なんて想像できないけどな?
いや、神話級魔物のドロップアイテムが何か知りたいから、『デトネートストライク』なんか使わせないけれども。
王様が言う。
「ユーラシアのパーティーを伴い現地まで向かう。案内できる者は誰だ?」
「私が!」
「よし、ガストーネ案内せよ。トリスターノついて来い。予も行く!」
「えっ? 王様来るの危なくない?」
「予の治世における一大事だ! 予が行かんでどうする」
「おお、かっちょいい」
「ムリはしないのであろう?」
ニヤッと笑う王様。
いいね、なかなか肝が据わってる。
こういう粋な王様と知り合えたのは収穫だった。
「者ども、行くぞ」
「はーい。ところで霜の巨人が出たとこって遠いの?」
「近いぞ? 強歩三日ほど北の、まばらな森と報告を受けている」
「強歩三日? どうやって行くつもりだったの?」
「馬車で飛ばす!」
「冗談じゃないわ! 自慢のヒップが四角くなってしまうわ! クララ」
「はい、フライ!」
「おお? 飛行魔法か?」
「何と見事な制御だ!」
「強歩三日なら三〇分くらいで着くよ。道案内して」
びゅーんと北へ。
◇
「飛行魔法とは大層快適なものだな」
「でしょ? まあ地に足つかない状態でこのスピードは、嫌いな人もいるんだけどさ」
最初悲鳴とゆーか怒声を上げてた王様だが、すぐ適応して上機嫌になった。
単純。
「うむ、もっと寒いのかと思ったぞ」
「空気に包まれてるから風には晒されないよね。飛行魔法はレベル依存なんだ。うちのクララはレベルカンストしてるから、これ以上の飛行魔法には出会えないよ」
「ほう、この世で最高の飛行魔法か。素晴らしいな」
ハハッ、クララが照れてる。
「若干進路を東にお願いします」
「りょーかーい」
案内してくれるガストーネという小太りの男は森林大臣、トリスターノという軍人はガリア軍トップである元帥だそーな。
「ふーん、北に行くほど集落は少なく、小さくなるねえ」
「北は日照時間も温度も足りない。耕作が難しいからな。ほんの短い夏の間だけだ」
「厳しいなー、まだ雪残ってるもんなー。北の方の主要な産業は何なの?」
「林業と鉱業、毛皮くらいか」
「なるほどー」
農業が難しいなら、毛皮は野生動物か魔物のかな?
戦い慣れはしてるのかもしれない。




