第1413話:襲撃
プリンスルキウスが言う。
「残念ながら、オードリー王女のお相手を決定するだけの権限を我々は持ち合わせていない。この件は持ち帰り検討させてもらう。しかし良き返答ができるよう、全力を尽くすことを約束しよう!」
「「「「「「「「おお!」」」」」」」」
ラブい話は盛り上がるなあ。
リキニウスちゃんとオードリーが結ばれるのはいい話だと思う。
リキニウスちゃんはカル帝国の皇帝にはなれなかったかもしれないけど、将来オードリーと共同のラグランド統治者になれるんだったら万々歳じゃん。
帝国はラグランドの自治を認めやすく、反乱に悩まされることがなくなる。
ラグランドにとっては一歩独立に近付く。
いいことばっかりじゃない?
「オードリー、リキニウスちゃんの爺ちゃん公爵に気に入られれば勝ちだぞ。あたし達は帝都へ戻るけど、オードリーも来る?」
「うむ、行くぞ!」
「じゃ、用意してリキニウスちゃん達と合流してくれる?」
「わかった。爺、すぐに用意じゃ!」
「はいー!」
オードリーは行動が早いなー。
まだ一一時前だ。
今から戻れば施政館でお昼御飯食べられるわ。
リリウオが言う。
「待ち焦がれてる民がいますので、私とホルガー殿ですぐさま共同声明を発します」
「中央府前だね? じゃ、あたしが送るよ」
交渉で決まった内容はラグランドの民にとって喜ばしいものだ。
熱狂的に受け入れられるだろう。
そーすりゃホルガーさんの警備は衛兵達で十分だ。
ルーネが言う。
「帰りはユーラシアさんが転移で帝都に戻してくださるんですよね?」
「うん」
「荷物が船に積んであるんです」
「じゃあ皆船に行っててよ。ヴィル、怪しいのが近付いてきたらどーんしちゃいなさい」
「わかったぬ!」
襲撃者が来たとしてもヴィル一人で片付けられるだろ。
プリンスもいるし。
「じゃ、あとでねー」
ホルガーさんジャブラニさんリリウオとともに中央府へ。
「リキニウスちゃん以外にも、オードリーに年回りの近い皇子っているのかな?」
「陛下の弟君の系統の皇子がおりまするな。いや、弟君の孫だから、皇子ではないのでしたか」
「でもオードリーはリキニウスちゃんを気に入ってたみたいだから、なるべく意見を通してあげたいねえ。うっかり公爵を口説き落とさないと」
ん? 後ろがうるさい。
さては過激派の襲撃か?
ホルガーさんを小脇に抱えてプリンスの方へ!
「ユーラシアさん!」
オロオロするリキニウスちゃんとルーネ。
「ルキウス叔父様が私達をかばってケガをされたのです!」
「ど、どうしたら……」
チラッと見たけど、風魔法で背中の皮一枚切られただけだぞ?
プリンス苦笑いしてる場合じゃないわ。
何どんくさいことやってんだよもー。
ヴィルに吹っ飛ばされて転がってる襲撃者二人のがよっぽど重症。
「縛って猿ぐつわ噛ませたらこっち持ってきて。リフレッシュ!」
プリンスと襲撃者二人を全快させる。
「耳の穴かっぽじってよく聞きなさい。あんた達が襲ったリキニウスちゃんは、オードリーの旦那になる予定なんだぞ?」
「「!」」
「不忠者になる不名誉を救ってくれたプリンスルキウスに、謝りかつ感謝しなさい」
べたっと這いつくばって恐縮する二人。
あ、ヒャクダラと衛兵長来た。
「すまねえ! 決して悪いやつらじゃねえんだが」
「うん、謝罪はもらった」
「皇族への襲撃など、死刑に決まっておる!」
「そ、そうか……」
「ラグランド統治の法律も改正されるんでしょ? プリンスが気にしなければ、ふつーの傷害罪で勘弁してやったら?」
「ルキウス様は大ケガをされたのだろうが!」
「ちょびっと血が出ただけだって。プリンスはレベル五〇だぞ? レベル二〇代の人に襲われたってどうってことないよ」
「レベル五〇?」
ビックリした様子の衛兵長。
あんたなら見ればわかるだろーが。
いや、『威厳』の効果が重なってるとわかりづらいのかな?
「大体何でプリンスはパワーカード起動してないのよ? 起動してりゃ服破れないし、血も出なかったわ」
「ハハハ、咄嗟だったものでな。面目ない」
プリンスは兵士でも冒険者でもないしな。
仕方ないか。
プリンスのレベル上げしといたことが大いに役立ったんだから、満足することにしよう。
プリンスが何でもないことのように言う。
「二人とも改心しているようじゃないか。予は気にしておらんから、刑は軽くすませてやってくれ」
「ルキウス様! それでは示しがつきませんぞ!」
厳罰に処したら、せっかくまとまったラグランドとの和平に影を落とす。
一方で皇族への襲撃は帝国の権威に関わるから許しがたいとゆーことか。
面倒だなあ。
「じゃあ今度やらかしたらドーラ流しってことでどう?」
「「「「「ドーラ流し?」」」」」
「あたしがドーラへ連れていって、ドラゴンのエサにしちゃう」
「ドラゴンのエサ? ……生きながらドラゴンに食わせるということか?」
「ピンポーン! 正解でーす!」
「ひ、ひでえ!」
「ひどくない! ちゃんとレッドドラゴンのエサがいいかアイスドラゴンのエサがいいか、選ばせてあげるからね」
冗談なのか? って目で見てくる一同に、プリンスルキウスが沈痛な顔で言い渡す。
「精霊使いはおそらく本気だ。ドラゴンなど何とも思っていないから、目の前にエサを置く行為も普通に行うだろう」
「でもマネしない方がいいよ。ドラゴンはケンカっ早いから、エサがあっても突っかかってきちゃうの。倒す自信がなければお勧めしない」
あれえ?
リキニウスちゃんとルーネがキラキラした目で見てくるじゃないか。
今は残酷な刑罰の話をしているんだぞ?
ヒャクダラが恐る恐るといった様子で聞いてくる。
「じ、実際にドラゴンのエサの刑に処せられたやつは、ドーラにいるのか?」
「いないんだ。今なら栄えある第一号だよ。おめでとう!」
だからシーンとするな。
ヴィルがルーネに説明している。
「御主人は冗談が好きだぬよ? でもどんな時でも一〇〇%冗談ということはないんだぬ。どこかに本気が隠れているんだぬ」
さすがにヴィルだなあ。
あたしの性格をよくわかってる。
プリンスが不審げに言う。
「ところでその小脇に抱えているのは、ホルガー殿ではないか? 気絶されているようだが」
「あ、いけない。急いでこっち来たから、揺れが大きかったかな。ホルガーさんが一番重体だわ」




