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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1411話:あたしのやりたいようにやるわ!

 ――――――――――二三一日目。


「美少女精霊使い参上!」

「御主人!」

「よーし、ヴィルいい子!」


 プリンスを迎えに行政府大使室へやって来た。

 ハグしてるあたし達を何故生温かい目で見るのだ。

 ヴィルはいい子だぞ?

 プリンスルキウスが微妙な表情で言う。


「おかしなことになったね」


 今日のラグランド交渉についてだろう。

 少々損してもいいから手早く交渉を終えろという、施政館からの指示なのだ。

 こんなんプリンスも手腕の発揮しようがない。


「マジでそう。ラグランドに厳し過ぎるとよろしくないみたい」

「かといって独立は認められないしな。昨日の通信からすると、場合によっては税率を下げてもいいという、兄上のニュアンスだったが」

「つっても税金下げると、実質交渉者たるプリンスのへっぴり腰が非難されそーじゃん」

「うむ……」


 ラグランドにいい顔を見せといてラグランド可哀そうムーブの市民の批判を躱し、同時に何故国益を優先しないのかという強硬派からの批判の矢面にプリンスを立たせる戦略だろう。

 主席執政官閣下の思惑が見え透いてるわ。

 閣下も悪いやつだから。


 パラキアスさんが達観したように言う。


「手早く条件を擦り合わせて、講和条約締結まで持っていくしかないだろう。もたつくと何を言われるかわからん」

「だよねえ」


 何とかしてプリンスの存在感を大きくし、次期皇帝への足がかりにしたいが、ムリなもんはムリだ。

 条件が厳し過ぎる。

 おそらくラグランド側のカウンターパートは内政担当のリリウオだろう。

 あたしも最低限の要求だけ伝えて大人しくしとこ。


「じゃ、行こうか」

「うむ、留守を頼む」

「「「はっ!」」」


 転移の玉を起動し、一旦帰宅する。


          ◇


 フイィィーンシュパパパッ。

 ラグランドの中央府にやって来た。

 今日もいい天気だ。

 過激派は襲撃してきてもいいけど、空気乾燥してるからマジで火は使うなと言いたい。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ!」

「ユーラシア殿、こちらがルキウス殿下で?」

「そうそう。プリンス、ラグランド首脳の一人、ジャブラニ衛士長だよ。もう一人魔法連の頭ヒャクダラって人とで蜂起を抑えてくれてるの」

「うむ、今日はよろしく頼むよ」


 握手。

 ハハッ、ジャブラニさん驚いてるわ。

 プリンスはレベル五〇『威厳』持ちだから。


「いや、ルキウス殿下がこれほどの方とは……」

「次のカル帝国皇帝に相応しいと思わない?」

「思う」

「こらこら。お世辞はいいから」


 お世辞じゃないんだぞ?

 個人的資質を考えりゃ、プリンスルキウスが一番皇帝に向いてるって。


「交渉は総督府で行うのかな? それとも中央府の方?」

「総督府だ。殿下、今内政担当のリリウオという者がまいりますので、少々お待ちを」

「プリンスの直接の交渉相手になる人だよ。ヒャクダラは?」

「魔法使いを配置して総督府外郭の警備に当たっている。しかし飛行魔法の使い手が急襲すると防ぎきれないと言っていた。特に交渉終了直後に気をつけてくれと」

「りょーかーい」

「大丈夫なのかい?」

「プリンスはレベルからして全然平気だけど、リキニウスちゃんルーネホルガーさんは大丈夫じゃないんだな」


 プリンス心配そうですね。

 大体でいいから担当を決めとくか。


「使者っていう役目を考えると、プリンスがリキニウスちゃんルーネの側にいる機会が多いと思う。プリンスとヴィルはそっちの二人を守ってね。ホルガーさんはあたしが任された。リキニウスちゃんルーネが一塊になってる時はプリンスが守りでヴィルが攻めだよ。闇魔法使うと大事になるから、体当たりでふっ飛ばしなさい。リキニウスちゃんルーネがバラけてる時は一人ずつ担当して守り重視ね。いいかな?」

「わかった」「わかったぬ!」


 細身の男リリウオ来たぞ。


「遅れて申し訳ありません。……っ!」


 ハハッ、プリンス見てビビってやがる。

 レベル五〇『威厳』が効きまくり。


「る、ルキウス皇子?」

「うん。一目見てやるやつだってわかるでしょ?」

「よろしく、ミスター・リリウオ」

「は、はい……」


 握手。

 あれ、リリウオったらプリンスに呑まれてないか?

 対等に交渉してもらわなきゃ困るんだが。

 ラグランド現地人が納得するだけの譲歩を帝国から引き出さないと、オードリーと中央府の権威が低下しちゃう。

 リリウオの腰が引けてると禍根が残るぞ?

 しょうがないなあ。


「可哀そうなラグランド大作戦が成功してるんだ。帝都で世論がラグランド贔屓に傾いているから、少々譲ったって構わないという施政館の見解なの」

「本当ですか?」

「待て、ユーラシア君!」

「待たない」


 プリンスはプリンスで泡食ってるんじゃないよ。


「この和平交渉は、ラグランドがある程度要求通さないとダメなんだってば。リリウオさんが委縮して要求を通せないと、民衆が怒って蜂起が再燃しちゃう可能性もある。何のための交渉かわかんなくなっちゃう」

「理解できなくもないが……」

「譲れるところは気前良く譲ってやってよ」

「お、お願いします」

「事情は理解したが、可哀そうなラグランド大作戦とは何だい?」


 待てってそっちのことか。


「ラグランドは税金高くて生活が厳しいの飢えちゃうのっていう悲惨話を帝国本土でバラ撒いて、市民の同情を買うでしょ? で、ラグランドを虐めたら政権支持率が下落しちゃうぞっていうプレッシャーをかける作戦」

「ユーラシア君が考えたのか?」

「うん」

「君どっちの味方なんだ!」

「どっちの味方とかないわ。あたしのやりたいようにやるわ!」


 今更何を言ってるんだ。

 あれ、プリンス警戒してる?

 あたしのやりたいようにってのは、帝国ラグランド双方にメリットがあるようにってことだからね?


「いい? ラグランドが発展することは、帝国にとって不利益じゃないじゃん。税金一杯取れるようになるんだから。貿易でも儲かるよ」

「……トータルで見よということか」

「蜂起する気もなくすくらいサービスしてやればいいよ。でも……」


 リリウオの方を向いてキメ顔を見せる。


「あたしはプリンスを次の皇帝にしたいから、プリンスの評価を落とすような要求は絶対に受け入れない。わかるね?」

「は、はい」


 これがミラクルフィフティーンユーラシア、っていうリリウオの呟きが聞こえた気がする。

 一六歳だとゆーのに。


「総督府行こうよ」

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