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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1406話:恥ずかしい公爵

「単なるアトラクションだ、危険な目になんか遭わせてない。あたしじゃなくてあんたが乗ってたら転覆だったぞって、うっかり公爵には言ったった」

「ひどい暴言ですねえ」

「暴言かなあ? 多分お付きの人達は頷いてたと思うよ」

「仮にもグレゴール様は公爵様ですよ?」

「仮じゃないわ。どこに出しても恥ずかしくない……恥ずかしい公爵だわ!」


 爆笑。

 まーおもろいじっちゃんではある。

 ただあたしにはラグランドとの交渉自体を面白くしようとか、不測の事態を楽しもうという意図はない。

 だってとっとと終えたいんだもん。

 うっかり公爵にはすっこんでてもらいたい。


「昨日は魔物肉とワイバーンの卵持ってったんだ。そしたらリキニウスちゃんに魔物肉を食べさせるとはーって」

「魔物肉を食べるって最初はビックリしましたけど、おいしいですよね?」

「当たり前じゃん。おいしいやつしか食べないもん。あたしはおいしいものが正義だとゆーポリシーを曲げてまで、わざわざ不味いものを食べようとは思わない」

「不当な文句ですね」

「でしょ?」


 近衛兵詰め所の全員が頷く。

 これは共通認識だな。

 食べてみさえすればわかるのだ。

 食わず嫌いは正義ではない。

 いつかうっかり公爵にも食べさせてやろ。


「で、うっかり公爵はともかく、閣下も不機嫌なんだよね」

「ドミティウス様が? どうしてですか?」

「多分娘ラブだから」

「しばらくルーネロッテ様に会えなくて寂しいということですか?」

「うーん、それもあるんだろうけど」


 あれ、新聞記者トリオばかりじゃなくて、皆が興味ありそうじゃん。


「ルーネは冒険者志望じゃん?」

「御自分で仰ってましたね」

「でも閣下はルーネに危ないことして欲しくないみたいで」

「普通は親として、まあ」

「ユーラシアはカンがいいから、その手の機微は察するのだろう?」

「うん。ルーネに嫌われたくないからか、閣下はあんまり言わないけど」

「おそらくドミティウス兄上が何も言わないことを逆手にとっているのだ。レベルを上げたり魔物肉を食わせたりして、ルーネロッテの冒険者になりたい願望を煽っているのだろう?」

「「「本当なんですか?」」」

「三分の一くらいは本当」


 ルーネを喜ばせてやりたいし、閣下にちょびっと意趣返ししてやりたいのは山々だけど、シーサーペントは偶然だわ。

 コブタ肉にもお土産以上の意図はなかった。

 帝国の事実上のトップの機嫌を悪くして得なことはないから。


「ま、とにかく細かいことまで気を回してる場合じゃないな。今はラグランド交渉を何事もなく終えて、使者を無事に帰国させることが先決」

「道理だな」


 全員が頷く。

 新聞記者の一人が言う。


「この前ラグランドを取材させていただいた記事の反響がすごくてですね」

「結構なことだね」

「はい。ラグランドの人々はかように悲惨な生活をしているのか。帝国の待遇が悪い、恨まれても仕方がない、ラグランドを救えと」

「ええ? 大袈裟な記事書いたんじゃないの?」

「デスクからは大変褒められました!」


 デスクがどうのなんて聞いてないってば。

 ラグランドに同情を集める作戦は、考えてた以上に成功したようだ。

 ラグランド人のスパイ網がメッチャ働いてるんだな?


 しかしどうやら閣下不機嫌の理由は、ラグランド可哀そう作戦が効いてるってこともありそう。

 現政権のラグランド統治が市民に非難されてるも同然だから。

 現政権の評判を落としてプリンスを持ち上げたいあたしの狙い通りではあるが……。


「……よろしくないな」

「何がです?」

「記者さん達、あとでラグランド行かない?」

「行きます!」

「ありがたいですけど、どうしてですか?」

「閣下の機嫌が悪いの、新聞記事のせいかもしれないじゃん。政府の施策がまずいからラグランドが蜂起したんだぞーとも取れるし。政権批判だぞ?」


 廃刊の可能性に気付いたか、途端に青くなる新聞記者トリオ。

 デスクに褒められるのどうのとゆーどうでもいいことより、もうちょっと危機感を持ってくれるといいのに。


「ど、どうすればいいでしょう?」

「政府は迅速に問題解決のための特使を派遣、本日ラグランドに到着しましたって記事書いてバランス取っとこう」

「「「ナイスアイデア!」」」


 これでいい。

 報道は中立であるほど信頼性が増す。

 閣下も中立な新聞を潰して市民に不信感を抱かせることはしないだろう。

 あたしが新聞記者をラグランドに連れていくことは当然わかるだろうしな。

 少し点数稼いでおこっと。


 ラグランドのスパイ網が働いてるから、新聞記事が受け入れられやすかったということは確かにあるだろう。

 スパイ網優秀過ぎるんじゃないの?

 とゆーかラグランドで行われている圧政について、市民の間でも薄々知られていたことがバックにあるからかもしれない。

 であれば少々政府の提灯記事が続いたとしても、ラグランド気の毒っていうムードは消えないだろうな。

 好都合だ。


「昼過ぎくらいに使者の船がラグランドに到着すると思うんだ」

「では、昼食後くらいに連れていっていただけますか?」

「了解。ここへ迎えに来ようか? それとも新聞社の方がいい?」

「一旦戻りますので、新聞社の方へ来てもらえるとありがたいです」

「わかった。じゃ、あとでね」

「あっ、ユーラシアさん待ってください!」


 まだ何か用があったかな?


「対ラグランド交渉は明日になるんですよね?」

「と思うよ。今日ラグランドで様子を聞いて、予定通りならば明日在ドーラ大使プリンスルキウスを連れてくつもり」

「明日我々をラグランドに同行させてもらえませんか?」

「え? 交渉結果をすぐ記事にしたいってこと? 施政館の許可がなきゃムリだろ」

「結果が良好ならば、記事が早いことは皆の利益になるのでは?」

「……一理あるね」


 閣下は政権の素早い対応をアピールできる。

 一方で交渉を素早く終えられるなら、プリンスルキウスの卓越した手腕も周知させることにもなる?

 新聞も記事ネタが増えて嬉しいだろうし、考慮の余地はあるな。


「どっちにしても施政館の許可は必要だな。明日ラグランドに連れていけそうなら連絡するよ。時間いつになるかわからないけど、誰か一人新聞社にいてくれる?」

「「「わかりました!」」」

「じゃーねー」

「バイバイぬ!」


 転移の玉を起動して帰宅する。

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