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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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1405/2453

第1405話:あたしは清純派

 ――――――――――二三〇日目。


 フイィィーンシュパパパッ。


「こんにちはー」

「こんにちはぬ」

「いらっしゃい、精霊使い君」


 いつものサボリ土魔法使い近衛兵だ。

 今日午前中はどうしようかと思ったが、結局皇宮へやって来た。

 ラグランドについて知らせにだ。

 政治に関わることであるし、施政館から皇宮へはリキニウスちゃんやルーネに関する情報は流れてないんじゃないかと思ったから。

 どんな雰囲気になっているか、様子見がてらだね。


「ここ木や壁で陽が当たらないとこじゃん? これからの季節は涼しくて居心地良さそうだねえ」

「ああ。冬でも風が吹き込まないから、さほど寒くならないけどな」

「おおう、年中穴場なのか」

「フェイバリットプレイスなんだ」


 ダンテみたいな物言いに思わず笑う。

 ちょっと真面目な顔になったサボリ近衛兵が言う。


「君が来るのを心待ちにしていたんだ」

「えっ? いきなりの愛の告白? もーちょっと雰囲気を考えてくれれば、小さな胸がドキドキするだろうな」

「違うんだ。俺ばかりじゃなくて、皆がなんだ」

「皆があたしに愛の告白か。人生における一大イベントかもしれない」

「違うというのに」

「最近モテるわ」

「御主人はいつもモテるぬよ?」

「ヴィルはいいこと言うなあ」


 今年になってから縁談もいくつかあるしな。

 アハハと笑いながら近衛兵詰め所へ。


          ◇


「ユーラシア!」「「ユーラシア殿!」」「「「ユーラシアさん!」」」

「あれ、どーしたの?」


 ウルピウス殿下とリモネスのおっちゃんと近衛兵長さん、それと新聞記者トリオか。

 本当に皆おるがな。

 しかし大事件というふうでもないな。


「お肉お土産だよ。皆さんでどーぞ」


 特に大喜びなのは近衛兵達だ。

 うむ、お肉は慈悲深き愛のしるし、世界平和の要だから。

 ウ殿下が言う。


「ライナーがユーラシアに連絡を取りたいとのことなのだ」

「ライナー君が?」


 ツムシュテーク伯爵家の長男の騎士。

 リリーの花婿候補者撫で斬りイベントの助演俳優の一人だ。


「ライナー君とは、こりゃまた意外なところからエンターテインメントが転がり込んで来そうな気配だね。何の用件かな?」

「言ってはいなかった。ユーラシアに心当たりはあるか?」

「女性問題だと思うけど。ただあたしに直接関係はないな」

「何故わかる? カンか?」

「カンだねえ。ただ清純派のあたしに相談しようとするのは何でだろ?」


 こらそこ、清純派? って顔するな。

 ただし女性問題だと思ったのは根拠のないことではない。

 だってあたしんとこへ貴族の人間関係や騎士の仕事の話なんか持ってくるわけがないもん。

 ライナー君はあたしにラブじゃないから、あたし自身が対象ではないというのも外れてないだろう。

 じゃあ何だ?


「記者さん達、ライナー君のスキャンダルを何か掴んでない?」

「いえ、特には」

「会わないとわかんないな」


 明日はラグランド交渉の日で、順調なら明後日に使者は帰途に就く?

 いや、あたしは交渉の場にいるわけじゃないから、時間がタイトなわけじゃないな。


「さほど急ぎというわけでもないようだったぞ?」

「じゃ、三日後の午前中にこっち来るよ」

「ライナーにはそう伝えておこう」


 ライナー君の休みがいつかわかれば合わせるのにな。

 ウ殿下も御苦労なことだ。

 プリンスルキウス婚約の件でも動いてるだろうに。

 世話好きなのかもしれない。


 近衛兵長さんが言う。


「セウェルス殿下の件ですが」

「第三皇子殿下はあたしも気になってたんだ。元気になった?」


 あたしに対して『強奪』で固有能力を奪おうとしてきた第三皇子。

 おかしい人がさらにおかしくなっちゃったが?

 もうあたしの人生に関わってこない人だとは思うけど、どうなったかの顛末くらいは知りたい。


「殿下は自らを責める傾向が強く、気鬱が甚だしいそうです。典医によればおそらく酒毒のせいであろうと。いずれかの保養地にて療養の方向で、調整が進められておりますぞ」

「そーかー」


 小さく頷くリモネスさん。

 あたしの心を読んで、『強奪』の綱引きの末あたしが勝利したという展開を知ったのであろう。

 固有能力って人生狂わせることあるよなあ。

 強力な能力だからって、いいことばっかりじゃないよ。


「今後、セウェルス殿下がユーラシア殿の前に姿を現すことはないと思われます」

「わかった。ありがとう」


 せめて穏やかな余生を過ごせるといいね。


「ユーラシアさん、ラグランドについてですけれども」

「余韻に浸る間がないなあ。いや、あたしもラグランドのことでここ来たんだよ」


 記者トリオは遠慮があんまりないのだ。

 話しやすいけれども。


「リキニウスちゃんとルーネの船旅は順調。今日ラグランドに到着予定だよ」

「ユーラシアさんは当然使者の船には押しかけてるんですよね? 面白いことありませんか?」

「面白いことって。毎日うっかり公爵と主席執政官閣下にはヴィルで連絡入れてるんだ。心配だろうから。でもうっかり公爵は毎日文句言いやがるの」

「例えば?」

「一昨日はリリーを連れて船に遊びに行ったんだ。シーサーペントに追いかけられて船壊されそうになったから倒すじゃん?」

「当たり前みたいに仰いますねえ」

「あたしだって不満なんだよ。倒したって食べられないし、ドロップアイテムあったとしても回収できないし。シーサーペントだって、船なんか襲ったってエサにならないことくらい理解すればいいのに。不毛な争いだったわ」


 不思議そうな顔しながらメモを取るな。

 あたしはバトルマニアじゃないとゆーのに。

 タダ働きは御免こうむりたい。


「共闘扱いになって、リキニウスちゃんとルーネのレベルが上がったんだよ。二人とも大喜び。ルーネは魔法覚えたな」

「ルーネロッテ様は風魔法使いでしたね」

「うん。習得したのは『ウインドカッター』。初級の風攻撃魔法だね」

「グレゴール公爵が文句を言うとはどういうことでしょう?」


 おっと、話が逸れてたわ。


「リキニウスちゃんを危険な目に遭わせるとは何事だーって激おこ」

「え? ユーラシアさんは魔物を倒しただけですよね? 不当なクレームなのでは?」

「ユーラシアがいるから魔物が現われるのだ」

「違うわ! 生まれ持った類稀なるヒロイン特性のせいで、ピンチに導かれるだけだわ!」


 まったくウ殿下は何を言っているのだ。

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