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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1404話:あたしは罪な女・最終章

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 船から帰宅後、毎晩恒例のヴィル通信だ。


「驚愕された。あたしは罪な女」

『今日もまた罪な女シリーズか』

「第三弾だね。罪な女とゆー響きがなかなか」

『最近その出だしが多いなあ。気に入ったんだな?』

「気に入っちゃった。何があったんだろう感がサスペンスを演出すると思わない?」

『最初はそう思わないでもなかったが、段々飽きてきたぞ』


 シリーズ化するほど引きのあるセリフじゃなかったか。

 今日で最終章にしとこ。

 たまにリバイバルで罪な女再び、ってのはありかもしれない。


『今日は何をやらかした?』

「のっけから結構な言い草だなあ。どーしてあたしがやらかしたと思うのよ?」

『おそらく事実に一番近いから』


 あたしの周囲は偏見に満ちている。

 もっと正当に評価してもらいたいもんだ。


『ジャッジメントタイムだ。何をやったか正直に白状しようか』

「いや、今日は本当に大したことしてないの。コブタ肉とワイバーンの卵をお土産に持っていって、船の皆で食べただけ」

『それが何故驚かれるんだ?』

「帝国の人は魔物食材に抵抗があるみたいなんだよね。例のうっかり公爵が、リキニウスちゃんに魔物肉を食べさせるとはーって」

『判決、無罪』

「やったあ!」


 フッフッフッ、今日のあたしは無罪の女だ。

 罪な女シリーズはやはり今日で最後にしよう。

 明日のあたしはどうだって?

 んなこたあ気にすんな。


「どーも帝国の人は魔物肉に偏見があるな。近衛兵に食べさせた時も、最初おっかなビックリだったわ」


 いや、リリーは初めから魔物ウェルカムだったか。

 だからこそドーラに来て腕試しなんてこと考えたのかもしれんけど。

 

『どうしてだろうな? 食べてみりゃ美味いくらいのことはわかるだろうに』

「うーん、帝国では普通に暮らしてりゃ魔物なんかに遭遇しないってことはあるけど」


 テンケン山岳地帯やゼムリヤみたいな、魔物とともに生活するところが少ないのだ。

 ドーラとは常識が違うと言われれば黙るしかないのだが。


「やっぱあれがダメだ。『輝かしき勇者の冒険』のせいだ」

『ああ、ドラゴンを倒す童話の類だったか?』

「帝国では文字が読めるようになった子供が皆読む本みたいなんだよね。あれのせいで、魔物が怖いものだと思われちゃってる気がする」

『魔物を恐れるべきなのは正しいだろう?』

「魔物怖いってことばっかりがフィーチャーされちゃってるじゃん。魔物にはおいしいやついるし、ドロップアイテムが楽しみなやつも多いんだよ? 魔物退治はレベル上げに必須って言っていいし。真実を知って欲しいわ」


 あたしが『アトラスの冒険者』になった時、第一目標は魔物に脅かされない生活だった。

 だから魔物怖いってのもわかるんだけど、帝国の人達は魔物が身近じゃない分、忌避感が増幅されちゃってるんじゃないかなあ?

 魔物の印象を決定的に悪くしているのが、あの害悪図書『輝かしき勇者の冒険』とゆーことだ。


『具体的にはどうやって?』

「『精霊使いユーラシアのサーガ』をヒットさせて、ハッピーラッキー魔物ライフを帝国の人達に教えてあげる」

『ハッピーラッキー魔物ライフは君だけだからな?』

「最終的には『輝かしき勇者の冒険』を駆逐する」

『ええ? 可能なのかい?』

「『精霊使いユーラシアのサーガ』の主人公の魅力とクエスト内容には文句のつけようがないじゃん? 誰が書くかだけの問題だと思う」

『ハハッ。君の魅力を余すところなく表現するって、えらいことだな』

「それなー」


 あたしの冒険者生活って、まだまだ始まったばかりだしな。

 伝説ロードはあたしをどこへ導こうとしているのか。


「使者一行は、明日ラグランドに到着予定なんだ」

『順調なんだな?』

「特に何も起きなかったね。あたしのエンタメ探究心を満足させない。つまらん」

『おいおい、昨日シーサーペントが出たって言ってたじゃないか』

「シーサーペントは迷惑だったな」


 不味いっぽいわドロップアイテムも拾えないわ。

 リキニウスちゃんとルーネが大喜びしてたから勘弁してやるけれども。


「平穏無事ってことで満足しておくか。あんまり変なフラグ立てて、交渉に影響しても困るし」

『君の存在自体がフラグなんだよなあ』

「おいこら、何を言っているんだ!」

『『精霊使いユーラシアのサーガ』がエピソード満載の理由だ』

「うーん、セーフ?」


 サイナスさんの疑惑の発言に対するアウトセーフ判定装置がマジで欲しい。


『ハヤテが喜んでたよ。海の王国へ連れていったんだって?』

「あれ、珍しくサイナスさんの方から話題を変えてきたね。自分でもアウトセーフが微妙だと思ってる?」

『違うよ。ユーラシアもわざわざ拾おうとするな』

「貪欲な姿勢もごまんとある長所の一つだなー」

『ポジティブなのは間違いなく長所だね』


 褒められた。

 気分良く眠れる。

 あたしが気分悪く寝るなんてことはないけれども。


「海の女王も商売熱心だからね。あたしも海底の商店街を隅々までチェックできてるわけじゃないし、ハヤテには期待してる」

『ハヤテは今後、魚人との取り引き専門になるのかい?』

「ってことはないけど、ハヤテの大きな強みにはなるよ」


 海底の商店街へ自由に買いつけに行けるのは、現状ではあたしを除くとハヤテだけだ。

 魚人はほぼ『精霊の友』だから、コミュニケーションにも問題がないしな。


「アレクケスハヤテのスリーマンセルでいい仕事ができるといいよ」

『……何て言って欲しいんだい?』

「スーパーでウルトラでミラクルな美少女はさすがだの、地母神ユーラシアの慈愛の心は世界を覆うの、お好きな美辞麗句で飾ってくれれば」

『君は素敵だよ』

「おお? ようやくサイナスさんもあたしの魅力に気付いたね? でも気持ち悪い」

『何てことを言うんだ!』


 アハハと笑い合う。


『明日もラグランドへ行くんだろう?』

「行く。使者の到着を確認して、施政館と行政府に連絡しないといけないから」


 過激派の存在を含め、懸念がないわけじゃない。

 でも考え過ぎたってしょうがないだろ。


「サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『はいだぬ!』


 使者一行のラグランド到着はおそらく昼以降になる。

 午前中どうしようかな?

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