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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1403話:職務をよく考えて

「これは素晴らしい!」

「香ばしいです!」

「噛みしめると脂がじゅわーっと……」

「ハッハッハッ、あたしを崇めるがよい!」


 船員さんやお付きの人達にも、炙りコブタ肉は大好評だ。

 たくさん持ってきたから一杯食べてね。

 リキニウスちゃんが聞いてくる。


「この塩に含まれている黒い粒々は何ですか? コショウじゃないですよね?」

「塩の秘密に気付いたかー。これはドーラ近海の魚人の国で作られている、特別に旨みの濃いフルコンブっていう海藻を粉にしたものなんだ。海の女王がコブタ炙り肉を食べるためだけに使ってる非売品の塩」

「炒め物や炊いた米にかけるだけでおいしそうなんですけど?」

「地上だと利用価値が高いよねえ。いずれ正式に作って、帝国にも上流階級御用達の塩として輸出したい」

「今輸出していないのは何故ですか?」

「フルコンブの養殖が難しいから、大量生産はできないっぽいんだ。どこかで見かけたら買い占めちゃうといいよ」


 ハハッ。

 フルコンブという高級食材についての刷り込みは完了した。

 煽れ煽れ、煽るぞ煽るぞ。


「魔物肉はおいしい……」

「でしょ? 帝国本土にもおいしい魔物はいるんだぞ?」

「「それは?」」

「おお? リキニウスちゃんもルーネも熱心じゃないか。テンケン山岳地帯の渓谷にコッカーっていう鳥の魔物がいるよ。相当なポテンシャルを秘めたお肉だね。あの辺の人達はコッカー肉を薄切りにして、石で焼いて食べてるんだ。地元産の岩塩かけるとうまーい!」

「石で焼くというのも珍しいですね」


 鉄が手に入りにくいって事情もあったみたいだけどね。


「ゼムリヤには結構おいしそうな魔物いるみたいだよ。あたしが食べたのはついこの前、冬眠明けで痩せてたやつだからもう一つだったけど」

「ゼムリヤ……」

「ルーネも冒険者やりたいなら、ゼムリヤはそう悪くないと思うぞ? メルヒオール辺境侯爵は絶対に嫌がったりしないし。初心者向けの弱い魔物はいないみたいだけど、魔物駆除のサポートについてくだけでも勉強になるよ」

「そうですねっ!」


 ハハッ、煽れ煽れ、煽るぞ煽るぞ。

 閣下よ、娘にねだられて困惑してしまえニヤニヤ。


「ヴィルちゃんは戦闘メンバーではないんですよね?」

「違うぬよ?」

「違うけど、特殊な魔物と特殊な戦い方すると、簡単に倒せるイコール儲かるってことがあってさ。ヴィルに重要な役割を振ってるんだよ。結果としてヴィルもレベル九九でカンストしてるの」

「ユーラシアさんもレベルカンストしてるんですよね?」

「いや、してないんだ。今レベル一三五くらい」

「「一三五?」」


 理解しがたいか。


「レベルの上限は九九と決まっているのではないのですか?」

「普通の人間は九九だね。強い魔物ではレベルが一〇〇を超えているものもいるよ。例えばブラックデモンズドラゴンのレベルは一二〇でカンストと聞いた」

「ユーラシアさんのレベルはいくつでカンストなんですか?」

「あたしはレベル上限が一五〇になる固有能力持ちなんだ。この前ルーネに触らせた、ステータス見るカードみたいなパネルあるじゃん? あれレベル九九までしか測れないから、自分の正確なレベルがわかんないんだよね」

「ユーラシアさんはすごいですねえ」

「冒険者やってると面白いこと多いよ」


 あれ、煽り過ぎてリキニウスちゃんまで冒険者になりたそーな顔をしてるぞ?

 楽しそうではあるな。

 主に慌てふためくであろう爺ちゃんうっかり公爵を想像するとだけど。


 さて、大体皆さん、御飯食べ終わったかな?


「ごちそーさま。はい注目! 明日以降の注意点話しとくよ」


 お付きの武官文官達の顔が引き締まる。


「向こうは反乱の最中ではあるけど、基本的には静かだよ。ラグランドは連絡網がすごく発達してて、帝国から軍艦じゃなくて使者が来る、和平交渉するってことを皆知ってるの。ラグランド人は交渉によっていい暮らしになることを期待してる。帝国本土からの使者一行に対しては、友好的に接してくると思われまーす」


 ホッとする面々。

 武官の長と思われる人が聞いてくる。


「危なくはなさそうですか?」

「そこがな? 世の中どこにでも理屈の通じない人は存在するのだ。蜂起の主体にも過激派みたいなやつらがいるんだって。一〇人はいないらしいけど」

「一〇人以下ですか。であれば……」

「過激派の中に二人風魔法使いがいるって。レベルが二五~三〇の間。飛行魔法も使えるっていうから、状況から考えるとこの二人が最も危険だね」

「……ラグランド総督府にも衛兵はおりますよね?」

「いるね。衛兵と合流するまでは危険度が高い」


 よーく脳内でシミュレーションしてちょうだい。


「船も危ないんだ。上から油と火で攻撃される恐れがある」

「えっ?」


 考えてなかったか、面食らう船員。


「十分注意してて欲しいけど、船員しか乗ってない時だったら、船を捨てちゃって、使者一行か総督府の人員と一緒になることを目指すのも一考だよ。ラグランド人側の役所の中央府でもいいんだ。ラグランド人の首脳陣は敵じゃないからね」

「お、大勢で取り囲まれたらどうしますか?」

「そんなことになるのは蜂起の状況が悪化してるケースだよ。武官数人でどうにかなるわけないから、諦めて即降参してください。抵抗なんかすると殺されちゃうからダメだぞ?」

「「「「「……」」」」」


 納得いかないですか?


「殿下達を生かすことを第一に考えてね。戦って死ぬことは職務じゃないぞ? 生きてさえいれば、交渉でもあたしが忍び込むんでも、取り戻すチャンスはいくらでもある」

「わ、わかりました」


 まーでも今の様子だと、交渉前にラグランド人の態度が豹変するってちょっと考えられない。

 だって得がないもん。

 あるとすると過激派の奇襲だけ。


 ルーネが言う。


「明日はユーラシアさん、ラグランドにお出でになるんですか?」

「行くのは間違いないけど、あんた達に会ってる時間はないかも。明後日はプリンスルキウスを連れて絶対に行くからね」

「わかりました」

「気負うことはないぞ? ニコニコしていることがあんた達の仕事だということを忘れないように」

「「はい!」」

「健闘を祈る」

「健闘を祈るぬ!」

「じゃあ閣下とうっかり公爵に連絡しとこうか。ヴィル、閣下のところに行ってくれる?」

「わかったぬ!」

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