第1401話:ラルフ君が先生
「やあ、いらっしゃい。チャーミングなユーラシアさん」
「こんにちはー、ポロックさん」
海底から帰宅後、魔境で腹ごなししてからアルアさんの工房で素材を換金し、ギルドにやって来た。
「御主人!」
「ゆーらしあさん!」
「何なんだ、あんた達は。可愛いんだからもー」
ヴィルとポーラが飛びついてきた。
まとめてぎゅっとしてやる。
「ガルムが来てるぬよ。すごいお姉さんのところだぬ」
「依頼受付所か。とゆーことはガルちゃん真面目に依頼請けてるのかな?」
ポロックさんが言う。
「ここのところ、一番依頼所クエストをこなしているのがガルムだということだよ」
「そーか。ガルちゃんを褒めてやらないといけないな」
ギルド内部へ。
依頼受付所にガルちゃんと?
「あれ? ラルフ君達じゃないか」
「師匠、こんにちは」
「どうしたの? トラブル?」
「御主人がとても嬉しそうだぬ!」
大笑い。
嬉しそうってことあるか、多分気のせいだ。
あたしにもエンタメを説明しなさい。
「ガルちゃん精力的に依頼こなしてるらしいじゃないか。これあげる」
「あっ! ワイバーンの卵?」
「うん。食堂の大将んとこ持ってくと、格安ですげえ美味いフワフワ焼きを作ってくれるんだ」
「そうなの?」
「周りの冒険者も恩恵に与かる格好になるから、皆に感謝されちゃうぞ? ガルちゃんは感謝されるのも好きでしょ?」
「好きですけれども、いいのかしら? 卵いただいちゃって」
「いいんだぞ? あたしは頑張ってる子の味方だからね」
「御主人は気前がいいんだぬ!」
「ありがとう存じます!」
ガルちゃんが働けばギルドは儲かり、ひいてはドーラの景気が良くなるのだ。
どうせなら気分良く働いて欲しい。
また悪魔への偏見が薄れるのも悪いことじゃない。
悪魔は人間の感情をエネルギーにしている関係上、人間の知り得ない社会の事情に通じている可能性が高いから。
情報源として重要。
「で、何があったの?」
大した困りごとでもなさそうだが。
ラルフ君が言う。
「ガルムさんが、依頼を効率よく終えたいそうで」
「プロ意識に溢れていて素晴らしいことだね。で?」
「素材やアイテムを手に入れやすいところはないかしら?」
ガルちゃんが働いてくれるのはいいこと。
しかしどこを教えるにしても魔物との戦闘が前提になるな。
情報もあって確実に儲けられるのは塔のダンジョンだ。
でもあそこはウシ子のナワバリだから、いらん諍いを起こすかもしれない。
となると……。
「……ガルちゃんのレベルで一番稼げるのは魔境だけど」
「自分も同じ意見ですが」
「何ですの? その逆接は」
あんたが心配なんだよ。
「うーん、ガルちゃんはあんまり魔物と戦ったことないでしょ?」
「ないわ」
「通常攻撃と闇魔法以外で、何か攻撃スキル持ってる?」
「持ってないわ。闇魔法は強力ですのよ」
「闇魔法でやっつけると、ドロップアイテムごと塵になっちゃうから向いてないんだよね」
「そ、そうなんですの?」
昔ヴィルがお肉を大量に塵にしたわ。
ラルフ君が言う。
「通常攻撃前提なら、塔の村のダンジョンはどうですか? 『永久鉱山』なのでしょう?」
「あそこザガムムっていう悪魔のナワバリなんだよ。ちょっとガルちゃんに勧めるのは向いてないかな」
ダンジョン内部で冒険者活動するくらいは構わないのかもしれない。
でも認知されてない悪魔がダンジョンにいたら、誰かが驚いて『ザガムムのお守り』使いそう。
どう考えてもトラブルになっちゃう。
本の世界も『永久鉱山』だ。
しかしマスター・アリスの膨大な知識が野望溢れる第二皇子に流れることを考えると、ガルちゃんに教えるのは遠慮したい。
お肉以外はさほど稼げるわけじゃないしな。
となるとやはり勧められるのは……。
「……魔境だな。あたしだと中の方へ行きたくなっちゃうから、ラルフ君達教えてやってよ」
「「「「えっ?」」」」
「ガルちゃんもラルフ君に教わるのは抵抗ないでしょ?」
「言うことを聞かなければという気になるわ」
「でしょ? ラルフ君は『威厳』という固有能力持ちなんだ。親切だしパワーカードの使い手だから、ガルちゃんの先生にはピッタリ」
「パワーカードとは何ですの?」
「簡単に言うと、ガルちゃんでも装備できる武器や防具だよ」
「どういうことです?」
ラルフ君は知らなかったか。
「精霊や悪魔は実体を持たないから、例えば道具を気合い入れて使おうとすると、パワーを吸われてうまく扱えないんだ。レベルが高いんで使えないってわけじゃないけど」
「あっ、パワーカードは魔力起動で具現化させるから」
「精霊でも悪魔でも使えるってことだよ。うちのパーティーがパワーカード装備である、そもそもの理由ね。ガルちゃん、これ起動してみ?」
『アンリミテッド』のパワーカードを渡す。
「あっ、すごい! 普通に使える!」
「ガルちゃんはまあまあレベルあるけど、丸腰じゃ魔境ではキツいんだ。逆にフル装備ならワイバーンにも勝てるよ。ワイバーンは爪が素材として売れるし、運が良ければ卵もドロップするからね」
「なるほど、装備は大事ですのね?」
「安いものではないから、ラルフ先生や武器・防具屋さんの意見を聞きながら、少しずつ買い揃えていくといいよ」
ん? どうしたラルフ君。
「師匠、チュートリアルルームで『ビートドール』のスキルスクロールの販売始まりました。六〇〇〇ゴールドです」
「ラルフ君ナイス! 魔境にはクレイジーパペットっていう白い頭の大きな人の形をした魔物がいるんだ。飛べるしワープもできるガルちゃんなら、クレイジーパペットだけを狙ってエンカウントすることができると思う。こいつを倒すと必ず透輝珠と藍珠をドロップする。両方売ると二〇〇〇ゴールド以上になるよ」
「大儲けできますわ!」
「クレイジーパペットは今のガルちゃんの持ち技では倒せないんだ。『ビートドール』は人形系魔物にダメージの入る貴重なスキルだよ。クレイジーパペットは先制で『フレイム』を撃ってくるけど、『ビートドール』を撃ち返せばガルちゃんのレベルなら倒せる。ダメージ食らったら、ベースキャンプに回復魔法陣があるからね。やり方としては邪道だけど可能だな」
まあ頑張れ。
必ずしも背伸びしたやり方じゃなくてもいいけどね。
さてと、買い取り屋さん寄ってから帰るべ。




