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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1400話:ハヤテと海の王国

 フイィィーンシュパパパッ。

 うちの子達以外にハヤテを連れて海の王国へやって来た。

 アレクとケスが輸送隊業務のために、ハヤテが暇してたからだ。

 まあ雨の日の昼は、海の王国で御飯を食べるのが定番ではある。


「何だベ? これは」


 キョロキョロしていたハヤテが、早速銅鑼に目をつけたようだ。

 やっぱハヤテは商売してみたい子だけあって目敏いなあ。


「お目が高いね。『破魔の銅鑼』って言うんだ。鳴らすと悪魔の嫌がる音が出るの。海の王国では警報装置としても使われているんだ」

「……不思議と叩きたい衝動に駆られるだ」

「「「「わかる」」」」


 そりゃもうわかり過ぎるほど。

 叩けと言わんばかりの魅惑のフォルムなんだよな、この銅鑼ってば。

 よし、今日は記念すべきハヤテの初海底ということもあるし、銅鑼を鳴らす権利を譲ってやろう。


「思いっきりガンガン打ち鳴らさなければいけないという決まりがあるんだよ。メッチャいい音が出るんだ」

「わかっただ! 望むところだ!」

「思いっきり鳴らさなきゃいけないんでしたっけ?」

「という顔をクララがしている」

「アハハ。ユー様何ですか、それ?」

「クララだってガンガンするじゃねえか」

「ガンガンはベリーエモーショナルね!」

「これが共通認識だ! さあハヤテ、ガンガンいっちゃってください!」

「いくだぞ!」

「グオングオングオングオングオングオーン!」


 いい音だなあ。

 イッツ、エモーショナル。

 魂よ共鳴せよ。

 あ、女王転げ出てきた。


「肉の宴だな!」

「肉の宴だよ!」

「やほーい!」


 ヒラヒラ舞い踊る女王と、えっちらおっちらコブタマンを調理場へ運んでいく衛兵達。

 この間にヴィルを呼んでおく。


「む? そやつは初めて見る精霊じゃの」

「疾風の精霊ハヤテだよ。商売したい子だから、海底を案内してやろうかと思って連れてきたんだ。よろしくね」

「よろしくお願いしますだ」

「こちらこそ大歓迎じゃ」


 女王も商売人だからな。


「御主人に呼ばれてヴィル参上ぬ!」

「よーし、ヴィルいい子! よく来た!」


 ヴィルをぎゅっとしてやる。


「ま、立ち話も何じゃ。商売の前に腹ごしらえが先じゃろう?」

「もちろん。お腹がグーグー不平を鳴らしております」

「シンプルにハングリーだからね」

「肉食いたさに腹が鳴ってるんでやすぜ」

「自己主張が激しくて。あたしもなるべく他人の言い分は聞いてやりたいし」

「ユー様のお腹ですよ?」

「とゆー一連のやり取り。御清聴ありがとうございました」

『ぐう』


 綺麗にオチがついた。

 アハハと笑い合う。


「席についてたもれ。肉の前に、海産物の地上式フライがあるぞよ」


          ◇


「ごちそーさまっ! 満足です!」


 お肉なくても、貝のフライだけで腹膨れるやん。

 貝は海で取れるちっちゃいやつを軽く煮て食べるくらいしか経験がなかったけど、大きめサイズのやつはフライでも美味いな。

 寒天スイーツもものにしてるし、海底の厨房も研究熱心だ。

 しかしそれでも女王はお肉が好物なのは変わらんらしい。

 いつものようにのたうち回って床をテカテカにしている。


「はあはあ、疲れた」

「食後の感想っぽくないところがナイスだね」

「食後の運動じゃ」

「食中の運動じゃない?」


 アハハと笑い合う。


「貝のフライは初めて食べたよ。すごくおいしいねえ」

「そうじゃろう? これはハマグリじゃ。ちょうど今がシーズンでの。地上ではフライがよう食べられておるゆえ、フライ用として魚以外も提案することにしておるのじゃ」

「この前エビのフライを食べさせてもらったな。ぷりぷりで大変結構でした。海の商人に勧められたものだったか」


 地上と海底が順調に交流できていることはいいことだ。

 ちょっと真面目な顔(多分)になる女王。


「もう既にかなり地上との交易は進んでいると思うが、ハヤテの役割としては、いかなることを望んでいるのじゃ?」


 おいこらハヤテ、ビビんな。


「小さい商売をやってくれるといいかなと、あたしは思ってるんだ」

「小さい商売とな?」

「海の王国へはあたし達しか来られないじゃん? でもハヤテは自分で転移できるから、今後は一人でここへ来られるよ」

「ほう、大した個性じゃの」


 うむ、転移やワープは便利だと思う。

 どこが違うのは知らんけど。


「今だと売る側買う側の思惑での商売じゃん? 買う側が存在を知らないために、売る側に需要があることを知らないために埋もれちゃってる商品が、互いに多いと思うんだよね」

「ふうむ、なるほどの」

「ハヤテは地上と海底を行き来できるから、気付かれてない需要をチェックできるはずなんだ。期待してる」


 地上と海底を行き来できるのはあたしも一緒だが、商売人じゃないから細かくものを見られないしな。

 しょっちゅう来られないということもある。

 あたしは商売人であるより、紹介者であるべきだと最近思うのだ。


「ハヤテはどうしたいの?」

「大儲けしたいだ!」

「おお? この強欲精霊め」

「いや結構なことじゃ。わらわも大儲けしたいぞよ」


 あたしだってぼろ儲けしたいわ。

 でも聞きたいのはそーゆーことじゃないんだなー。


「おらはノーマル人相手の商売はムリだと思うだよ。でも海の王国相手なら全然ムリじゃないだ」

「うん、わかる」


 魚人は皆精霊親和性が非常に高く、全員が『精霊の友』と言っていい。

 海底という来づらい場所でもあり、ハヤテが活躍すべき条件が揃っている。

 ハヤテが海底で知った特産物は、アレクやケスにも刺激を与えるだろうし。


「おらは海の王国との商売のプロフェッショナルになるだ!」

「よしよし。ハヤテには十分な資格があるぞ!」

「アレクやケスにも、海底の商品知識じゃ負けないようにするだ。海底のいいものを教えてやるだ」


 相当気合入ってるみたいだなあ。

 アレクやケスが輸送隊でいない日は海底に入り浸るかも。

 ヴィルがハヤテのとこ行ったぞ?


「ハヤテがこんなに前向きだと知っていたら、もうちょっと早く海の王国へ連れてくるんだったな。ごめんよ」

「やる気になったのは今だからええだよ」

「来なきゃわからんこともあるもんな。しょっちゅう海底に来るといいよ」

「そうするだ。ところでお店はどこにあるだ?」

「商店街はこちらじゃ。わらわが案内しよう。今後商店街は勝手に行き来して構わんからの」


 五番回廊の先の商店街へ。

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