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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第1397話:あたしは罪な女・その二

「サイナスさん、こんばんはー」

『ああ、こんばんは』


 船から帰宅しての夕食後、毎晩恒例のヴィル通信だ。


「怒られた。あたしは罪な女」

『昨日と似た滑り出しだけど、展開が違うのかい?』

「リキニウスちゃんの爺ちゃんうっかり公爵が泣くか怒るかだけの違いなんだけど」

『大貴族って、人前であまり感情を露わにしないものだと思ってたが?』

「あたしもそーゆーイメージだったわ。うっかり公爵は取り繕うなんてことないなあ。喜怒哀楽の不安定さが安定しているというか、安定して情緒不安定というか」

『よくわからない』

「首に縄がかけてあってさ。縄を引いた方向に顔が向く、単純な爺ちゃんだと思えばいいよ」

『よくわからないけど、言い方がひどいのはわかる』

「そお?」

『十中八九間違いないんだろうが、公爵に対するユーラシアの扱いもぞんざいなんだろうなと感じる』


 さすがにサイナスさんだなあ。

 あたしのことをよく理解してくれている。

 もっともうっかり公爵だって、リキニウスちゃんが絡まなければあそこまでひどい人じゃないのかもしれんけど。


「怒られた話はあとね。今日まず朝魔境へ行った」

『ん? リリー皇女を連れてゼムリヤって話じゃなかったかい?』

「リリー昼頃にならないと起きてこないんだよ。お土産のワイバーンの卵を確保したかったってこともあってさ」

『あれ美味いもんな』

「安定生産したいよねえ。でもどー考えてもワイバーンの家畜化はムリだしな」

『ワイバーンの家畜化というパワーワード』


 グリフォンみたいに懐いてくるならエサやるのに、ワイバーンみたいな亜竜はドラゴンと一緒で挑みかかってくるのだ。

 気性が荒過ぎて、どう考えても飼うのは無謀に思える。

 同じ飛行魔物でもえらい違いだ。


「ゼムリヤでワイバーンの卵の蒸し料理が出てきてさ。あれはいずれ研究したい」

『ほう、蒸し料理?』

「溶き卵に魚でダシ取ったスープを混ぜて蒸し固めたってやつ。卵に火入れる時、蒸すって発想はなかったな。つるんとした食感ですげえおいしかった」

『蒸すっていう調理法自体がメジャーじゃないよな』

「……ビジネスチャンスの匂いがするね」


 焼いたり炒めたりした時の香ばしさは出ないが、蒸し料理には特有の優しい食感がある。

 工夫次第で面白いことできそう。


『ゼムリヤの魔物退治用の人員を、塔の村に連れていくということだったろう?』

「メルヒオール辺境侯爵は、丸っきり素人だけど固有能力持ちの三人を用意して待ってたよ。それぞれ探索・前衛・回復向きでバランス取れてる。魔物退治要員としてはグッドです」

『やはり固有能力持ちの方が有利という判断か?』

「だろうね。メルヒオールさんも自分で魔物狩りする人だから、機微は心得てる。帝国ではスキルを手に入れることが難しいということもあるだろうけど」

『リリー皇女が教育係で?』

「リリーは自分で教えるつもりで張り切ってたね。でも実際にはリリーの従者が教育係になるんじゃないかなと思う」


 リリーは近接技特化のようだ。

 ホームがダンジョンってこともあるだろうけど、フィールドだとリーチのある攻撃の方が事故が少ないんだよな。

 幸いパワーカードには『スナイプ』『ドラゴンキラー』のような、攻撃の遠隔化を可能にするものがある。

 できる従者黒服は、フィールドでの対魔物戦闘のツボがわかってるだろうから。


『どのくらいの期間を訓練に充てるんだい?』

「一ヶ月くらいって言ってたな。中級冒険者クラスの実力は身につけると思う」

『さて、本日の面白案件についてだが』

「言葉は違っても、最近大体皆そーゆーフリだわ。乙女の秘め事話術に期待されちゃう」

『全然秘め事じゃないだろう? 喜んで話すクセに』


 あたしだって楽しく話したい。

 でもせっかくのエンターテインメントなんだから、もったいつけたいじゃないか。


「今日は使者の船にリリーも連れてったんだ」

『昨日そう言ってたな。誰の楽しみのためだ?』

「全員だよ。リキニウスちゃんとルーネはイベントを心待ちにしてるだろうし、リリーは基本的にイベント大好きだし、あたしは皆が喜んでくれると嬉しいという思いやりの心を持ち合わせてるから」

『一番のイベント好きが何を言ってるんだ』


 アハハと笑い合う。


「航海中にシーサーペントが出ちゃって。結構なスピードで追いかけてくるから振り切れなかった、とゆーイベントがあったわ」

『え? 海竜だか海ヘビだかの魔物か? 大きいんだろう?』

「デカい口開けてたよ。長さはわかんないけど、一〇ヒロを下回ることはないな」

『で、どうした?』

「どうもこうも。ぺいって倒して。リキニウスちゃんとルーネはレベルが上がったーって大喜びだった」

『無事で何よりじゃないか』


 ところがどっこい。


「ヴィルで主席執政官閣下とうっかり公爵に連絡入れるじゃん? そしたら閣下は明らかに不機嫌だし、うっかり公爵はリキニウスちゃんを危険な目に遭わせるとは何事だーって怒りやがるし」

『ようやく初めの怒られた話に繋がるのか』

「うっかり公爵には、単なるアトラクションだ、危険な目になんか遭わせてないわ。あたしじゃなくてあんたが乗ってたら転覆だったけどなって言い込めてやった」

『有様が目に見えるようだ。主席執政官閣下が不機嫌になったのは何故だい?』

「閣下は娘ラブでさ。ルーネは冒険者になりたいなんて言ってる子で、素質もあるんだ。けど閣下は、冒険者なんかにかぶれてないで淑女らしくしてなさいって言いたいんだと思う」

『ユーラシアに関わったばっかりに』

「清く正しく美しいあたしに関わったおかげで、ルーネは日々楽しく過ごせてしまう」


 よきかなよきかな。


「明日ドーラ雨なんだよ。昼にあたしん家来るよう、ハヤテに言ってくれる?」

『雨の日は海の王国へ行くんだったか?』

「うん、一度ハヤテを海底に連れていってやりたかったんだ」


 魚人は皆『精霊の友』だから、ハヤテでも問題なく取り引きできそう。

 海底まで自由に行ける人なんてうちのパーティー以外にいないんだから、ハヤテが行けるようになれば大きな武器になる。


『サイナスさん、おやすみなさい」

『ああ、おやすみ』

「ヴィル、ありがとう。通常任務に戻ってね」

『わかったぬ!』


 昼までどうしよう。

 ラグランドの様子を確認しとくか。

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